1月FOMC議事録の考察
2月19日に公表された1月FOMC議事録の中で以前から用いられている『利上げまでの期間、辛抱強く』の文言削除を巡っては、利上げ時期を想定させてしまうリスクの可能性を多くの委員会メンバーが判断していることが確認されました。利上げ時期を巡っても『早すぎた場合』、『遅すぎた場合』のリスクについて検討されたほか、多くの委員会メンバーが『より長期に渡り、事実上のゼロ金利政策を維持する方向に傾いている』として、早期利上げに対する慎重論も聞かれハト派的な内容となりました。明らかに欧州を中心とした量的緩和やマイナス金利の影響について議論されたようです。
今年に入り約20ヵ国の中央銀行が金融緩和を実施しました。デンマーク中銀は、1月半ば以降4回もの利下げを行い、住宅ローンにもマイナス金利が適用され、表面上『ローンをすると金利がもらえる』状態になるなど、異常な事態が普通になりつつあります。10-12月期GDPが予想を上回る前期比年率+0.7%となり、2月のZEW景況指数も1年ぶりの高水準となるなど、4ヵ月連続で改善を続けるドイツですら1年物から6年物国債までマイナス金利となっています。スイスでは9年物国債までがマイナス金利になる有様になっています。先進国で発行されて0%以下の金利で取引されている国債は全体の4分の1、約7.6兆ドル(900兆円規模)に及んでおり、緩和がお家芸とされる日銀の『量的緩和や異次元緩和』が色褪せてしまう印象です。
こうした状況下、1月のFOMCで新たに加えられた『国際情勢に配慮』という点に関しては、中国、中東、ウクライナ、ギリシャなどの弱い海外経済の影響にも懸念が示されたほか、強いドルが継続的に輸出企業の業績に悪影響を及ぼしかねないとして、数人の委員会メンバーからドル上昇のリスクが指摘されました。市場参加者の多くから「利上げ時期へのヒントを何一つ得ることができない内容」との声が聞かれました。
これらの外部環境を考えればFRBが利上げに積極的になりづらい、という状況を説明するに十分な理由があるほか、利上げを急がなければならない決定的要因は欠如しているのも確かです。米1月の雇用統計は、時間給賃金が前月比+0.5%と予想を上回ったほか、新規就業者数も11月分が42.3万件、12月分が32.9万件と大幅な上方修正され、1月分も予想を上回る25.7万件となりました。一方失業率は、前月から0.1%上昇し5.7%と市場予想を下回りましたが、労働参加率が前月の62.7%から62.9%へ上昇したことで説明が付き、全体的に良好な結果となりました。しかし、これが決定的な早期利上げの根拠となりうるかについて、FOMC議事録では結論を先送りしました。
それだけに、
(1)2月24日-25日のイエレンFRB議長による上下両院での議会証言の席で、利上げについての発言をするか、さらに共和党議員が多数を占める議会での質疑応答が注目されます。
(2)次回3月6日の米2月雇用統計が、引き続き労働市場の好調持続を示すのか、3月18日のFOMCを前に注目されます。
(3)3月18日のFOMCで、これまでの声明文の『利上げ開始まで忍耐強く』との文言が削除されるか注目です。『忍耐強く』との文言が削除されれば今年6月の利上げ開始の実現性がより高いものとなる可能性があるだけに注目されます。
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