株式市場の激しい動きが続いています。日経平均株価は2/8(月)〜2/12(金)の1週間で、前週末比1,866円98銭(11.1%)も下落し、終値は14,952円と2014/10/21以来の安値を付けました。新興国経済への不安、原油安、円高、世界的な株安傾向というこれまでの悪材料に加え、米国では石油・石炭掘削企業チェサピークエナジー社の急落、欧州ではドイツ銀行の経営不安が悪材料視され、そのあおりで日本株も大きく下落する展開になりました。
しかし、2/15(月)の東京株式市場では、日経平均株価が前日比1,069円97銭高と、昨年9/9以来の上昇となりました。ドイツ銀行による債券買い戻しを受けて欧米株が反発に転じたこと、原油価格が急反発したこと等が支援材料とみられます。終値では1/21(木)に付けた安値水準、16,000円台を回復するに至っています。
このように急騰急落を続ける株式市場ですが、果たしてこれで底値を打ったのでしょうか。それとも、再び下落に転じ、日経平均株価が15,000円を割り込むような展開もあるのでしょうか。
まるでジェットコースター |
株式市場の激しい動きが続いています。日経平均株価は2/8(月)〜2/12(金)の1週間(4営業日)で、前週末比1,866円98銭(11.1%)も下落し、14,952円と2014/10/21以来の安値を付けました。波乱の震源地である中国市場は春節で休場だったものの、新興国経済への不安、原油安、円高、世界的な株安傾向というこれまでの悪材料に加え、米国では石油・石炭掘削企業の、欧州ではドイツ銀行の経営不安が悪材料視され、そのあおりで日本株も大きく下落する展開になりました。
原油価格(WTI先物)は昨年末から29%下落し、2/11(木)には1バレル26.21ドルの安値を付けました。同じ期間にNYダウは11%下げて15,503ドルに、外為相場ではドルが対円で8.5%下落して一時110円97銭になりました。
しかし、2/15(月)の東京株式市場では、日経平均株価が前日比1,069円97銭高と、昨年9/9以来の上昇幅を記録しました。ドイツ銀行による債券買い戻しを受けて欧米株(2/11)が反発に転じたこと、原油価格が急反発したこと(同日)等が支援材料とみられます。日経平均株価は、終値で1/21(木)に付けた安値水準、16,000円台を回復するに至っています。
上へ下へと、まるでジェットコースターのような値動きとなっています。2012/9末以降の株式相場についてみると、日経平均株価の1営業日当たり平均高安比(日足の高値÷安値)は1.3%ですが、2/15(月)までの5営業日では、1営業日当たり平均4.4%に拡大しています。
図1:日経平均株価(日足)〜一時1年4ヵ月ぶりの安値水準!その後は急反発
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2016/2/15現在。
図2は、2012/9末以降の日経平均株価・1営業日当たり高安比(5日移動)を示しています。このデータ取得期間は、野田前首相が解散・総選挙を表明(2012/11/14)する直前からですので、「アベノミクス相場」全般を網羅しているとみなせます。2013/5/23に、中国経済への警戒感と金利急騰を嫌気して前日比1,143円安(当日の高安比は10%)したこともあり、2013/5/29には約5%まで上昇しましたが、今回はその時以来の「値動きの大きさ」になっています。
2013年のケースでは、日経平均株価の1営業日当たり高安比(5日移動)がピークアウトしてから、株価が底値を付けるまで11営業日を要しています。一般的に株価の変動率が大きい時は、市場心理が不安定なことが多いように思われます。今回もそのようになるのでしょうか。だとすると、2/12(金)をボトムに反転した日経平均株価については、再び下がるケースも想定しておいた方が良いことになります。しかし、後述するように、日経平均株価が再び15,000円割れとなる可能性は小さいと考えられます。
図2:日経平均株価(日足)の高安比
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。データは2016/2/15現在。
マイナス金利の正式適用は2/16(火)スタート |
今後の相場を予想する上でチェックしておくべき重要日程は表1の通りです。このレポートが掲載開始となる2/16(火)に、日銀当座預金の一部にマイナスが付くようになり、これがもっとも重要な日程とみられます。国内で発表される経済指標では2/17(水)の機械受注(12月)が重要です。2/15(月)に発表された2015/10〜12期のGDP統計では設備投資が下支え役となっていました。今回は前月比4.4%前後増加するというのが市場コンセンサス(2/16現在・Bloomberg集計)です。また米国では、住宅関連指標の発表が多いのが特徴です。
相場全般への影響は小さいと予想されますが、2/17(水)に予定されています大手タイヤメーカーのブリヂストン(5108)の決算発表はチェックしておくと参考になりそうです。同社が公表する2016/12期の業績予想は、大手自動車メーカの世界販売計画や業績見通し、為替見通し等を反映してくると考えられるためです。トヨタ(7203)、ホンダ(7267)をはじめ時価総額の大きい会社が多いのみならず、産業のすそ野が広い自動車業界の業績見通しのヒントになる可能性が大きそうです。
さて、ポイントとなるマイナス金利の適用ですが、新聞報道等にもあるように、金融機関が日本銀行に預ける当座預金250兆円のうちの10〜30兆円程度に適用されるとの見方が多いようです。10〜30兆円に対するマイナス金利0.1%をかけると、年間で100〜300億円と計算され、メガバンクなどの利益規模を考えれば、影響は少ないように思えます。しかし、銀行が今後運用難に苦しむリスクが大きくなることは確かで、マイナス金利の影響がどう進展していくかは中長期的に注視していく必要がありそうです。
表1:当面の重要なタイムスケジュール
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
---|---|---|
2/16(火) |
日本 |
日銀当座預金の一部にマイナス金利適用開始 |
独 |
ZEW景況感指数 |
|
米国 |
NY連銀製造業景気指数 |
|
米国 |
2月NAHB住宅市場指数 |
|
2/17(水) |
日本 |
12月機械受注 |
日本 |
決算〜ブリヂストン |
|
米国 |
1月住宅着工数 |
|
米国 |
1月鉱工業生産・設備稼働率 |
|
米国 |
FOMC議事録(1/26〜1/27開催分) |
|
2/18(木) |
中国 |
1月消費者物価指数 |
欧州 |
EU首脳会議(〜19日) |
|
米国 |
2月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 |
|
2/19(金) |
米国 |
1月消費者物価指数 |
2/23(火) |
欧州 |
独2月IFO景況感指数 |
米国 |
1月中古住宅販売 |
|
米国 |
消費者信頼感指数 |
|
2/24(水) |
米国 |
1月新築住宅販売 |
2/25(木) |
米国 |
1月耐久財受注 |
米国 |
12月FHFA住宅価格指数 |
|
2/26(金) |
米国 |
1月消費者物価指数 |
米国 |
GDP改定値 |
|
- |
G20財務相・中銀総裁会合 |
- ※Bloombergデータ、報道等をもとにSBI証券が作成。海外は現地時間。
【ココがPOINT!】PERとEPSの急速な同時下落が一巡の公算 |
理論的に
(株価)=(一株利益)×(PER)ですから
(日経平均)=(日経平均採用銘柄の予想一株利益)×(日経平均の予想PER)
となります。ちなみに、予想一株利益(以下「予想EPS」)は企業業績の方向感を示唆し、予想PERは市場心理の強弱を示していると考えられます。株価は、企業業績が強い程、そして市場心理が強い程上昇し、逆に企業業績が弱く、市場心理も弱い程下がりやすくなります。実は今回の波乱相場も、この予想EPSと予想PERの推移で説明できます。
予想EPSは昨年秋の2015/11頃から低下が顕著になりました。資源価格の下落や新興国経済の不振、円安一巡等を背景に企業の業績予想下方修正が目立ち始めたことを反映しています。それが本格的になったのが、本年1月以降に始まった、第3四半期(16/3期・本決算銘柄)決算発表時期になります。一方、中国経済への不安等もあり、市場心理を反映する予想PERは昨年4月頃から低下傾向でした。そして、その下落ピッチが加速したのが2016年・年明け以降のことになります。
このように、予想EPS(業績)と予想PER(心理)の急速な低下(悪化)が、2/12(金)までの株価下落の「正体」と考えることができるでしょう。
しかし、決算発表が一巡したことで当面は予想EPSが安定する可能性があります。低下した予想EPSの背景には、商社や石油・石炭等の特損計上予想や、東芝の巨額損失予想もありますので、一過性の部分も少なくありません。今後の低下は緩やかになる可能性がありそうです。なお、予想EPSの変化をもたらすのは業績変化だけではありません。企業の発行済み株式数の増減も影響します。したがって、企業の自社株買いが増え、発行済み株式数が減れば、予想EPSは上昇しやすくなります。実は、「マイナス金利」の下では、企業の自社株買いが増える可能性があります。ソフトバンクの自社株買い実施のニュースが、そうした動きの入り口になるかどうか、注目したい所です。
ちなみに、日経平均株価の予想PERですが、野田前首相が解散・総選挙を表明した2012/11/14の予想PERが13.6倍でした。その後の株式相場を「アベノミクス相場」と称するならば、予想PERはおおむね13倍台半ば以上で推移してきました。しかし、2016/2/12にはこれが12.97倍まで低下してしまいました。さすがに、市場心理が低くても、その程度が「民主党政権末期と同等でも妥当」と考えるのは悲観的過ぎるのではないでしょうか。日経平均の予想PERは15倍前後が中心レンジになっていますので、特に強気な相場でなくとも、その辺まで戻っても不思議ではありません。
仮に予想EPSが1,140円(2016/2/15)で、予想PERが15倍の時、
1,140×15=17,100円と計算されます。これを楽観的と考えるか、悲観的と考えるかで、投資家ごとの「日経平均の目標」は異なってくると言えそうです。
図3:2015/11頃から急速に下げた日経平均の予想一株利益(EPS)
図4:2015/4頃から低下傾向だった日経平均の予想PER
- 日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。データは2016/2/15現在。
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