前営業日トピックス
東京市場では、序盤からドル円・クロス円は上値の重い動きとなったものの、新規材料に乏しい中で、翌日にECB理事会と5月の米消費者物価指数の発表を控え、様子見ムードが強まったこともあり、全般的に値動きは限定的だった。その後、米長期金利が低下したことで、ドルが欧州通貨や資源国通貨に対して軟調な動きとなったこともあり、対円で上値の重い動きとなった。一方、クロス円は堅調な動きとなった。特に、英中銀のホールデン氏が「金融政策の蛇口を止め始める必要がある可能性」との報道を受けて、ポンドは主要通貨に対して堅調な動きとなった。
米国時間では、欧州時間から米10年債利回りの低下が続き、一時3/3以来の低水準まで低下したことを受けて、ドルは主要通貨に対して軟調な動きとなり、対円では一時109.23まで下落した。ただ、前日の安値である109.20を下回らなかったことから、値頃感の買い戻しも入り、その後は底固い動きとなった。さらに、低下していた米10年債利回りが回復したことも加わり、ドル/円は109.66まで上昇した。しかし、消費者物価指数などの発表を控えて終盤まで限定的な動きが続いた。
米株式市場では、米長期金利の指標となる米10年債利回りが、3/3以来の低水準まで低下したことを受けて、主要株価指数は序盤から堅調な動きとなった。しかし、その後に10年債利回りが持ち直したことや、5月の米消費者物価指数の発表を控えた調整の動き観測され、主要株価指数はマイナス圏まで下落して終了した。ダウ平均株価は、序盤に一時前日比54ドル高まで上昇したものの、その後は下落に転じ、終盤に160ドル安まで下落した。引けにかけては安値圏が維持され、152.68ドル安(-0.44%)で終了した。一方、ハイテク株中心のナスダックは、13.16ポイント安(-0.09%)で終了した。
米ドル/円
※出所:FX総合分析チャート10分足
(1)東京市場では、米長期金利の指標となる米10年債利回りが時間外取引で低下したことから、ドルは主要通貨に対して軟調な動きとなった。さらに、日経平均株価が序盤から軟調な動きとなり、一時前日比161円安まで下落したこともドル円・クロス円の圧迫要因となった。
(2)その後、下落した日経平均株価が下げ幅を縮小する動きとなったことから、クロス円は堅調な動きとなった。ドルも欧州通貨や資源国通貨に対して値を戻す動きとなり、対円でも底固い動きが続いた。
(3)欧州時間に入り、マーケットが注目するECB理事会の結果発表、5月の米消費者物価指数の発表を翌日に控えて様子見ムードが強まる中、米長期金利の指標とされる米10年債利回りが下げ幅を拡大し、米国時間の序盤に一時1.470%まで低下し、3/3以来の低水準となったことを受けて、ドルが主要通貨に対して軟調な動きとなり、対円では一時109.23まで下落した。
(4)ただ、前日安値である109.20には届かなかったことや、値頃感の買い戻しも入り、ドルは底固い動きとなった。さらに、低下していた米10年債利回りが1.50%台まで回復したことも加わり、ドル/円は109.66まで上昇する動きとなった。ただ、消費者物価指数などの発表を控えて終盤まで限定的な動きが続いた。一方、カナダ中銀の金融政策が発表され、政策金利の据え置き、量的緩和策の維持が発表された。さらに、声明でも政策金利を少なくとも2022年下半期まで据え置く方針が確認され、タカ派的な内容を期待した向きの失望もあり、カナダ・ドルは円や米ドルに対して軟調な動きとなった。
本日のトピックス
欧州時間には、ECB理事会の結果発表と、その後にラガルドECB総裁の会見が予定されている。政策金利は据え置き、PEPP(パンデミック緊急購入プログラム)の規模も現行の1兆8500億ユーロに維持されると予想されている。ただ、声明や総裁の会見で、今後の買い入れペースに関して言及があるのかどうか、さらにインフレに関する見解にも注目が集まっている。
一方、米国時間では、5月の米消費者物価指数の発表が予定されている。米石油パイプラインがサイバー攻撃を受けたことも影響して、原油価格が4月と比べて平均で3ドル以上上昇していることが全体の指数を押し上げている可能性も考えられる。特に、マーケットでは米国の量的緩和の縮小時期を見極める上で、米消費者物価指数の結果を重要視していることから、結果発表とマーケットの反応に注目したい。
6/10の注目材料
時間 | 国・地域 | 経済指標・イベント | 予想 | 前回 |
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20:45 | 欧州 |
ECB理事会・結果発表
ユーロ圏の統一的な金融政策を担う最高意思決定機関。理事会は、総裁・副総裁を含む幹部6人と、ユーロ圏各国の中銀総裁で構成され、原則として月に2回、ドイツのフランクフルトのECB本部で定例会合を開く。会合終了後は、ECB総裁が会見を実施する(議事録は公開していない)。
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前回まで政策金利は2016年4月以降据え置きが続いている。今回も引き続き政策金利の据え置きが予想されており、注目されるPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)の規模も現行の1兆8500億ユーロに維持されると予想されている。さらに、結果発表後にラガルドECB総裁の会見が予定されており、ここでの発言内容が注目される。 | ||||
21:30 | 米国 |
5月消費者物価指数(前年比)
消費者物価指数(CPI = Consumer Price Index)は、消費者を対象とした小売やサービスの価格動向を示した指数である。特に、食品とエネルギーを除いたコア指数が重要視されている。そして、米国の金融政策を決定する上で重要な経済指標であり、為替市場への影響も非常に大きい。
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4.7% | 4.2% |
前回は市場予想を上回り、前月比では2009年6月以来、前年比では2008年9月以来の高水準となった。ワクチン接種の拡大を背景に、米経済の拡大が示される結果となった。今回は、一段の上昇が予想されており、特に、5月には米石油パイプラインがサイバー攻撃を受けたことが影響して原油価格が押し上げられており、このことが指標を押し上げている可能性も考えられる。 | ||||
21:30 | 米国 |
新規失業保険申請件数(6/5までの週)
新規失業保険申請件数は、労働省が失業保険を申請した人(失業者)の数を毎週発表する経済指標。毎週(木曜日)発表されるため、雇用情勢の速報性に優れており、雇用統計の先行指標として注目されている。ただ、米国の祝祭日や天候などの影響を受けやすいという点もある。
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37.0万件 | 38.5万件 |
前回は予想以上の減少となり、新型コロナウイルスの感染拡大後初めて40万件を下回った。ワクチン接種の拡大による経済活動の再開が進んだことで、労働者の確保が加速したことが示された。今回は、さらに減少が予想されており、高い求人件数を背景に仕事への復帰が促進されていることが示されると見られている。 |