ベトナムの株式市場が好調だ。VN指数は3月に入り終値で昨年9月以来となる450ポイントを回復している。好調な株式市場の背景には多くの要因があり、ベトナム特有の要因もあれば、世界的に共通して言える要因もあるが、今回はベトナム特有の要因について分析していく。
ベトナム国家銀行(中央銀行)は今月の12日に利下げを行った。「利下げ」といえば、多くの国では政策金利を引き下げることを意味するが、同国の場合ではウォッチすべき金利が多い。今回の利下げでは、リファイナンスレートを14.00%、公定歩合を12.00%と、それぞれ100bps引き下げている。更に、貸し出し基準金利は9%に据え置いたものの、ドン建て預金金利の上限は13.00%に引き下げている。下図を見れば分かるとおり、同国の消費者物価指数はリーマンショックからの回復局面で大きく上昇しており、昨年後半で は前年比20%以上も上昇していた。中国で消費者物価指数上昇率が前年比で6%台に乗ったことがニュースになっていたことを考えれば、同じ新興国というカテゴリーの中でも、同国のインフレ問題がいかに大きな問題だったかは理解できるだろう。このような状況で同国政府は2009年末以降は金融引き締め政策をとっていたが、足元のインフレ圧力の減速傾向を受けて、中央銀行は3年ぶりに金融緩和へ舵を切った。しかし、不透明な原油市況や昨今の株高が示すような投資資金の流入を考慮すると、現在のインフレ圧力の減速傾向と中銀の緩和スタンスを過度に楽観視しない方がいいだろう。
図1:ベトナムの消費者物価指数(前年比)の推移
インフレ圧力の減速傾向と株式市場の反騰をどう捉えるか?