トルコリラ見通し
トルコ国内の新型コロナウイルス感染者数は15万人を超え、トルコ経済の先行きに対する懸念が深刻になりつつある中、先月IMFはトルコの2020年成長率見通しを従来の+3.0%から-5.0%へ大きく下方修正しました。
こうした中、トルコ中銀は5/21に政策金利を0.5ポイント引き下げ8.25%としました。また、インフレ見通しについては変化が見られず、年末時点の見通しを7.4%のまま据え置きました。その一方で、今月がラマダンの月であることやウイルス感染の影響もあり、短期的にインフレ率が上昇する見通しを示しました。
しかし、国内の若年層を中心に失業率が高水準にあり、需要の弱さも指摘されるなど、年後半には物価上昇率が低下するディスインフレーションの影響がより鮮明になるとの見通しもあり、トルコ経済は厳しい状態が続くものと思われます。
トルコ政府は昨年後半以降、通貨安防衛のためにトルコリラ買い・ドル売りの介入を実施したことで、トルコの外貨準備は5/8時点で50億ドルと年初から30%程度減少したと言われています。さらに、短期の外貨建債務も1200億ドルに達するなどデフォルト(債務不履行)の懸念も聞かれます。
トルコリラは、5/7に対ドル、対円(14円62銭)で史上最安値を更新して以降、様々な規制を講じたことや一部の国々とスワップ協定を締結したことで、5/19に15円94銭まで反発したものの伸び悩んでおり、先行き不透明感を背景に再度下落基調に転じる可能性もあり注意が必要です。
トルコリラ円は、2/20の高値(18円40銭)と3/25の高値(17円45銭)を結んだ上値抵抗線を上抜けるか微妙な状況にあり、5/29には1-3月期GDPのほか、財務安定性レポートも発表されることから反応が注目されます。
トルコリラ円 日足チャート
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
南アランド見通し
南アランド円は、 5/21に3/27以来の高値となる6.15円まで上昇し、先週末には一時6.01円まで下落したものの、6.0円台を維持し6.11円で先週末のNY市場の取引を終えました。世界的なウイルス感染拡大の防止策が徐々に緩和され、経済活動が再開され始めたことも、ランドの買戻しが進んだ要因となりました。
しかし、南アの財政状況は依然として厳しく、国営電力会社への救済のための資金手当てなどが重石となっており、公的債務がGDPの6割超に達するなど財政面での脆弱さが懸念されます。ムーディーズやS&Pなど格付け機関が3月下旬以降に格下げを行い、現状では投資不適格級となっています。
ランド円は4/6の5.59円に続く4/23の5.60円をダブル・ボトムとして、先週以降、欧米や中国の経済活動再開への期待を下支えに急速に反発に転じ、5/21には3/27以来の高値となる6.15円まで上昇しました。しかし、中国・全人代では、香港版の国家安全法を導入する議案が提出され、5/28に採決が行われると見られており、香港への直接的な統治を強化する動きに対してトランプ米政権が警告を発するなど、米中対立懸念の高まりが中国の景気回復の行方にも悪影響を及ぼす可能性があり、ランドの動向が注目されます。
南アランド円 日足チャート
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
ブラジルレアル見通し
ブラジルのウイルス感染者数は一日あたり1万人を上回る日が珍しくなく、感染者数が米国に次いで世界2位にまで達したほか、死者数も1.6万人まで急増しました。外出自粛がかえって貧困街の密な環境下での感染者増につながっており、事態の収束には相当の時間を要すると思われます。
ブラジルの4月国内自動車生産数が前年比99.3%まで減少するなど厳しい経済が続く中、ブラジル中銀は5/6に政策金利を0.75%引き下げ、3.0%としました。ブラジルレアルは対円で5/14に17.797円まで下落したものの、その後、欧米の経済活動再開を好感し、上値抵抗線として意識されていた日足の基準線(19円12銭)を回復して堅調な値動きとなっています。
ブラジル政府は、5/22に2020年の基礎的財政赤字額見通しを6757億レアル、対GDP比で9.4%と過去最悪の水準まで大幅に修正しましたが、レアルは対ドルで一時1ドル=5.5224レアルと5/5以来の水準まで上昇する場面も見られるなど、対ドル、対円共に引き続き堅調な値動きを続けています。
しかし、景気低迷や金利低下による資金流出への懸念が引き続き重石となる可能性があり、反発基調の継続を疑問視する向きもあるだけに、注意が必要です。中国・全人代での香港に対する法的強制力の強化やウイルス対応を巡る米中間の対立が中国経済の先行きへの懸念につながる可能性も否定できない状況なだけに、原油価格の動向とともに鉄鉱石価格の動向も含め、レアルの上昇が継続できるのか注意が必要です。
ブラジル中銀がレアル安に歯止めをかけるため、4月に外貨準備を切り崩し、レアル買い・ドル売りの介入を実施しました。トルコ中銀と同様に、外貨準備を使っての通貨防衛策は外貨準備の著しい減少につながるだけに、通貨安への先行き懸念が残る結果となっています。
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