110円割れがせまる? ドル円を確認!
金融市場では米FRBが先週のFOMCで12月に続いて政策金利を引き上げたにもかかわらず、米長期金利やドルの上昇は長続きすることなく、3/23の3時にドル円は昨年11/22以来となる110円72銭まで下落しています。
102-103円を中心に膠着状態を続けていたドル円は、昨年11月の米大統領選当日トランプ候補の優勢を伝えるやいなや一方向に101円19銭まで下落しました。
ところがトランプ候補の勝利演説以降、オバマ政権の政策を全否定して、財政の拡大均衡を目指した税制改革や社会インフラ整備などの成長戦略に対する期待が高まったことから、NYダウが12月半ばに史上最高値を更新しました。
さらにはインフレ期待も高まり、米長期金利も上昇に転じたことから昨年12/15にドル円は118円66銭まで上昇しました。
直近のドル円は118円66銭を高値に、「120円突破は時間の問題」とささやかれ始めた市場の見方をよそに、120円超えどころか110円割れが意識される水準にまで下落しているのが現状です。
米大統領選以降のドル円 (日足)
- ※出所:FX総合分析チャート
ドル円は12/15の118円66銭、1/3の118円60銭を上値とする一つ目のダブルトップが形成され、さらに1/19の115円62銭と3/10の115円51銭を上値とする二つ目のダブルトップを否定するためには、少なくとも115円台半ばを上抜ける必要がありました。
しかし、3/14-15のFOMCで、昨年12月に続く0.25%の政策金利引上げにもかかわらず、長期金利の上昇は限られドル円は115円から徐々に下押し圧力を高め、3/23には110円台に突入しています。
一方で下値を見ると2/7の111円59銭、2/28の111円69銭を付けた後、3/10に115円51銭まで反発したことから、2月の111円60銭付近で一旦はダブルボトムの完成を確認したとされました。
しかしながら、ドル円は3/23に110円72銭まで下落したことで、このダブルボトムが否定されることとなってしまったため、110円割れの可能性が懸念されています。
オバマケアを巡る議会審議の行方がトランプ政権の直近の山場
トランプ政権については、移民問題やイスラム圏からの入国を巡って世論の批判が高まっており、雇用者増加や株式市場の史上最高値更新といった実績を盾に数々の批判をかわしてきましたが、ここにきて窮地に立たされようとしています。
これまでの神通力が薄れつつある中でオバマケアを巡る議会審議が、トランプ政権の今後の政策運営の行方を占う上で直近の山場となりそうです。
一部の共和党議員からは「オバマケアの撤廃とトランプケア(国民皆保険改革)が議会承認を得られなければ税制改革などのトランプ政権が掲げる成長戦略が危ぶまれる」といった声も挙がっています。
大統領選挙期間中に掲げた10年間で1兆ドルの社会インフラ整備や大規模な税制改革が円滑に進みそうだという楽観的な見通しに基づいた、「米長期金利の上昇でドル高が加速する」というシナリオも、見直しを迫られることになりかねません。
米10年債利回りが2.6%台でピークアウトし、政策期待で上昇してきた長期金利が低下傾向で推移すれば、ドル円は110円割れを視野に円高圧力が加速しそうです。
こうした懸念が現実味を増す中で、先週末にドイツで開催されたG20では『保護主義を排除する』との文言を明記せず、米国の通商・貿易政策に対抗できないまま共同声明を採択してしまったことも、ドル円の上昇期待が剥落する一因となったようです。
トランプ政権誕生以降続いてきた、ドル高円安シナリオを引き続き信じるのか、それとも調整局面と見るのか、米国時間の3/23(木)から審議されるオバマケア改革の行方がドル円の先行きに影響を及ぼしそうです。