中国GDP成長率 前年比(%)
※出所:中国国家統計局
記録ずくめとなった12月の中国経済指標
1/21に発表される中国10-12月期GDPは、前年比+6.4%と、前期(+6.5%)、前年同期(+6.8%)から減速すると予想されています。
2017年秋の中国共産党大会で、国家主席の任期撤廃を叶え、絶対的権力を手中に収めた習近平国家主席は、過大に膨らんだインフラ投資が持続不能な水準に達しているとの認識のほか、過剰債務縮小に向けた動きまでは想定の範囲内だったものの、昨年春先以降、急速に強まった米国からの対中通商圧力の影響は想定外だったかもしれません。
12/31に発表された中国製造業PMI(景況感指数)は好不況の節目とされる50.0を下回る49.0へ低下したのに続き、1/2発表のCaixin製造業PMIも50.0を下回る水準へ低下しました。さらに、1/14に発表された12月貿易収支でも輸出入ともに前年同月比マイナスに転じたことで、中国の景気減速懸念が一段と高まることになりました。
※出所:SBIリクイディティ・マーケット
米中通商交渉の行方は?
1/7-8の予定を1/9まで延長して行われた米中通商交渉を巡る次官級協議は、中国が米国からの農産物の輸入拡大などを示したものの、米国の求める知的財産権や中国政府による国有企業への補助金削減など、米国が強く改善を求める点については、今月中にも行われる予定の閣僚級協議に先送りされた格好です。
米国は3/1の期限までに中国が米国の要求に応じられない場合、9/24に発動した中国からの輸入品、2000億ドル相当を対象に、10%の輸入関税を25%へ引き上げる用意があるとしています。
メキシコとの国境の壁建設を巡る民主党との話し合いでも妥協を許さないトランプ大統領の強硬姿勢は中国側も警戒しており、3/5に開幕する中国全人代を前に決着できるか最大の焦点となりそうです。
昨年11月以降、1ドル=6.9人民元台で推移している人民元を一段の元安に設定する可能性も選択肢の一つとの観測も聞かれ、その際には中国からの資本流出防止に向けて資本規制を講ずる可能性も取り沙汰されており、不透明な情勢が続きそうです。
習近平国家主席にとっても最大の課題となる中国の景気減速懸念、米中通商交渉が失敗に終わり、トランプ大統領の輸入関税策の追加制裁が発動されることになれば、中国経済は一段と減速する可能性があります。そうなれば、中長期の債務拡大に目をつむり、目先の減税策や財政出動などを実施するかもしれません。
そうした場合、中国の財政問題が懸念されることにつながりかねず、習近平国家主席がどのような舵取りをするのか、2019年今年の世界経済の行方を大きく左右するだけに注目されます。