5月米雇用統計 結果を確認
5月米雇用統計のポイント
【1】就業者数は予想を下回る13.8万人増、過去2ヵ月分が合計で6.6万人下方修正
【2】製造業は前月比0.1万人減、サービス業は13.1万人増(前月15.4万人)と伸びが鈍化
【3】直近3ヵ月の平均就業者数は12.1万人増となり、2012年7月以来の低水準
【4】失業率は4.3%(前月4.4%)へ改善するも、労働参加率が62.7%(前月62.9%)に減少した影響が強い
【5】時間給賃金は、前月比+0.2%(前月0.3%⇒0.2%) 前年比+2.46%(前月+2.51%)
米雇用統計結果の推移
12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | |
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非農業部門 雇用者数(万人) | 15.5 | 21.6 | 23.2 | 5.0 | 17.4 | 13.8万人 |
失業率(%) | 4.7 | 4.8 | 4.7 | 4.5 | 4.4 | 4.3% |
時間給賃金 前月比(%) | 0.3 | 0.2 | 0.3 | 0.1 | 0.2 | 0.2% |
時間給賃金 前年比(%) | 2.9 | 2.6 | 2.8 | 2.6 | 2.5 | 2.46% |
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット社
非農業部門 雇用者数と失業率の推移
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット社
6/1(木)に発表された米5月ADP雇用統計は、市場予想(18.5万人増)を大きく上回る25.3万人増となり、年初からの月平均である23.7万人増を上回りました。その翌日に発表された米5月雇用統計でも予想の上ぶれを指摘する声も聞かれましたが、就業者数が13.8万人増となり、市場予想(18.5万人増)を下回る結果となりました。
さらに4月分が速報値の21.1万人増から17.4万人増(-3.7万人)、3月分も7.9万人増から5.0万人増(-2.9万人)に下方修正されたことで、直近3ヵ月の平均就業者数は12.1万人増と2012年7月以来の低水準まで鈍化しています。
FRBが掲げている物価目標2.0%を継続的に達成するためには、時間給賃金が前年比+3.0%〜+3.5%で上昇することが必要条件とされています。今回の雇用統計では、時間給賃金が伸び悩んでいることが明らかになり、来週のFOMCでの0.25%利上げ予想には変化はないものの、先々のインフレ期待も上昇が見込めないとあって、金利上昇ペースは緩やかになると見られています。
金利上昇ペースが抑えられていることもあって、株式市場への資金流入が続いていることから、NY株式市場は主要3指数そろって連日の史上最高値更新となりました。そして、米10年債利回りは一時2.15%を割込む水準まで低下したことからドル円は指標発表直前の111円54銭から110円33銭まで円高が進みました。
5月雇用統計前後のドル円の動き (15分足)
- ※出所:FX総合分析チャート
さらに今回の雇用統計では、総労働投入時間が前月比+0.1%(前月+0.5%)、総労働所得も前月比+0.3%(前月+0.7%)と鈍化したことが明らかとなりました。今後の小売売上高のほか、個人消費への影響が懸念されます。
ブレイナードFRB理事は5/30の講演で、『労働市場の改善とインフレの進行不足という矛盾する状況が長引くことになれば、政策金利の想定レートを再評価する必要につながるかもしれない』と、FRB内部でも危機意識があることを明らかにしており、今回の雇用統計の結果がこの意識をさらに高めるかもしれません。
6/8の重要イベント 英選挙・ECB理事会・FRB前長官証言の要点は?
英下院議会選挙・・・ポンドの動きに注意
英議会選挙では5/22のマンチェスターのテロに続く、先週末のロンドン橋付近でのテロの影響が懸念されます。
メイ英首相率いる保守党が勝利した場合でも、過半数を僅かに上回る程度の議席数しか獲得できなかった場合、あるいは議席数を大きく伸ばせなかった場合のメイ保守党政権の弱体化は避けられず、6/19から開始されるEU離脱交渉や国内政治への影響を懸念したポンド安には注意が必要です。
ECB理事会・・・ユーロの動きに注意
ECB理事会を前に、先週は独メルケル首相から『ECBの(緩和的な)金融政策の影響で、ユーロは過度に弱すぎる』との発言があり、ECBドラギ総裁は『成長に対する下振れリスクは一段と後退する一方で、物価上昇圧力は依然として弱い』との認識を明らかにしました。
しかしECB当局者からは、『今回のECB理事会で経済に対する見方を上方修正、さらに緩和政策の解除についても議論する見通し』との発言が飛び出しており、理事会の結果とドラギ総裁の会見に対するユーロの反応が注目されます。
コミーFBI前長官の議会証言・・・米国株式 /米ドルの動きに注意
コミー前FBI長官の議会証言では、フリン前国家安全保障担当のロシアとの不適切な関係に対する捜査中止をトランプ大統領が具体的に指示(司法妨害)したのではとの疑惑解明につながる発言があるかが焦点となります。
証言次第では、トランプ大統領の求心力の低下は避けられず、税制改革の議会審議や、政策実行が遅れることにより、インフレ期待の低下につながる可能性もあります。FRBの金融政策の変更や上昇を続けるNY株式市場の調整など金融市場への影響まで波及するのではとの警戒も広がっているだけに注目です。