ECB理事会を控え、ユーロ/ドルは上値の重い動き
7/25のECB理事会では、政策金利の現状維持を決定する一方、早期追加緩和の可能性に言及するとの観測も聞かれ、ユーロは7/3の1.1310ドルを付けて以降、1.13ドル台の回復には至らず、先週の反発も7/11の1.1285ドルを高値に上値の重い値動きが続いています。
7/11に発表されたECB理事会議事要旨では、インフレ目標達成のために、更なる緩和の準備への必要性が言及されました。しかし、追加緩和策としてフォワードガイダンスの強化や延長、資産買い入れの再開、さらにはマイナス金利の深堀りなどの案が浮上しています。
仮に資産買い入れの再開やマイナス金利の深堀りへの可能性が高まることになれば、ユーロは7/9以来の1.12ドル割れへ下落する可能性があるかもしれません。
一方、7/30-31のFOMCに関し、0.25%の利下げが確実視、それ以上でも以下でもないといった見通しがコンセンサスになりつつあります。
また、FOMCに向けて大きな変化がなければユーロの1.13ドル台回復は厳しい状況になると思われ、こうした思惑が1.12ドル台後半から1.13ドルにかけての戻り売りを高めさせる一因となりそうです。
ユーロ/ドル 日足チャート
- ※出所:Quants Research Inc.
ドル円の下落に歯止めが掛るか!?
ドル円が1/3以来の安値となる106円78銭まで下落した際、7/30-31のFOMCで0.50%の緩和策を講じるとの観測を背景に、米長期金利が低下しました。
日米金利差縮小への思惑と同時に日銀のマイナス金利の深堀りが難しいとの見方が聞かれる中、円売りポジションの巻き戻しが円高の加速につながりました。
しかし、米6月雇用統計で就業者数の回復など、総じて強い結果となった一方、賃金上昇が物価上昇を招くほどの強さは足りず、先週発表の米6月消費者物価指数でも前年比+1.6%に留まるなど、インフレ率の加速警戒感は見られません。
7/12には、シカゴ連銀エバンス総裁がインフレ率をFRBの目標である2.0%の達成のために年2回の利下げが必要との見解を示したことで、ドル円は107円80銭まで下落しました。
しかし、米10年債利回りを見ると、2.0%を下回って一段と低下が加速するような状況にはなく、ドル円の下値支援につながっています。
既に市場は先週のパウエルFRB議長の議会証言で「経済の拡大維持のため、適切な措置を講じる」との認識をあらためて示したことを受けて、0.25%の利下げを織り込んだ状況にあることから、ドル円の一段の下落に歯止めが掛る可能性があるかもしれません。
ドル円 日足チャート
- ※出所:Quants Research Inc.
膠着状態で溜まったエネルギーの行方は?
また、6/29のG20サミットでの米中首脳会談を経て、米中通商交渉の電話会談が始まっており、ムニューシン財務長官が「今週の米中電話協議が生産的な内容となれば訪中の可能性もある」との考えを明らかにしており、米中通商交渉の閣僚級協議再開の期待が高まればドル円の下値支援につながる可能性もありそうです。
一方で、NY株式市場の主要3指数が揃って史上最高値を更新するなど、米経済の拡大が11年目に突入しています。
企業債務が最大に膨らむ中での利下げは、トランプ大統領の執拗な利下げ要請に屈し、中央銀行の独立性が脅かされる事態との見方もあります。
0.25%の利下げを実施して以降のNY株式市場が堅調地合いを継続できるかは不透明で、先々の懸念材料が一つ増えることになるかもしれません。
いずれにしても、7/25のECB理事会、再来週の日銀政策会合やFOMCを控えて、明確な金融市場の方向性が見出しにくくなっており、膠着状態で溜まったエネルギーをどのように発散させるのか、各国中銀の決定以降の動きが注目されます。