23年3月「銘柄ピックアップ」を振り返る
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今年3月分の米国ウィークリー「銘柄ピックアップ」について掲載直前週末終値から6/23終値までの騰落率上位6銘柄を確認した。経営破綻した地銀を買収したファーストシチズンズ・バンク・シェアーズ(FCNCA)とニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)、および信用格付けのS&Pグローバル(SPGI)といった金融関連の高パフォーマンスが目立つほか、AI(人工知能)ソフトウェアのC3.ai(AI)や半導体製造装置のアプライド・マテリアル(AMAT)など生成AI関連も堅調だ。また、2型糖尿病治療薬を減量目的に展開する動きを受けてイーライリリー(LLY)は息の長い相場を続けている。
23年3月「銘柄ピックアップ」を振り返る〜破綻銀を買収した銀行が堅調
米短期国債大量発行と米国株
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米政府の債務上限停止でデフォルトが回避されたことで米財務省は年内に1兆ドル規模の短期国債発行を見込んでいる。財務省の指針によれば現金残高を6月末までに4250億ドル、9月末までに6000億ドルまで戻すとされる。MMF(マネー・マーケット・ファンド)などの買い手が想定されるものの、保険で守られない25万ドル超の大口の銀行預金から大型ハイテク株に逃避していたとみられる資金が政府に吸い上げられる懸念も出てくる。
ナスダック総合指数と政府現金残高との相関関係を見ると、過去3年間では昨年の5-12月を除くと逆相関の関係がみられる。現在の財務省現金残高は21年12月近辺と同水準だ。米短期国債大量発行による政府現金残高の増加は大型ハイテク株売りに繋がる可能性があろう。
米短期国債大量発行と米国株〜米財務省現金残とナスダックの逆相関
金融政策で好ポジションの新興国
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14日の米FOMC(連邦公開市場委員会)で金利が据え置かれた一方、15日開催の欧州中央銀行(ECB)の政策理事会では0.25%ポイントの利上げが決定された。FOMCでも年内2回の追加利上げが示唆されるなど欧米では金融引締めの余地が残されており、株式市場への重荷となり得る状況だ。これに対し、新興国ではインドネシアが5/25に4会合連続で、インドが8日に2会合連続で、ブラジルが21日に7会合連続で従来の政策金利を据え置いた。ブラジルは8月にも金融緩和開始の可能性という見方も台頭している。
米国株市場にも、ブラジル、インドネシア、インドなどの主要企業がADR(米国預託証券)も含めて上場している。米国株投資においても新興国の主要企業への投資 が有効となる場合が考えられよう。
金融政策で好ポジションの新興国〜インフレ率減速で株式へ追い風期待
ITバブルの1998/1999年の相場
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生成AI(人工知能)ブームを追い風にエヌビディア(NVDA)株が賑わっていた。背景として25万ドル以上の預金が保護されないと見た富裕層が主要ハイテク株を集中的に買っているとの見方もある。
1998年も前年からのアジア危機、ロシア危機、ヘッジファンドLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)破綻に伴う金融危機への対応で米FRB(連邦準備制度理事会)が3度の利下げを実施。この金融緩和によって溢れたマネーは当時急速に普及しつつあったインターネット関連企業株に流れ込み「ドットコムバブル」を生んだ。6月13-14日のFOMC(連邦公開市場委員会)で市場予想通り利上げは見送られたが、パウエルFRB議長は年内2回迄の追加利上げを示唆。「生成AIバブル」シナリオは時期尚早の面もありそうだ。
ITバブルの1998/1999年の相場〜金融不安の後にドル高・金利上昇を伴う
グロースからバリューへシフトも
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米国株は昨年11月末に生成AI(人工知能)のChatGPTが公開された頃からグロース銘柄がバリュー銘柄を、およびナスダックがNYダウ平均株価をアウトパフォームし始めた。S&P500上でのグロース指数対バリュー指数倍率も直近まで上昇基調を辿っていたなか、半導体関連を中心に短期的な買われ過ぎに加えて5月雇用統計発表以降、7月以降の金融引締め観測台頭もあり、キャタピラー(CAT)のような景気敏感株や水素製造で世界首位のエアプロダクツ・アンド・ケミカルズ(APD)のような再生可能エネルギー関連を中心にバリュー銘柄にシフトする動きが出始めた。グロース銘柄の中でも電気自動車(EV)のテスラ(TSLA)のように脱炭素社会への貢献が期待される銘柄は生成AI銘柄からの資金シフトも期待されよう。
グロースからバリューへシフトも〜資源関連とエネルギー関連グロースも
ドル円相場と円売りポジション
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ドル円相場は、米国14日のFOMC(公開市場委員会)で利上げ見送りも年内2回分の利上げ見通しが示されたことを受けて15日に1ドル141円台へ、16日に日銀金融政策決定会合の発表を受けて同142円台へと円安が進行した。6/20時点でのIMM(シカゴ通貨先物市場)の投機筋(非商業)ポジションの売り越し枚数は前週比3680枚の増加で10万7656枚と、1昨年5月以来の高水準となった。
現在の円売りポジションは一時1ドル150円を超える円安ドル高となった10/21を含む週を超える円売りポジションが膨らんでいることを意味する。過去10年間の円売りポジションの最大枚数は2013年12月最終週の14万3822枚であり、ポジションの観点からは現在以上に円売りを増やす余地が限られる面もあろう。