2018/5/9
提供:三菱UFJ国際投信
「投資環境ウィークリー」5月8日号より抜粋
米鉄鋼関税適用猶予の延長、米中貿易協議を受け世界的な貿易縮小懸念が、南北首脳会議や米朝首脳会談決定(6月)を経て朝鮮半島緊迫化懸念がそれぞれ和らいだ印象です。ただし、米国離脱も懸念されるイラン核合意の見直し交渉を前に、中東情勢悪化懸念が意識され、今一つ強気になり切れない相場が続いています。
これら地政学問題に加え、足元の米ドル高の背景にある米金利上昇に要注意です。昨年成立した米税制改革による景気加速期待と財政悪化懸念が混在するなか、足元の原油高を受けたインフレ懸念、それに伴う利上げ加速観測などが要因ですが、一方で長短金利差は一段と縮小、先行きの景気減速を織り込む動きともいえます。
実際、年初に比べ米欧景気の増勢は鈍化、昨年の世界的な貿易活性化を支えた中国も構造改革継続で景気の循環的減速が不可避な情勢です。先行きに強気なFOMC(米連邦公開市場委員会)の思惑通り、米国景気を冷やすことなく、金融政策を正常化することが可能なのか、市場が不安を抱える展開が続くと思います。
◆日本:10日の景気ウォッチャー調査(4月)に注目です。特に直近3月まで5ヵ月連続で低下し節目の50を割り込んだ先行き判断DIが一段と悪化すれば、春闘で賃上げ率が前年より改善したとはいえ実質賃金減少(直近2月は前年比▲0.8%)が続くなか、個人消費低迷(1-3月期は悪天候の影響)が長引く懸念があります。
◆米国:10日の消費者物価(4月)は原油高の影響で総合は前年比加速が予想され、年4回(年内あと3回)利上げ観測を強める材料になるとみます。他方、11日のミシガン大学消費者信頼感指数(5月速報)は春先からの株価低迷で前月比低下が見込まれ、イラン問題を巡る不透明感と合わせ株価には重石となりそうです。
◆ユーロ圏:通貨ユーロは対米ドルで年初来安値となるなど軟調です。景気の増勢鈍化とインフレ率低迷、昨年来のユーロ高の影響を考慮しECB(欧州中銀)は金融緩和解除に慎重姿勢を強めている感もあります。資産買入れの年内終了、来年央の利上げ開始という市場の見方が揺らぐなか、ユーロ軟調が続く見通しです。
◆中国:8日に貿易統計(4月)が公表されます。今年は春節休暇が遅く、直近2ヵ月は不安定な動きでしたが(輸出は2月急増、3月急減)、生産・貿易活動が平常に戻った同月の値が輸出堅調持続を裏付けるか注目です。他方、過去最大水準にある対米貿易黒字額が膨らめば対米通商交渉への不安も意識されると考えます。
◆ブラジル:通貨レアルは下落が続いています。インフレ率低下に伴う利下げ継続(2016年10月開始)で景気は回復に転じるも、失業率が足元再び上昇するなど陰りもみられます。10月大統領選挙に向け候補者が乱立(ルラ元大統領が収監後も支持率トップ)、財政再建期待が薄れている点も悪材料といえます。(瀧澤)
今週の主要経済指標と政治スケジュール
5/7(月) |
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(米)ボスティック・アトランタ連銀総裁 講演 |
5/8(火) |
(米)パウエルFRB議長 講演 |
5/9(水) |
(日)3月 現金給与総額(前年比) |
5/10(木) |
(日)日銀金融政策決定会合 主な意見 |
5/11(金) |
(米)5月 ミシガン大学消費者信頼感指数(速報) |
5/12(土) |
(他)イラン核合意からの米国離脱判断期限 |
注)上記の日程及び内容は変更される可能性があります。
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