23年2月「銘柄ピックアップ」を振り返る
今年2月分の米国ウィークリー「銘柄ピックアップ」について掲載直前週末終値から5/26終値までの騰落率上位6銘柄を見ると、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、メタ・プラットフォームズ(META)の上昇率上位2社は生成AI(人工知能)の普及を追い風にできるハイテク企業と位置付けられよう。ヌー・ホールディングス(NU)やICICI銀行(IBN)はドル高一服による新興国市場への資金流入の恩恵もありそうだ。金融システム不安による信用格付けニーズの高まりはムーディーズ(MCO)へ、アフター・コロナのアウトドア需要の高まりはガーミン(GRMN)への追い風となろう。
23年2月「銘柄ピックアップ」を振り返る〜生成AI関連中心にグロース優位
アップルの地域別売上構成に変化
米アップル(AAPL)が4日に2023年1-3月期決算を発表。売上高は前年同期比3%減も、主力のiPhoneは世界のスマホ需要が低迷する中でも同2%増収と健闘。ティム・クックCEOは、メキシコやインドネシアなどで過去最高を記録するなど新興国市場の業績に満足しているとした。
1-3月期の地域別売上高では、米州が同8%減、日本が同7%減、大中華圏が同3%減に対し、アジア太平洋(除く日本・大中華圏)が同15%増と伸長。4月に直営店「アップルストア」を初めてオープンしたインドもその中に含まれ、2桁成長で全体の増収に貢献。新興国市場では経済成長とともに中間層が育ってきている。それに伴ってiPhoneのようなブランド力の高いスマホへの需要増が加速すると見込まれよう。
アップルの地域別売上構成に変化〜成長原動力が新興国市場にシフト
バークシャー・ハサウェイ増減株
投資家ウォーレン・バフェット率いる投資会社バークシャー・ハサウェイ(BRK/B)が米証券取引委員会(SEC)に届け出た3月末時点の保有株リストでは、3ヵ月前に保有株を減らしていた台湾積体電路製造[TSMC](TSM)、USバンコープ(USB)、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BK)などを全て売却。TSMCについては台湾の地政学リスクを意識しているとされる。
特に注目されるのは、金融関連を売却して消費者金融のキャピタルワン・フィナンシャル(COF)に新規投資している点だ。バークシャーのマンガー副会長は4/30、銀行が不良債権を抱え込み、米商業用不動産市場でこの先困難が待ち受けていると述べた。銀行の融資条件が厳しくなる間隙を縫ってノンバンクによるクレジットカード事業などが伸びる見通しと推察される。
バークシャー・ハサウェイ増減株〜銀行不良債権増でノンバンク伸長か
- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
2011年米国債格下げ時との比較
大手格付け会社フィッチが5/24、米国債見通しをこれまでの「安定的」から「ネガティブ」へ引き下げたと発表したなか、米国債務上限問題を巡るバイデン大統領と野党共和党との協議は5/27に合意に達し、舞台を議会に移した。
2011年も債務上限引上げを巡り与野党が激しく対立し米格付け会社S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)が4/18に米国債長期格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」へ引き下げた。8/2に債務上限引上げ法が成立も、S&Pは財政健全化が不十分として格下げを実施。格下げ後には緊縮財政による景気悪化懸念から米国債利回りが低下し、ドル指数は反発。足元では米国株は当時と同様の推移の一方、ドル指数と米国債利回りは当時を上回る。米国株の6月以降が注目される。
2011年米国債格下げ時との比較〜4/18見通し変更、8/5に1段階引下げ
米インフレ率と賃金上昇率
米労働省が5/10、4月の消費者物価指数(CPI)を発表。エネルギーと食品を除くコア指数の前年同月比は5.5%上昇と市場予想と同水準だった。輸送運賃や主要国製造業の受注残・在庫といった調査項目をもとにニューヨーク連銀が算出する「グローバル・サプライチェーン圧力指数」は4月時点で約14年半ぶりの低水準となるなど、物価高の一因だった供給制約問題は解消しているとみられる。 他方、アトランタ連銀算出で、個人の賃金を追跡調査することで業種や職種構成変化の影響を受け難いとされる「賃金上昇率トラッカー」(3ヵ月移動平均)は今年3月にかけて6%台半ばに再加速。5日発表の4月の雇用統計で発表された平均時給の前年同月比伸び率が引き続き減速しているのとは対照的だ。
米インフレ率と賃金上昇率〜供給制約緩和も雇用の強さがCPI伸び後押し
アセアン主要4ヵ国の株価指数
アセアン主要4ヵ国(シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア)の2020年末以降の株価指数推移(円建て)は、マレーシアを除き日経平均の上昇率を上回る。シンガポールとインドネシアは大型ハイテク株の恩恵を受けやすい米S&P500に匹敵し、独DAX指数も上回る。
世界経済分断リスクが高まる中でアセアンはG7やロシア、中国とも等距離の外交方針を貫き、TPPやRCEP、IPEFといった経済連携協定への加盟に積極的なため貿易拡大の恩恵を受けやすい面が見直されている。シンガポールは銀行が相対的に強いほか自国通貨購買力と労働者貯蓄価値維持の金融政策から通貨高となりやすい。インドネシアは世界4位の人口を背景とした内需に加え、ニッケルなど重要資源で自国の立場を強めている。