この1ヵ月間に、日経平均株価は20,000円割れからの本格下落も意識されるような「下値テスト」を4回も行いました。米利上げ前倒し観測や黒田・日銀総裁の円安限界発言で下げた6/10(日経平均終値は20,046円)、米FOMC(6/17に結果発表)後の円高や海外投資家の上半期末ポジション調整で下げた6/18(同19,990円)、ギリシャの国民投票決定で下げた6/29(同20,109円)、ギリシャ国民投票でのEU案への反対で下げた7/6(同20,112円)がそれに相当します。
しかし、「下値テスト」の時期は一巡し、今後、日経平均は本格的上昇に転じると「225の『ココがポイント!』」では考えています。理由は以下の4点が考えられます。
(1)ギリシャ問題が他の債務国の不安として伝搬する可能性は小さいため。
(2)欧州、米国、新興国市場への不透明感が、逆に日本市場の安定性を浮かび上がらせる面があるため。
(3)市場の関心は「ギリシャ」から、良好な企業業績へ移るとみられるため。
(4)東京市場で「空売り」が高水準に達しており、逆にその買い戻しが今後増えてくると考えられるため。
今回の「225の『ココがポイント!』」は、(1)〜(3)について、改めて考え方を確認するとともに、(4)について、やや詳細なご説明を試みたいと思っています。
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4回の「下値テスト」でも20,000円を維持した日経平均 |
この1ヵ月間に、日経平均株価は20,000円割れからの本格下落も意識されるような「下値テスト」を4回も行いました。図1では、日経平均の推移とともに、「下値テスト」の時期を示しています。また表1では、それぞれどんな悪材料がもとで下げたのか説明しています。
6/10および6/18に安値を付けた背景には、米国経済や外為市場に対する見通しについて不透明感が強まったことがあげられます。6/5に米労働省から発表された同国雇用統計で、非農業部門雇用者数が28万人増(市場予想は21万人)となり、一時は2016年先送り説まで出ていた米政策金利の引き上げ時期について、再び2015年内との見方が有力となりました。これを受けて米株式市場が9日まで4営業日続落となり、日本株も悪影響を受けました。日銀の黒田総裁が、実質実効為替レートで「これ以上の円安はむずかしい」と述べ、円高が進んだことも逆風でした。
その後はFOMC(6/17結果発表)を受け、米国の利上げペースは緩慢になりそうとの見方に変わり、米国株は続伸しました。しかし、外為市場で円高が進んだことで、日本株は下落し、6/18に安値を付ける展開となりました。
なお、6/10および6/18の安値に至る過程で下げた理由を再検証してみると、日経平均は、米利上げが前倒しされそうでも、緩慢になりそうでも結局下げています。この時期の主体者別売買動向をみると、海外投資家は6/8〜6/12に1,727億円の売り越し、6/15〜6/19に1,847億円の売り越しでした。その前は5週連続で買い越でしたし、その後も買い越しだったことを勘案すると、6月末を上期末とする海外投資家のポジション調整が絡んでいた可能性が濃厚です。株価下落の理由は後講釈の域を出なかったと言えるかもしれません。
一方、6/29および7/6の株価下落は、明らかにギリシャ問題が背景で、ともに国民投票をめぐる混乱が影響しています。ただ、ここで注意すべきなのは、国民投票決定のニュースも、国民投票で緊縮否定のニュースも、真っ先にそれを織り込まなければならなかったのが東京市場であったということです。欧米市場が取引開始になる前に、欧州の悪材料について判断を迫られた訳で、その分、下げが増幅された可能性は否めないと思います。
このように、米国経済や外為市場に対する見通しについて不透明感やギリシャ問題を織り込み、4回の「下値テスト」を行った日経平均ですが、20,000円の大台を割ったのは6/18の1営業日にとどまり、概ね同大台を維持することには成功しました。下値テストの結果、日本株の底堅さが確認されたと考えることもできそうです。
図1:4回の「下値テスト」に耐えた日経平均
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券投資調査部が作成。
表1:株式市場は、「4回の下値テスト」で何を織り込んだのか
年月 | 日経平均終値 | 株価が下落した要因 |
---|---|---|
6月10日 | 20,046円36銭 | 強い雇用統計を受け、米国株が続落。高水準の裁定買い残も警戒され9日に日経平均が360円安。10日は日銀・黒田総裁が「円安はむずかしい」と発言し、円高・株安。 |
6月18日 | 19,990円82銭 | FOMC(6/17結果発表)を受け、米国の利上げペースは緩慢になりそうとの見方が広まり、ドル・円相場が17日124円台から18日122円台へ。それを受けて株価も続落。 |
6月29日 | 20,109円95銭 | ギリシャは30日にIMFへの返済期日を控え、債権国と交渉していたが、突如、国民投票で債権国の緊縮案への賛否を示すと発表。交渉は決裂し、週明けの日経平均は大幅安。 |
7月6日 | 20,112円12銭 | ギリシャの国民投票(7/5)の結果、市場の予想に反し、緊縮案反対の意見が6割超の多数を占めた。これを先進国で真っ先に織り込んだ東京市場では、日経平均が大幅安となった。 |
- ※各種報道等をもとにSBI証券が作成。
日経平均株価が上昇に転じると考える4つの理由 |
「下値テスト」の時期は一巡し、今後、日経平均は本格的上昇に転じると「225の『ココがポイント!』」では考えています。理由は以下の4点が考えられます。
(1)ギリシャ問題が他の債務国の不安として伝搬する可能性は小さいため。
(2)欧州、米国、新興国市場への不透明感が、逆に日本市場の安定性を浮かび上がらせる面があるため。
(3)市場の関心は「ギリシャ」から、良好な企業業績へ移るとみられるため。
(4)東京市場で「空売り」が高水準に達しており、逆にその買い戻しが今後増えてくると考えられるため。
ギリシャの対外債務の8割程度が公的債務で、仮にギリシャが名実ともにデフォルト(債務不履行)しても、民間部門で信用不安が広がる可能性は低いと考えられています。また、図2にもあるように、ギリシャ危機が伝搬すると心配されているイタリア、スペイン、ポルトガルの経常収支が黒字化していることは、非常に重要な改善点です。これは、南欧諸国における国内部門の赤字が外からの資金でカバーされていることを示すからで、本質的には経済危機に襲われる状態にはないと言えます。
それを反映するかのように、南欧3ヵ国の10年国債利回りは「危機水準」といわれる7%を大きく下回っています。足元で利回りが上昇(債券価格が下落)していることは事実ですが、それはドイツ国債も同じです。基本的には、ECBの量的緩和を背景に、欧州諸国の金利が異常なほどに低下したことへの反動とみられ、財政不安を反映している訳ではないとみられます。
危機が南欧諸国へ伝搬するリスクが低い以上、ギリシャ問題はギリシャ固有の特殊な問題として、市場は理解しはじめると考えられます。
それでも、ギリシャの国民投票で、EUによる緊縮案が否定されたことは悪材料であり、ギリシャと債権国の交渉は、今後も時間を要するかもしれません。しかし、この問題が原因で欧州への投資が抑制される可能性はあります。ただ、そのことで、むしろ日本の相対的魅力を増すとの意見もあります。米国が利上げを志向する段階にあり、新興国が一時の勢いを失っているという国際経済の現状をみると、日本の相対的な投資魅力は大きいと考えらえます。
こうした中、東京株式市場では7月下旬から、いよいよ決算発表が始まります。7月3日掲載の「日本株投資戦略〜『ギリシャ』で株価下落はチャンス!?好決算で株価反発が期待できる銘柄を探る」でご説明した通り、2015年4〜6月決算では大幅増益の銘柄が増えると期待されます。市場の関心は「ギリシャ」から「企業業績」へ移ると考えられます。
図2: 黒字化している南欧3ヵ国の経常収支(対GDP・%)
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。四半期単位。
Qは「四半期」を意味している。
図3: 南欧3ヵ国とドイツの10年国債利回り(%)(日足)
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
【ココがポイント!】「踏み上げ相場」到来を示唆する株式市場 |
図4は、日経平均と東証「空売り比率」の推移をみたものです。「空売り」とは、信用取引等で、株券(最近は電子化されているため、実際に株券の授受はありません)を借りる形で、売りから入る取引です。先に売って、株価が下がれば買い戻し、利益を確保することになります。
東証の売買代金に占める空売り比率(5日移動)は図4にもあるように、35%前後がピークで、その後は低下する傾向があります。その低下場面では、買い戻しが増え、株価が上昇しやすくなります。7/6現在、この空売り比率は35.1%に達しています。ギリシャ危機が叫ばれる中、これを利益追求のチャンスとして、売りから入った投資家が多いことを示しています。
しかし、空売りの増加にも、そして今回ご説明したように4回の「下値テスト」にもかかわらず、日経平均株価は概ね20,000円以上の水準を保ちました。今後は、「空売り」派の買い戻しを誘う形で上昇する「踏み上げ相場」も期待できるのではないでしょうか。
図4:「空売り比率」(5日移動)は35%前後がピークとなり、その後は株価上昇の傾向
- ※日経平均データおよび東証公表データをもとに、SBI証券が作成。
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