ワシントンG20、カタールでの産油国会合を終えて
先週末のワシントンでのG20の共同声明は2月末の上海G20から一言一句変更なしとした内容となり為替に関しては「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済や金融の安定に悪影響を与える」と指摘、各国が「為替市場について緊密に協議する」との協調姿勢を示しました。さらに「通貨の競争的切り下げの回避」や「競争力向上のために為替レートを目標としない」とする2月のG20での基本的合意を再確認する内容になりました。
仮に、足元で続いているドル安がドル高に転換すれば米国の製造業が打撃を受け、中国人民元の切り下げ圧力が強まることで、中国からの資金流出や中国企業の抱えるドル建債務の増加懸念につながります。さらにドル高は、ドル建てで取引される原油価格の下落につながるだけに、世界経済の不透明感が払拭されるまではドル安による人民元安定と原油高の継続が望ましいとの声も聞こえています。
米ドル/円の推移(日足)
出所:SBIリクイディティ・マーケット
4/14にはラガルドIMF専務理事が「日本市場を注視している、急激な変動時の為替介入は正当化できる」と発言していた上に、「金融緩和の結果としての自国通貨安」は少なくとも例外として扱うことに期待が持たれていたことも事実です。さらに、振れ幅を抑えることを目的で実施されるスムージングオペに限った為替介入は容認されるだろうとの見方もあって、先週後半以降は円高進行に歯止めがかかっていました。上海G20での「競争的切下げの回避」の文言に縛られ、短期間で急速に進んだ円高に対し、ひとえに円高牽制発言だけが頼りだったところにラガルド発言があっただけにドル/円は先週4/15には一時109円73銭まで上昇する場面が見られました。
為替介入の想定ケース
介入実施のタイミング |
介入目的 |
介入手法 |
|
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ケース1 |
為替が大きく変動 |
市場参加者に悪影響を与えない目的 |
救済的介入 |
ケース2 |
為替が大きく変動 |
振れ幅を小さくすることを目的 |
スムージングオペ |
ケース3 |
為替水準に目標を設定 |
為替相場を目標水準まで誘導する目的 |
強制的介入 |
出所:SBIリクイディティ・マーケット
しかしながら、こうした円安への反発期待も週末を挟んで急激にしぼみ、あらためて105円台を目指す円高が加速するといった懸念が高まっているようです。
さらに4/17にカタールで開催された産油国会合では、サウジアラビアとイランとの増産凍結へ向けての双方の溝が埋まらず、合意は6/2のOPEC総会へ先送りされました。こうした動きを受けて原油価格は週明けの原油先物市場で37ドル台へ下落、先週末のNY市場の終値40.36ドルから約7%も下落したことになります。
原油価格は2月前半の26ドル台を下値に先週4/12には昨年11月後半以来となる一時42ドル台まで回復していましたが、結果的に40ドル台を維持できずに反落しています。
原油価格下落の影響
出所:SBIリクイディティ・マーケット
原油価格の上昇を通じてインフレ加速となれば、不況での物価上昇が同時に進行するスタグフレーションにつながりかねません。それだけに、2月の上海G20での中国の景気回復に向けた配慮が、今回のワシントンG20でも維持された可能性があり、しばらくはドル安に耐える?必要があるのかもしれません。
過去の値動き(米ドル/円 日足)
出所:FX総合分析チャート