中国 五中全会 |
開催日程 |
10/26(月)〜10/29(木)予定 |
中国『五中全会』を前に
2020年に向けた最後の5ヵ年計画発表
日本には該当する授業はありませんが、中国の義務教育課程の中で、愛国教育を中心とした「思想政治」と呼ばれる授業があり、中国・共産党の考え方や社会主義理論を中心に愛国教育が行われています。その授業では、中国の国家戦略の指針として「小康社会」という言葉が頻繁に用いられています。当初「貧困からの脱出」という故ケ小平氏が提唱した思想をベースにしたものでしたが、経済発展と共にこれまでの党大会を経て次第に「小康社会」=「先進国家」と捉えるようになってきた変遷があります。
2020年に中国共産党は設立100周年を迎えるにあたり、「小康社会」=「先進国家」の実現は中国人民の「百年目標」とも言われています。そうした背景の中、「先進国家」の実現に向けて、2012年11月開催の中国・全人代では、「2010年を基準とし、2020年のGDPと国民所得を2倍に拡大する」との目標が掲げられました。
そして、今回の五中全会で公表される今後の5ヵ年計画では、2020年までにGDPを2010年時点の倍まで拡大するという目標に向けた最後の重要な5ヵ年計画となります。それだけに中国の景気減速への懸念が高まる中、中国政府がどのような方針を示すのか、大規模な財政出動を伴うような方針があるのか、国内外から注目度が高まっています。
『五中全会』(=中国経済運営の先々5ヵ年計画を協議する党中央委員会)とは?
5年に1度開催される全国人民代表大会(=全人代)の常設機関である常務委員会は、5年間の任期内に7回の党中央委員会全体会議(全体会議)が召集されます。第1回が党の人事、第2回は政府閣僚の人事などと、毎回の全体会議で定例の議論テーマが設けられ、今回がその第5回目にあたり、国民経済をテーマに協議される予定です。5ヵ年計画の正式名称は「国民経済と社会発展の5ヵ年計画」と呼ばれ、中国政府はこれから5年間の中期的な経済運営の基本方針を決めることになります。
2005年以降の「五中全会」及び当時の経済状況
2005 |
2010 |
2015 |
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政府要人 |
国家主席(最高指導者) |
胡錦濤 |
胡錦濤 |
習近平 |
国務院総理(首相) |
温家宝 |
温家宝 |
李克強 |
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5ヵ年計画の主な内容 |
GDP成長目標(%) |
7.5 |
7.0 |
6.5(予想) |
主な議論テーマ |
胡氏提唱の「科学発展観」をもって、継続可能な成長を目指すなど |
経済構造の調整を通じて経済発展モデルの転換を加速させるなど |
習指導部の改革路線、習氏の考え方を反映 |
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当時の経済データ |
GDP成長率(%) |
11.4 |
10.6 |
7.0(推定) |
名目GDP(兆ドル) |
2.3 |
5.9 |
10.0(推定) |
|
1人当たりGDP(ドル) |
1,740 |
4,515 |
7,700(推定) |
- 出所:SBIリクイディティ・マーケット作成(経済データの出所:IMF)
今回の注目点
今回の五中全会はGDP成長目標をはじめ、民間資本の銀行や病院等への進出に関する規制緩和、高齢化社会向けの福祉産業の育成、環境保護など様々な課題についての政府方針を示し、習近平国家主席の考え方や改革路線をより明確に反映する場となります。
中でも最も注目すべきなのはGDP成長目標となります。前述の通り、GDPと国民所得の倍増目標(2010年比)を達成するための2020年までの5年間は、計算の上では、平均6.6%の成長率が確保できれば十分になります。5ヵ年計画での成長率目標は、通常0.5%単位で調整されることが多く、実際の成長率と比べると、一定の余裕を持たせて控えめに設定されることが、これまでは一般的となります。従って、「今回は6.5%が無難なのでは」といった憶測もこうした根拠に基づいているのかもしれません。仮に、より強気な目標が公表された場合、その目標の実現に向けて、大規模な財政出動といった景気対策への期待感も高まることになると思われます。
また、以前から取り沙汰されている国有企業の改革も注目されます。2012年に発足した習近平国家主席指導部は、これまでは権力基盤を固めるために腐敗の撲滅に専念してきました。米中首脳会談や国連総会での演説を終えたこともあり、今後の政権運営への軸足は経済運営に移行されます。
さらに習主席自身が掲げる「ニューノーマル」の要となる構造改革の実行について、どの程度本腰を入れた内容になるのか注目です。また、中国が国慶節の休暇期間中にTPPの大筋合意が発表されたこともあり、そのTPPに参加していない中国政府は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)やシルクロード構想などの本格的な始動を目指すなど、新たな対抗策を打ち出す可能性もあり、習近平政権の経済運営は世界中から一層注目を集めることになります。
こうした中で10/19には中国7‐9月期のGDPの発表が控えており、10/26から開催を予定している「五中全会」の計画に影響を与える可能性もあるだけに、指標結果に一喜一憂する相場が続くことになるかもしれません。
「五中全会」はココに注目!
1 |
GDP成長目標 |
平均6.6%の成長率なら十分 より強気な目標が公表される場合、大規模な財政出動といった景気対策への期待感が高まる |
2 |
国有企業の改革 |
どのような指針が示されるのか? これまでは権力基盤を固めるため、腐敗の撲滅に専念。今後は経済運営に軸足を移行される |
3 |
「ニューノーマル」の要となる構造改革の実行 |
どの程度本腰を入れた内容になるのか? |
4 |
新たな対抗策 |
TPPへの対抗策として、アジアインフラ投資銀行(AIIB)やシルクロード構想などの本格的な始動を目指すのか? |
直近の値動き(人民元/円)
※出所:FX総合チャート(日足)
直近の値動き(米ドル/円)
※出所:FX総合チャート(日足)