2025-12-12 06:04:05

“5月は、関税緩和の好材料と実体経済悪化のせめぎ合いに注目”

2025/5/1

提供:フィリップ証券株式会社

リサーチ部:笹木 和弘

2025年1月「銘柄ピックアップ」振り返り

2025年1月分の米国ウィークリー「銘柄ピックアップ」について掲載直前週末終値から4/25終値までの騰落率上位6銘柄を見ると、関税による悪影響を受けにくい銘柄が上位。オンライン保険販売のエバークォートEVERが首位。ヘルスケア関連のアボットラボラトリーズABTジョンソン・エンド・ジョンソンJNJが2位と4位を占めた。農業機械メーカーのディアDEは好材料が無い中でも底堅さを保つ。3M(MMM)は関税の影響を認めつつも経営再建が進展中。ビザVは、4/29発表の1-3月期決算で消費の減速の影響が懸念される。

2025年1月「銘柄ピックアップ」振り返り〜損保・ヘルスケア等ディフェンシブ

主要銘柄の騰落率上位の傾向

米国株市場は、関税を巡る不確実性および主力大型ハイテク株や半導体関連株の下落を背景に、4/15終値の昨年末からの騰落率でS&P500指数が▲8.2%、ナスダック100が▲10.4%となった。

そのような中で、S&P500およびナスダック100構成銘柄のうち4/15終値における昨年末からの騰落率上位50銘柄の業種を見ると、ヘルスケアサプライチェーン、管理医療、ヘルスケアREIT、バイオテクノロジーなどの「ヘルスケア関連」、送電・配電、産業廃棄物、水道、総合電力などの「公益事業」、保険ブローカー、損害保険などの「保険」、各種REIT、ビル管理サービスなどの「不動産」が強さを示している。関税に影響されにくいことや景気動向や値上げに左右されにくい需要の存在が株価下支え要因となっていると考えられる。

主要銘柄の騰落率上位の傾向〜関税の影響小さい内需・ディフェンシブ

2025年の米国株は2008年と類似

2024年と2007年は、米FRB(連邦準備制度理事会)が政策金利を1年以上の据え置きから9/18に0.5ポイント利下げに転換し、その後も年末まで2回連続で利下げを行うなど、景気サイクルの類似性が際立った。2025年の米国株の推移も2008年と類似する可能性がある中、実際に、S&P500株価指数において前年末を基準(=100)とする相対指数は、2008年と2025年の4月中旬に同水準となった。

2008年はサブプライム・ローンの不良債権問題を背景に、FRBが利下げに積極的だった点で、2025年は事情が異なる。2008年は消費者物価指数(CPI)が春から夏にかけて上昇が加速し、夏以降の景気悪化に繋がった。それを織り込んで株価が5月中旬以降から下落トレンド転換。CPIの動向と景気への影響は重要だろう。

2025年の米国株は2008年と類似〜CPI上昇と景気悪化の有無が焦点か

ダウ平均株価の目標下値の見方

米トランプ大統領が現地4/2の米国市場取引時間終了後、一律10%関税と国・地域ごとの相互関税を発表。既に発表済みの関税と合わせ、1945年のブレトンウッズ体制に始まった戦後の自由貿易システムがリセットされた。関税に関する一連の政策は、大統領選挙時の公約に忠実に従っているように見受けられる。各国が報復関税などの強い措置をとるのか、関税および非関税障壁の撤廃に向けて動くのかが今後の焦点だろう。

ダウ工業株30種平均株価の過去12年間の推移を見ると、2020年3月や2022年9月のように、ピークアウト後、上昇相場起点までのピーク近辺へ下落する傾向が見られる。終値で昨年12/4に最高値を付けたダウ平均の調整局面も、4/7安値3万6611ドルは2022年1月高値近辺だ。

ダウ平均株価の目標下値の見方〜1つ前の上昇相場ピーク近辺が目安

スムート・ホーリー関税法の悪夢

1929年、「暗黒の木曜日」と呼ばれた10/24のニューヨーク証券取引所における株価大暴落に端を発する世界恐慌が発生し経済が低迷。失業者が増加する中、米政府は国内産業保護のため、フーバー大統領の下で1930年、農産物や工業製品の関税を大幅に引き上げる「スムート・ホーリー関税法」を成立させた。

各国が報復として米国製品の輸入に対して関税を引き上げ、貿易量が激減したことから国際貿易が縮小し、世界恐慌が深刻化。1930年代の米国は高関税政策の失敗を受け、自由貿易に回帰。フランクリン・ルーズベルト大統領の下で1934年に成立した「互恵通商協定法」により、大統領に他国と関税を相互に引き下げる交渉権を与え、二国間貿易協定を増やし関税を段階的に引き下げた。

スムート・ホーリー関税法の悪夢〜政策転換必至も、遅きに失するリスク

銅先物価格と25%追加関税見通し

米国政府は3/12から米国が輸入する鉄鋼・アルミ製品に25%の追加関税を課した。2/25には銅への追加関税を検討する大統領令に署名し、実態調査を商務省に指示している。そのような中、同じ銅の国際価格でも、関税リスクを織り込んで米国市場(CMX)での先物価格が英ロンドン市場(LME)に対してプレミアム(割増金)が付くようになった。鉄鋼・アルミ製品と同様に25%だとすれば、3/24終値で16%台に達したプレミアム分の乖離率がさらに拡大する可能性もあると考えられるが、その翌日から4/25までの間、乖離率は16%未満にとどまる。関税を見据えて米国に銅現物が集まる中、米プレミアム上昇に引っ張られて中国でも輸入銅のプレミアムが拡大傾向だ。当面はLME銅先物価格が上昇しやすいだろう。

銅先物価格と25%追加関税〜LMEとCMXの価格乖離率と25%の関係

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