2018/5/22
提供:三菱UFJ国際投信
「投資環境ウィークリー」5月21日号より抜粋
先週の市場では米長期金利が上昇し米ドルが全面高に。米10年債利回りは18日に一時3.126%と2011年以来の水準に上昇しました。米国では、4月の鉱工業生産や小売売上高と5月の連銀景気指数(NY・フィラデルフィア)が堅調な景気の拡大を示唆。NY原油先物も前週比0.58ドル上昇し、インフレ加速を連想させました。
米長期金利の上昇とドル高は、新興国からの資本流出を促進。新興国の一部は、自国通貨の下落に伴って金融政策の変更を強いられています。先週16日、ブラジル中央銀行は政策金利を6.5%で据置き、2016年10月以降の連続利下げの終了を示唆。前回3月の声明で示唆された追加利下げは見送られました。また、翌17日、インドネシアの中央銀行が政策金利を4.25%から4.5%へ引上げ。景気がやや勢いを欠き物価も落着いた中での利上げは、通貨防衛のためとみられます(6頁)。
4月末より先週18日にかけて、アルゼンチン・ペソは対米ドルで▲15.9%、トルコ・リラは同▲9.6%下落と、メキシコ(▲6.2%)、ブラジル(▲6.2%)、インド(▲2.0%)、インドネシア(▲1.7%)に比べ大きく下落。アルゼンチンは通貨防衛のために政策金利を40%まで引上げた後、今月8日にIMF支援を要請すると公表。通貨下落に悩むトルコの中央銀行は、先週16日にリラ相場を注視し必要な措置を取ると表明し、市場は為替介入の積極化や緊急利上げの可能性を意識。2013年の米長期金利上昇時のような主要新興国通貨の大幅下落のリスクも意識されました。
しかし、窮地に立つアルゼンチンとトルコは、昨年の経常赤字がGDP比5%を超え外貨準備も短期対外債務とほぼ同水準と、外貨繰りの弱さが突出しており、近年経済が安定化している他の主要新興国とは異なります。現在のところ、2008年や2013年に見られたような主要新興国通貨の大幅下落が起こる可能性は低いでしょう。米国と中国の景気は堅調に拡大しており、一部の新興国の混乱が世界的な株価の大幅下落などにつながる可能性は限定的と考えられます。
新興国通貨の安定化には、ドル高と米金利上昇の同時進行が止まることが不可欠。景気の軟化とともに低迷するユーロ(4月末より先週18日までに対ドルで▲2.5%下落)の底打ちが待たれます。しかし、先週16日にはイタリアで連立政権樹立を目指す「五つ星運動」と「同盟」がECBに債務減免を要求との懸念からユーロが下落。不透明な同国情勢がユーロの重石になる可能性も懸念されます(5頁)。
◆米国:23日の米FOMC議事録(5月1-2日分)では、同会合後の講演等で高官たちが言及する(a)先行き方針(フォワード・ガイダンス)、(b)インフレの一時的な上ぶれ、(c)長短金利逆転に関わる議論が注目されます。サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁は、政策金利は「当面は長期的な水準を下回るであろう」との一文は、どこかで役割を終えるだろうと発言。政策金利が上昇し長期水準に近づく中、同様の考えを支持する参加者が増えているのかに注目が集まります。(入村)
今週の主要経済指標と政治スケジュール
5/21(月) |
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(日)4月 貿易収支(通関ベース、季調値) |
5/22(火) |
(米)米韓首脳会談 |
5/23(水) |
(米)FOMC議事録(5月1・2日開催分) |
5/24(木) |
(日)日銀 桜井審議委員 講演 |
5/25(金) |
(米)パウエルFRB議長 スウェーデン中銀会議に出席 |
5/26(土) |
(他)コロンビア大統領選挙(第1回投票) |
注)上記の日程及び内容は変更される可能性があります。
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