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“静かなる年末ラリーの牽引役、生成AIの真打ち候補”
“静かなる年末ラリーの牽引役、生成AIの真打ち候補”
2023/12/12
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘
“静かなる年末ラリーの牽引役、生成AIの真打ち候補”
主要株価指数は静かに年末ラリーを迎えている。年初来パフォーマンスが相対的に好調だった超大型ハイテク・半導体銘柄が12月月初から利益確定売りに押されやすい地合いのなか、8日終値でダウ平均が2022年1月以来、S&P500が22年3月以来、ナスダック総合指数が22年4月以来の高値を付けた。それぞれ、過去最高値更新まで僅かを残すのみだ。
- 10月の求人件数や11月のADP全米雇用報告は軟調だった。2024年の早期利下げへの舵取りが容易になったとポジティブにみられた一方、景気減速のネガティブな面も見え隠れした。そのような中で8日発表の11月の雇用統計で非農業雇用者数、失業率、平均時給ともに市場予想を上回る数字が出たことでネガティブ面が相殺された。更に、ミシガン大学発表の11月の1年先消費者インフレ期待が大幅低下したことで、インフレ改善と堅調な雇用の両立という「ゴルディロックス(適温)相場」への見方が強化されたと言えそうだ。
- 13日発表のFOMC(連邦公開市場委員会)およびパウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長会見で利下げ期待に釘をさす可能性が高そうだ。それでも、12日発表の11月の米消費者物価指数をはじめとする経済指標が主要3指数の年内過去最高値更新を後押しする可能性は高いように思われる。
- ここからの株価上昇を牽引するのは、主力の大型ハイテク・半導体株よりも、21〜22年に過大な期待から急上昇したグロース銘柄で金利上昇局面で大幅に下落していたなかで利益率とキャッシュフローの改善を進めてきた銘柄だろう。それらが長期金利ピークアウトを背景として出遅れ割安銘柄として再び脚光を浴びる展開が想定される。
- 米Google持株会社のアルファベット(GOOGL)が6日、人工知能(AI)基盤技術で高性能の「Gemini」投入を発表。文章だけでなく動画や音声、文章などを学習し、複雑な処理をこなすことが可能になるとのことであり、ChatGPTで先行するOpenAIとその出資先であるマイクロソフト(MSFT)の陣営を追撃する構えだ。アルファベットは、囲碁や将棋の世界チャンピオンを寄せ付けなかった「アルファGO」や、難問とされた「タンパク質折り畳み問題」を解決した「アルファFOLD」を擁する子会社ディープマインドを今年4月に統合。早速その成果が出た形だ。生成AIの「真打ち」登場なのかもしれない。
- 生成AIが高性能かつ多様化すればするほど学習すべきパラメーターの数が増え、広帯域メモリー(HBM)およびその検査装置の需要が増えるほか大規模言語技術(LLM)に学習させる業務の多様化・高度化も求められよう。恩恵を受ける銘柄はしっかりとチェックしておくべきだろう。(笹木)
- 12/12号では、セメックス(CX)、イノデータ(INOD)、パラマウント・グローバル(PARA)、ピンタレスト(PINS) 、ロケット・カンパニーズ(RKT)、ウーバー・テクノロジーズ(UBER)を取り上げた。
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(12/8現在)
12月12日(火) | ジョンソンコントロールズインターナショナル |
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12月13日(水) | ノードソン、アドビ |
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12月14日(木) | コストコホールセール、レナー |
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12月15日(金) | ダーデン・レストランツ |
12月12日(火) | - 米FOMC(13日まで)、米30年債入札、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)(UAE)最終日
- 米CPI(11月)、米財政収支(11月)
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12月13日(水) | - FOMC最終日・パウエル議長記者会見・声明と経済予測発表
- 米PPI(11月)
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12月14日(木) | - ECB政策金利発表・総裁記者会見、ロシア大統領が大規模記者会見開催
- 米小売売上高(11月)、米新規失業保険申請件数 (12月9日終了週)、米輸入物価指数(11月)、米企業在庫(10月)
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12月15日(金) | - 対米証券投資(10月)、米NY連銀製造業景況指数(12月)、米鉱工業生産(11月)、S&Pグローバル製造業・サービス業・総合PMI(12月)
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12月18日(月) | - ニューヨーク連銀サービス活動(12月)、NAHB住宅市場指数(12月)
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セメックス(CX)市場:NYSE・・・2024/2/13に2023/12期4Q(10-12月)の決算発表を予定
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- 1906年設立のメキシコの建設資材製造販売会社。建設業向けに世界最大手のセメントを中心にコンクリート、骨材、関連資材を扱う。メキシコの他米国、中南米、欧米等50カ国以上で事業展開。
- 10/26発表の2023/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比9%増の45.71億USD、営業EBITDAが同12.5%減の0.42USD。販売量はセメントが同4%減、コンクリートが同4%減、骨材が同横ばいも販売価格引上げおよび買収効果で増収。粗利益率が同3.7ポイント上昇、フリーキャッシュフローが同4.6倍。
- 通期会社計画を上方修正。営業利益ベースEBITDAを前期比23.1%増の33億USD以上(従来計画32.5億USD)とした。セメント生産トン当たりエネルギー費用は同10%増で据え置き。米連邦政府のつなぎ予算期限が来年1-2月となるなか、バイデン政権は予算成立に向けて共和党との交渉材料としてメキシコと接するテキサス州南部国境で不法移民流入阻止のための壁建設を打ち出している。
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イノデータ(INOD)市場:NASDAQ・・・2024/2/23に2023/12期4Q(10-12月)の決算発表を予定
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- 1988年設立のデータエンジニアリング企業。ローコードのAIデータ取扱いに係る様々なサービスのデジタルデータソリューション事業、医療記録デジタルデータ変換のシノデックス事業などを営む。
- 11/2発表の2023/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比20.2%増の22.1百万USD、非GAAPの調整後EBITDAが前年同期の▲1.2百万USDから3.1百万USDへ黒字転換。1-9月営業キャッシュフローも黒字転換。今夏以降、生成AI(人工知能)開発プログラムを開始。複数大型ハイテク企業と契約締結。
- 2023/12期4Q(10-12期)会社計画は、売上高が前年同期比26%増の24.5百万USD以上。生成AIの大規模言語モデル(LLM)のトレーニングほか開発に関して「ビッグ・テック」と呼ばれるGAFAM5社とマスターアグリーメント契約を契約済みであり、その中の複数の企業から4Q以降に追加的な収益計上の見通し。ビッグ・テック各社が生成AIへ投資拡大すればするほど同社が恩恵を受けよう。
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- 2022年2月にバイアコムCBSから社名変更のメディア・エンターテイメント複合企業。ニュース・スポーツ等を幅広く配信するCBSテレビネットワーク、動画サービス運営、および映画製作・配給を行う。
- 11/2発表の2023/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比3.1%増の71.33億USD、非GAAPの調整後OIBDA(償却前営業利益)が同8.9%減の7.16億USD。注目の動画配信事業は、契約者増と価格引上げで同38%増収、調整後OIBDAが前年同期▲3.43億USDから▲2.38億USDへ赤字幅縮小。
- 同社とアップル(AAPL)は、それぞれの動画ストリーミングサービス「アップルTV+」と「パラマウント+」を1つのパッケージにまとめ、個々に契約するより割安な料金で提供する方向で協議していると12月初に報じられた。値上げ戦略に限界がある中で1つのパッケージで複数のサービスを提供すると解約の確率が下がると期待される。同社株はバフェット氏のバークシャー・ハサウェイも投資。
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- 2008年設立のSNS企業。ユーザーが興味のあるテーマや趣味の写真共有のほか、趣味のビデオによるハウツー動画も投稿できるプラットフォームを運営。商品購入Eコマースサービスも提供する。
- 10/30発表の2023/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比11.5%増の7.63億USD、非GAAPの調整後EPSが同2.5倍の0.28USD。月間稼働ユーザー数が同8%増(4.82億人)、1ユーザー当たり平均収入が同3%増と堅調。調整後総費用の売上高比率は同13.2ポイント低下の76.2%へ大幅改善。
- 2023/12期4Q(10-12月)会社計画は、売上高が前年同期比11-13%増、調整後営業費用が同9-13%減。売上高と利益の両面で改善見通しながら、8日終値は21年2月高値から61%下落水準。世界最大の「物言う株主」エリオット・インベストメント・マネジメントと長期協力契約を締結し、利益率の面でも継続的改善が期待される。デジタル広告の伸び回復のなか長期金利上昇一服が株価を後押ししよう。
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- 1985年設立。ネット経由で「ロケット・モーゲージ」ブランドの住宅ローンを提供。アプリから申請書を提出することで融資の申請が可能。不動産や個人向け融資、自動車販売など補完事業も営む。
- 11/2発表の2023/12期3Q(7-9月)は、会計基準変更後の非GAAPの調整後売上高が前年同期比12.8%増の10.02億USD、調整後EPSが前年同期の▲0.08USDからゼロへ赤字解消。金利上昇の逆風でローン組成完了額が同13%減もコスト削減で利益率改善。調整後EPSは前四半期比も改善。
- 2023/12期4Q(10-12月)会社計画は、調整後売上高が6.50-8.00億USD(前年同期6.83億USD)と前四半期比で減収。米モーゲージ30年金利は12/6に7.17%と高水準ながら10/25の7.96%のピークからは低下。データ活用エコシステムおよびローン申請手続きにおけるAI活用で既存銀行からシェアを奪う傾向は継続中であり米長期金利低下基調となれば業績ターンアラウンドが期待されよう。
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。
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- 2009年設立。運転手とユーザーの相乗り需要に係るライドシェア、ユーザーがスマホで注文後に食事を配達するウーバー・イーツ、運送会社と運送貨物をマッチングするウーバーフレイトを展開。
- 11/7発表の2023/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比25%増の17.14億USD、非GAAPの調整後EBITDAが同2.1倍の10.92億USD。販管費削減が進み売上高総費用率が95.8%と10.2ポイント改善。セグメント別の調整後EBITDAではモビリティ事業が同43%増、デリバリー事業が同2.3倍と成長。
- 2023/12期4Q(10-12月)会社計画は、総予約高が前年同期比19-22%増の365-375億USD(3Q実績353億USD)、調整後EBITDAが同77-86%増の11.8-12.4億USD。物流部門(ウーバーフレイト)はIPOまたは売却・分社化で検討と事業選択集中の観点から注目される。日本のようにライドシェア解禁の動きなど海外市場拡大の兆し。また、S&P500指数構成銘柄となったことで投資需要拡大も見込まれる。
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- (※)決算発表の予定は12/8現在であり、変更される可能性があります。
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