先週末発表の米3月雇用統計では、就業者数が市場予想を大幅に上回る91.6万人増となったほか、失業率も6.0%へ改善、新規感染者数が減少し、ワクチン接種が進む中、景気回復とともに、米労働市場が確実に改善している様子が示される結果となりました。

景気回復が加速している中、製造業（財生産）の就業者数が今年初の増加に転じ、寒波の影響により、2月は5.6万人減少となっていた建設業の就業者数が11.0万人増と改善しました。さらにサービス業全体の就業者数も59.7万人増と2月（60.2万人増）から小幅に鈍化したものの、高水準を継続しています。

こうした比較的低賃金雇用の拡大により、3月の時給は前月比‐0.1%と減少したほか、前年比でも4.2%増と伸びが鈍化するなど、賃金や物価に非常に強い上昇圧力がかかることを懸念するまでには至っていない現状も明らかになりました。小売業や宿泊・外食サービスなどの業種での雇用が依然として感染拡大前の水準を大きく下回っていることも、こうした見方を裏付ける結果となりました。

しかし、3月の雇用統計のデータ収集の時点では、バイデン政権が1.9兆ドル規模の景気対策を成立させ、1,400ドルの現金給付を行う前であること、さらにワクチン接種を受けた人も先週末の雇用統計発表時点と比べ、遥かに少ない接種率に留まっていました。実際、4月1日に全米自営業者連盟（NFIB）が発表した雇用調査では、企業の求人募集に対し、求める人材 の確保が埋まっていないとの回答割合が過去最高に達したとのデータも明らかになるなど、求人を埋めるため賃金を引き上げるとした事業者の割合も1年ぶりの高水準に達したことが明らかになりました。

賃金を上げるとの企業の割合は、依然として感染拡大前の失業率が過去最低の3.5%に近い水準だった頃を下回った状態となっています。しかし、1,400ドルの現金給付などの景気対策の効果も期待され、一時的な物価上昇圧力がある中で、労働市場のスラック（たるみ）が今後、徐々に縮小に向かうことになれば、賃金の上昇につながる可能性もあるかもしれません。

こうした中、バイデン政権の景気対策やワクチン接種の普及加速が米国経済の想定以上の回復につながる可能性も現実的になるかもしれません。昨年末時点でエコノミストの多くは、米10年債利回りの見通しについて、今年6月中に1.08%台へ上昇すると見ていましたが、そうした予想を上回るペースで上昇。先週末の予想を上回る雇用統計を受けて1.74%台へ上昇 しており、年内にも2019年夏以来となる2.0%を上回る可能性も一部で予想されています。

失業率も年末までに5.0% さらに消費者物価指数も2.5%へ上昇するとの予想を上回るペースで失業率の改善が進むとともにインフレ率の上昇も加速するか注目する必要があるかもしれません。今回の雇用統計では、そうした先々のインフレ上昇の可能性を示唆する結果となりました。

・1月6日の安値（102円59銭）と1月21日の安値（103円33銭）を結んだライン①
・2月23日の安値（104円92銭）と3月23日の安値（108円41銭）を結んだライン②

(1)　ライン①、ライン②を下値支持線として上昇基調を継続
(2)　先週の高値（110円97銭）を上抜けた場合の上値メドとして
　・2月23日の安値（104円92銭）から3月9日の高値（109円23銭）までの上昇幅（4円31銭）を3月10日の安値（108円34銭）に上乗せして得られる112円65銭
　・2月23日の安値（104円92銭）から3月15日の高値（109円36銭）までの上昇幅（4円44銭）を3月23日の安値（108円41銭）に上乗せして得られる112円85銭