いよいよ大統領選 開票スケジュールと、選挙後のドル/円への影響は?
いよいよ11/8(火)(日本時間11/9[水])、接戦を繰り広げてきたクリントン候補とトランプ候補との戦いに終止符が打たれます。
米大統領選 開票スケジュール(日本時間)
11/9(水)午前8時 | インディアナ州などで投票終了 |
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11/9(水)午前9時 | 激戦州の一つフロリダ州やジョージア州で投票終了 |
11/9(水)正午前後 | 一部米メディアから投票結果が示される可能性 |
11/9(水)午後3時 | アラスカ州などを最後に全投票が終了 |
10月28日にFBIのコニー長官がクリントン候補の私的メール問題の再捜査に言及して以降、トランプ候補の急激な追い上げに一部の調査ではトランプ候補の支持率がクリントン候補を上回る結果も見られ、世界の金融市場は株安・円高が進行しました。
10/31〜11/4の1週間でNYダウは1.50% の下落に留まったものの7日続落となり、4ヵ月ぶりの安値で週末の取引を終了したほか、S&P500指数は実に36年ぶりとなる9日続落となりました。トランプ候補の政策に対する不確実性を市場が警戒していることを示す株価指数の値動きだったと思います。
しかし、11/7(月)の早朝、FBIコニー長官が「クリントン候補の訴追を求めない方針」を明らかにし、議会に書簡を送ったとロイターが報じたことで、ドル円は先週末のNY市場の終値103円10銭から1円以上円安が進み、一時104円53銭まで反発する場面がありました。
日経平均も取引開始直後から270円以上反発するなど、クリントン候補の支持率に追い風になるだろうとの観測が、先週末までの金融市場の下落分の一部回復に向けて動き出しているようです。
クリントン候補が大統領選に勝利した場合、想定されるドル円の動きは?
クリントン候補が大統領選に勝利した場合に、想定される米国株価とドル円の動きは以下の4点です。
(1) 初動の反応はトランプリスクが回避されたとの安心感から円安・株高
(2) (議会の行方次第だが)最低賃金の引上げ方針が示され、消費刺激からドル高
(3) 金融規制の施行、金融機関への課税強化が銀行融資の鈍化となればドル安
(4) 税制中立路線、ドル安政策などが示されるとドル安・円高
トランプ候補が大統領選に勝利した場合、想定されるドル円の動きは?
一方、トランプ候補が大統領選に勝利した場合に、想定される米国株価とドル円の動きは以下の4点です。
(1) 政策の不確実性、不透明感の高まりを警戒して円高・株安
(2) 移民排除、保護主義、自由貿易後退の可能性から米経済が停滞、ドル安
(3) 法人税、所得税引下げ、積極的な財政政策で、米成長加速への期待からドル高・株高
(4) ドッドフランク法などの金融規制に反対を表明、米利上げに前向きとなればドル高
11/4(金)発表の10月雇用統計 結果もチェック
5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | |
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非農業部門雇用者数(万人) | 2.4 | 27.1 | 25.2 | 16.7⇒17.6 | 15.6⇒19.1 | 16.1万人 |
失業率(%) | 4.7 | 4.9 | 4.9 | 4.9 | 5.0% | 4.9% |
米時間給賃金 前月比(%) | 0.2 | 0.1 | 0.3 | 0.1 | 0.2⇒0.3 | 0.4% |
※出所:SBIリクイディティ・マーケット提供
11/4(金)に発表された米10月雇用時計、非農業部門就業者数は、市場予想(17.5万人増)を下回る16.1万人増となった一方で前月分が19.1万人増、8月も17.6万人増とそれぞれ上方修正されました。
また、時間給賃金は前月比+0.4%と今年1月以来の高水準となったほか、前月分も+0.3%へ上方修正されました。さらに前年同月比では+2.8%と7年4ヵ月ぶりの高水準を記録し、12月利上げを後押しする材料となりました。
雇用統計の結果を踏まえて講演に臨んだフィッシャーFRB副議長は、
『雇用情勢やインフレはFRBの目標を上回る可能性があり、最新の経済データは利上げの論拠を強める結果になった』
と発言しています。
まとめ 〜大統領選と同時に行われる上院議会選挙にも注意〜
雇用統計では、直近3ヵ月平均が17.6万人の就業者数、5.0%を下回る失業率の下、順調な労働市場の回復を確認しています。さらに時間給賃金の前年同月比も+2.8%と上昇しているなど12月FOMCにおいて利上げを見送る要因は大統領選後の政治的混乱が広がるか否かという一点に絞られた感があります。
仮にクリントン候補が勝利した場合には、FRBの利上げを判断するには好材料となることは間違いないと思われますが、大統領選と同時に行われる上院議会選挙の行方にも注意する必要があるかもしれません。
米上院は大統領が締結した条約や最高裁判事、さらには政府高官人事などを承認する権限を有しています。
議会下院は共和党が過半数を占めており、上院も共和党が過半数を占めることになれば、クリントン大統領の決断に対して反対ばかりという事態を招きかねず、政治停滞のリスクという新たな火種を抱えることになりかねません。大統領選の行方と併せて上院議会選挙の行く末にも注目です。