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2018/6/12
提供：三菱UFJ国際投信

ナスダック市場が最高値を更新する一方、新興国通貨は引き続き軟調
アルゼンチン、トルコに続き、ブラジル、メキシコの通貨が相対的に売られる
今週は米FOMCでの政策金利見通しに注目、米朝首脳会談への関心は限定的か

荒武　秀至氏　三菱UFJ国際投信（株）戦略運用部チーフエコノミスト
1987年慶應義塾大学卒業後、証券会社エコノミストとして経済調査担当。1992年シンガポール国立大学にて経営学修士（MBA）取得。1995年国際投信委託（現三菱UFJ国際投信）入社、2002年1月より現職。一次データ及び現地調査を柱とする経済調査に20年以上専心。IMF・世界銀行、米欧の中央銀行・財務省等との定例情報交換に加え、新興国の現地調査を踏まえた、グローバル経済の詳細で平易な解説に定評がある。

「投資環境ウィークリー」6月11日号より抜粋

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4月に米10年債利回りが3%を超え、市場はリスクオフ相場となり、株式市場や新興国通貨が売られる展開となりました。足元ではナスダック市場が最高値を更新するなど、株式市場は堅調さを取り戻しているものの、新興国通貨は引き続き軟調な展開が続いています。新興国の中でまず売られたのは、経常赤字や対外債務などで問題を抱えるアルゼンチンやトルコとなりました。次に警戒される通貨がどこかと注目されていた中で、ブラジル・レアルやメキシコ・ペソが下落しました。この2ヵ国の共通点は、今年、大統領選など政治イベントを控えるところです（ブラジルは10月、メキシコは7月）。経常収支でみるとブラジルやメキシコより下落しそうな通貨があるなかで両国の通貨が売られる展開は、市場の関心が政治など個別国の事情にも移っているようにみられます。市場の売り圧力を受け、ブラジルは6月8日に為替介入などの通貨防衛策を強化する姿勢を示し、レアルの下落を抑えました。引き続き、新興国市場の動き、当局の対応に注目です。
今週は米国、ユーロ圏、日本で金融政策決定会合が予定されています。米国とユーロ圏では成長率見通しなどが示されるため注目です。政治的には米朝首脳会談（12日）が注目です。非核化などで合意がみられたとしても、北朝鮮が経済成長などの恩恵を享受するのはまだ先とみられ、市場の反応は限定的とみています。予測が難しい首脳同士の会談となるため、リスクはまだあるとみています。

◆米国：消費者物価（12日）、小売売上高（14日）、ミシガン大学消費者信頼感（15日）などの重要指標も発表されますが、注目は連邦公開市場委員会（FOMC）です。今会合では、利上げ（1.50-1.75%→1.75-2.00%）は既に織り込まれており、注目は今後の利上げ見通し（ドット・チャート）です。前回3月時点では、年内の利上げ回数は3回、政策金利の長期見通しは2.875%でした。5月の雇用統計も堅調な結果であり、利上げ見通しが引き上げられる可能性もあります。通商面では、6月15日までに25%の関税対象となる500億ドル相当の中国製品が公表される予定です。最近では、鉄鋼・アルミニウム輸入関税の適用猶予を受けていたEU、カナダ、メキシコでも関税が課され、各国が報復措置の対応をとるなど、貿易摩擦の懸念が高まっています。対中国では、中国の通信大手・中興通訊（ZTE）への制裁が見直されるなど、関係改善の動きもみられますが、関税リストが公開されると市場は貿易摩擦への警戒感を強める展開になるとみられます。
◆原油：来週22日に開催される年2回のOPEC（石油輸出国機構）総会への注目が高まる中、今週は12日のOPEC月報に注目です。足元では同総会で議論される協調減産の出口観測が材料となり、原油価格は下落していますが、5月はイラン制裁再開やベネズエラの制裁強化などの原油上昇要因もありました。今回の月報では制裁発表後の生産状況が確認でき、通常より注目度が高くなります。（永峯）

今週の主要経済指標と政治スケジュール

6/11（月）
（他）トルコ 1-3月期実質GDP（前年比） 10-12月期：+7.3% 1-3月期：（予）+7.0% （他）トルコ 1-3月期経常収支 10-12月期：▲48.1億ドル 1-3月期：（予）▲51.5億ドル
6/12（火）
（米）連邦公開市場委員会（FOMC、～13日） FF金利誘導目標： 1.5～1.75%⇒（予）1.75～2.0% （米）5月消費者物価（前年比） 4月：+2.5%、5月：（予）+2.7% （米）米朝首脳会談（独）6月 ZEW景況感指数現状　5月：+87.4、6月：（予）+85.0 期待　5月：▲8.2、6月：（予）▲14.0 （他）OPEC月報（他）5月消費者物価（前年比） 4月：+4.58%、5月：（予）+4.80%
6/13（水）
（米）パウエルFRB議長記者会見（英）5月消費者物価（前年比） 4月：+2.4%、5月：（予）+2.4% （他）韓国統一地方選挙
6/14（木）
（日）日銀金融政策決定会合（～15日）政策金利残高適用金利：▲0.1%⇒（予）▲0.1% （米）5月小売売上高（前月比） 4月：+0.2%、5月：（予）+0.4% （欧）ドラギECB総裁記者会見（欧）欧州中央銀行（ECB)理事会リファイナンス金利：0.0%⇒（予）0.0% 限界貸出金利：0.25%⇒（予）0.25% 預金ファシリティ金利：▲0.4%⇒（予）▲0.4% （豪）5月失業率 4月：5.6%、5月：（予）5.5% （他）FIFAワールドカップ開幕（中）5月鉱工業生産（前年比） 4月：+7.0%、5月：（予）+7.0% （中）5月都市部固定資産投資（年初来累計、前年比） 4月：+7.0%、5月：（予）+7.0% （中）5月小売売上高（前年比） 4月：+9.4%、5月：（予）+9.6%
6/15（金）
（米）5月鉱工業生産（前月比） 4月：+0.7%、5月：（予）+0.2% （米）6月ニューヨーク連銀製造業景気指数 5月：+20.1、6月：（予）+18.5 （米）6月ミシガン大学消費者信頼感指数（速報） 5月：98.0、6月：（予）98.5 （米）対中国制裁関税最終リスト公表（中）5月新築住宅価格（70都市）（主要70都市、前月比で上昇した都市数） 4月：58、5月：（予）NA （他）ロシア金融政策決定会合 1週間物入札レポ金利：7.25%⇒（予）7.25%

注）上記の日程及び内容は変更される可能性があります。

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