米12月雇用統計 結果を確認
非農業部門雇用者数(万人)の推移
- ※出所:米労働省
12月の米雇用統計は就業者数が予想を下回る14.8万人増に留まり、3ヵ月ぶりに20万人を下回った一方で、前月分が上方修正(22.8万人増⇒25.2万人増)、10月分は下方修正(24.4万人増⇒21.1万人増)されました。
また失業率は3ヵ月連続で4.1%とリーマンショック前の水準を保つなど、ほぼ完全雇用状態を維持し、労働市場の堅調さを印象付ける内容になりました。
就業者数の内訳では、製造業や建設業の就業者数が堅調で景気拡大を裏付けている一方、ネット通販増加の影響を反映して、実店舗からオンラインへの移転といった雇用形態の変化が確認され、小売業の就業者数が2万人減少するなど、今後も一段とネット通販が実店舗販売を駆逐する勢いが続くのか特に気になる点かもしれません。
米時間給賃金 前月比(%) 、 前年比(%)
- ※出所:米労働省
そして最大の注目となった時間給賃金は、前月比0.3%増、前年同月比2.5%増といずれも予想通りでしたが、前月分が0.1%増へ下方修正されました。時間給賃金(前年同月比)は前月(2.4%増)から上昇したもののインフレ期待を押し上げるには力不足となっています。
理論上、FRBの掲げる物価目標2.0%達成には時間給賃金(前年同月比)で3.5%前後の上昇が必要とされるだけに、目標に一向に近づかないジレンマが引き続き意識され、FRBの利上げペースを加速させるには不十分な結果となっています。
先週発表された12月FOMC議事要旨の中では、いくつかの地域で新卒者や未熟練労働者の賃金が上昇するなど、一部には逼迫した労働環境が賃金上昇に波及しているとの報告が聞かれました。
しかしその一方、技術革新や自動化によって賃金を抑制する動きも見られ、今後も引き続き賃金動向がFRBの金融政策に及ぼす影響を注視する必要性がありそうです。
いずれにしても今回の雇用統計がFRBの急速な引き締めにはつながらないとの見方からドル円は小幅に下落した一方、NY株式市場は堅調な地合いを維持し、先週末5日のNYダウは220ドル高、ナスダック、S&Pも史上最高値を更新するなど堅調な状態を維持しています。
12月FOMCでの見通し
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
景気拡大の中で税制改革法案がインフレ期待の押し上げにつながるのか今後の展開が注目されます。
ただ物価上昇圧力が殆ど見られない中で、12月FOMCで示された今年3回の利上げ見通しのとおりに強い経済基調が続き、同時に物価安定が続くのか、2月に就任するパウエル新FRB議長の手腕が注目されます。