日経平均が下落に転じています。原油先物相場が下げ、米国株の下落も続いていることが背景です。テクニカル的にも下げが増幅されやすい形になっており、今週いっぱい程度は注意を要する展開が続きそうです。
しかし、これまで注目されてきたFOMCが終わり、米国市場の「クアドラプル・ウィッチング」を通過する頃には、日米株式市場は年内の重要日程がほぼ一巡する形になります。さらに、リーマンショック以来の安値水準を付けてきた原油先物相場には、下げ過ぎと言えるような面も出てきたように思われます。転換点は近いかもしれません。
今回の「225の『ココがPOINT!』では、波乱となった日経平均の先行きを重要日程や原油価格の動きを踏まえながら分析してみました。株価急落の後に来るのは「さらなる波乱」でしょうか?「反発局面」でしょうか?
目先は「要注意」の形 |
株式市場では株価の下げが加速しています。日経平均株価は12/1に20,012円40銭と8/20以来の2万円大台を回復したものの、その後は下落相場に転じています。原油価格の下落が続き、米国株式市場も下落基調となったこと、高水準の裁定買い残が日経平均株価の重荷となったことなどが要因です。
12/11(金)は、SQを無事通過したことで高水準の裁定買い残への懸念が後退し、日経平均株価は反発しました。しかし同じ日の米国市場では、原油先物価格が一時1バレル35ドル台まで下落し、NYダウも300ドル超の下落となりました。シカゴ日経平均先物(2015/3限月)は東京市場の日経平均株価終値を500円超下回り、それを受けた12/14(月)の東京市場も、売りが大きく先行する展開となりました。日経平均は一時600円を超える下げとなり、終値も前日比347円安と、11/4以来の19,000円台割れになりました。12/15(火)も不安定な展開が続いています。
市場では、原油が減産される兆しが見えず、その価格が下落し続けていることが要因と説明されています。12/17(日本時間・早朝)に予定されている米FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表を見極めたいとの向きも多いとみられます。
こうした流れの中、目先の東京株式市場でも波乱が続く可能性が再び大きくなっています。当面、日経平均株価は18,500円程度まで下落する可能性もありそうです。株価の波乱を増幅しそうなのが「テクニカル指標」です。日経平均株価の一目均衡表では、遅行スパンが日々線を下回ってきた他、転換線が基準線を下回り始めるなど「売りシグナル」の点灯が続いています。これで日々線がクモを下回るようですと「三役逆転」の形状が成立します。さらに、12/14(月)は2本の先行スパンが交差する「要注意日」に相当します。これほど教科書的な変化が集中していることも珍しいと考えられます。
図1:注意を要するべきタイミングとなっている日経平均株価(一目均衡表・日足)
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。
今週末までに年内の重要日程は概ね終了 |
今週はテクニカル的な「要注意日」に加え、上記したように12/17(日本時間・早朝)にFOMCの結果発表を、12/18(金)に日銀金融政策決定会合の結果発表を、さらに同じ12/18に米国株式市場の「クアドラプル・ウィッチング(4人の悪魔)」を迎えます。株価指数先物、株式先物、株価指数オプション、個別株オプションのSQが集中するこの日は名前の通り波乱になりやすく、米国の市場関係者も警戒心を解きにくいのが現実でしょう。
さて、こうした乱高下の先に市場関係者は何をみるべきでしょうか。弱気転換した株式市場の低迷が続くシナリオを想定すべきでしょうか。
米国では12月決算のファンドも多いとみられ、12月の「クアドラプル・ウィッチング」までは特に重要な期間であると考えられます。そのタイミングで、原油価格の下落やFOMCなど、買い持ち高の整理を促す予定が続いてきましたので、波乱が必要以上に増幅されている可能性がありそうです。原油先物相場は2008/12に1バレル33ドル87セントの安値がありますが、金融危機の様相を呈したリーマンショック後の安値を下回る理由は多くないように思われます。
FOMCについては、政策金利を現状の0.00〜0.25%から0.25〜0.50%引き上げることについては「市場コンセンサス」になっているため、仮にその通りになっても「織り込み済み」に捉えられる可能性が大きいとみられます。来年にかけては、金利引き上げのペースが市場の関心事になるとみられますが、今回の株価の下げでそれについても織り込みが進んだ可能性がありそうです。なお、日銀金融政策決定会合は、仮に想定通りにFOMCの利上げが実施された場合は、将来の政策変更余地を残す意味でも「現状維持」になる可能性が大きいと予想されます。
12/18(金)の米株式市場における「クアドラプル・ウィッチング」を通過した時点では、日米株式市場での2015年・年内の重要日程はほぼ終了します。翌週は、世界の主要市場で休場が増えるため、一気に冬休みムードが高まる可能性が大きそうです。重要イベントの接近を警戒し(または活かし)、売りポジションを組んでいた投資家であれば買い戻しのタイミングになると言えるかもしれません。その意味でも、下落相場が仮に今週いっぱい続いた場合でも、来週は反発の芽が出てくると考えることができます。
表1:「日経平均株価」を考えるうえで当面重要とみられるタイムスケジュール
月日 | スケジュール | ポイント・注意点 |
---|---|---|
12/14(月) | ◎(日)日銀短観(12月調査) | 景況感は予想以上に強いが先行き見通しは慎重。 |
12/15(火) | (米)消費者物価 | インフレ率加速の兆候はないかチェック。 |
12/16(水) | (米)住宅着工数 | 米住宅市場の勢いは? |
12/17(木) | 米FOMC結果発表 | 米政策金利0.25%引き上げがコンセンサス。 |
(米)フィラデルフィア連銀指数 | 米国の企業マインドをチェック | |
12/18(金) | (日)日銀金融政策決定会合 | FOMCで「利上げ」なら現状維持か? |
(米)クアドラプル・ウィッチング | SQ集中日を通過 | |
12/23(水) | (日)天皇誕生日(東京市場休場) | |
12/24(木) | 世界の多くの市場で休場 | |
12/25(金) | 米国を含む多くの市場で休場 | |
(日)権利付最終日 |
- ※Bloomberg、各種報道をもとに、SBI証券が作成。日程は日本時間で記載。予定は変更されることもあります。2015/12/14現在の情報で作成。◎は作成時点で発表済みの経済指標。
【ココがPOINT!】リーマンショック時の安値に接近してきた原油先物相場は妥当? |
そもそも原油価格の下落は日本経済やその企業業績にプラスの面が多いとされています。米国にとっても、エネルギー系企業を除けば、家計や多くの企業にプラス面が大きいと考えられています。また、12/14(月)に発表された日銀短観では、大企業の業況判断指数が予想外に強く、企業業績にとっては明るい材料になっています。日米のファンダメンタルズを冷静にチェックする限り、来週以降も波乱が続く可能性は低いように思われます。
図2は原油先物相場が史上最高値を付けた2008年以降の動きを示したものです。2015年は下値を切り下げる形になっており、2008年のリーマンショック以降の安値を付けたことで、市場に警戒感が強まった形です。
ただ、リーマンショックは世界的最大規模の米国の金融機関も信用不安に陥るほど不透明感に満ちた局面であり、その中で付けた原油先物相場の安値は相当の悪材料を織り込んだ形です。仮に、今後原油先物相場が33ドル台を付けにいくような場面があれば、2008年・年末当時と比較することになりますが、そうした相場の下げは「行き過ぎ」と言えるのではないでしょうか。
また、こうした原油先物相場の下げが「行き過ぎ」の領域に入っているのであれば、それにツレて下げた日米の株価も「下げ過ぎ」ということになるかもしれません。株式相場の反発に期待したいところです。
図2:リーマンショック(2008年)以来の安値水準となった原油先物相場(WTI)・日足
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
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