“米国株相場は「強気相場」入りか?〜検討すべき点”
- 8日の米国株相場でS&P500株価指数が昨年10/12に付けた昨年来安値からの上昇率が20%に達して「強気相場」入りしたとされる。生成AI(人工知能)ブームを受けた大型ハイテク株の堅調な動きにそのまま乗ってよいのか迷う向きも多いかもしれない。検討すべき事項を3点挙げたい。
- 第1に、米政府の債務上限停止でデフォルトが回避されたことで米財務省が年内に1兆ドル規模の短期国債発行が見込まれている点だ。財務省の指針によれば現金残高を6月末までに4250億ドル、9月末に6000億ドルまで戻すとされる。MMF(マネー・マーケット・ファンド)などの買い手が想定されるものの、保険で守られない25万ドル超の大口の銀行預金から大型ハイテク株に逃避していたとみられる資金の流れが変わる可能性がある。ナスダック総合指数と政府現金残高との間には逆相関の関係があり、米短期国債大量発行による政府現金残高の増加は大型ハイテク株の売り要因と見なされよう。
- 第2に、異常気象によるインフレ圧力の再燃リスクだ。米海洋大気局(NOAA)は気温の上昇をもたらす「エルニーニョ現象」が戻ってきたとの見解を示した。これは南米沖太平洋の海面水温が高くなる一方で、インドネシア近海など西部で低めになる現象だ。これから7月にかけて徐々に鮮明となり、11月〜24年1月に強いエルニーニョに発達する可能性が出てきている。特に欧州では夏場の熱波、冬場の寒冷化に繋がりやすいとされる。米国債発行増加が金利上昇要因となりやすい中で、異常気象に伴ってエネルギー価格や食糧価格が再び上昇するようなことになれば、インフレ再加速による中央銀行の金融引締め環境が継続することに繋がるだろう。
- 第3に、市場心理を表す「恐怖指数」のVIX指数が9日終値で13.85ポイントまで低下と、コロナ禍前の2020年2月上旬以来の低水準となった点である。VIXを算出するシカゴの取引所(CBOEグローバル・マーケッツ)はVIXの期間1日バージョンを4/24に導入。これが期間24時間未満の超短期の株式オプション取引(ゼロDTE)の積み上がりに対するヘッジ需要に対応しており、期間23-37日のデリバティブ取引を用いて計算される通常のVIX指数の役割が低下しているのではないかとの見方が台頭している。その分、従来のVIX指数が上昇する際に急激な値動きとなるリスクに要注意だろう。
- 14日の米FOMC(連邦公開市場委員会)声明発表・パウエルFRB議長記者会見では、7月以降の利上げの可能性とともにFRBのバランスシート縮小(量的縮小)への言及が注目される。量的縮小が強調されれば、大型ハイテク株などグロース投資よりもバリュー投資が優位となりやすいだろう。(笹木)
- 6/13号では、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)、ウォルト・ディズニー・カンパニー(DIS)、ハネウェルインターナショナル(HON)、ジョンソンコントロールズインターナショナル(JCI)、トップゴルフ・キャロウェイ・ブランズ(MODG)、ユニティ・ソフトウェア(U)を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(6/9現在)
主要企業の決算発表予定
6月14日(水) | レナー |
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6月15日(木) | アドビ、クローガー |
6月16日(金) | キャタレント |
主要イベントの予定
6月13日(火) |
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6月14日(水) |
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6月15日(木) |
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6月16日(金) |
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6月19日(月) |
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- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM) 市場:NYSE・・・2023/7/26に2023/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定
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ウォルト・ディズニー・カンパニー(DIS) 市場:NYSE・・・2023/8/10に2023/9期3Q(4-6月)の決算発表を予定
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ハネウェルインターナショナル(HON) 市場:NASDAQ・・・2023/7/28に2023/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定
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ジョンソンコントロールズインターナショナル(JCI) 市場:NYSE・・・2023/8/4に2023/9期3Q(4-6月)の決算発表を予定
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トップゴルフ・キャロウェイ・ブランズ(MODG) 市場:NYSE・・・2023/8/4に2023/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定
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ユニティ・ソフトウェア(U) 市場:NYSE・・・2023/8/9に2023/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定
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- (※)決算発表の予定は6/9現在であり、変更される可能性があります。