“濃い霧の向こうにチャンス〜新時代は始まったばかり”
- 足元の米国株市場を取り巻く環境は、以下のように捉えられそうだ。第1に、昨年11月に公開されてから急速に普及している「ChatGPT」のような生成AI(人工知能)ツールと関連する事業機会が今後どこまで株式市場を席巻するのかという楽観的期待の高まり。第2に、ニューヨーク連銀が算出する「グローバル・サプライチェーン指数」の4月が約14年ぶり低水準となったことが示すように、半導体供給不足といったサプライチェーン問題がほぼ解消したことから、自動車や産業機械など製造業は粗利益率の悪化に歯止めが掛かりつつ生産回復による売上増加が見られ始めた。それによって製造業の企業業績が増収増益になりやすくなった面がある。その一方、株価への影響ではマクロ経済環境悪化の中で受注の伸びがポイントになりそうである。
- このような投資の「好機(お宝)」が徐々に姿を現し始めているなかで、あたかも手を出すことを妨げる3つの不安要因が米国株市場に立ちはだかっている。第1に、米国政府の債務上限問題に伴う米国債デフォルト不安である。19日には米政府と野党・共和党の交渉が一時中断した。第2に、イエレン財務長官が18日、銀行トップとの会合で一連の銀行破綻を受けて一段の銀行合併が必要になる可能性があると述べたことが報道され、地銀の経営不安が意識された。第3に、米FRB(連邦準備制度理事会)関係者の多くが金融引締め継続のタカ派スタンスを強調する中でパウエルFRB議長が18日、「政策金利をそれほど引き上げる必要がないかもしれない」と緩やかなハト派姿勢を示した。これはFRBの金融政策の不確実性を高めて投資の見通しを不透明にしそうだ。これらが「お宝」を覆う霧となって見通しを悪くし、手を伸ばそうにもなかなか良いタイミングで掴みにくいという面があるかもしれない。
- 過去を振り返れば、マイクロソフト(MSFT)のWindow95が発売された1995年を起点として2000年3月までのIT(ドットコム)バブルへと繋がる「インターネット革命」が勃興。ITバブル崩壊から国際金融危機(リーマンショック)を経て主要米株価指数は2009年3月に底を打って反転。その前の2004年2月に旧フェイスブックのSNS「Facebook」がサービスを開始し、2007年6月にアップル(AAPL)のスマホ「iPhone」が発売された。それらはやがてGoogle検索、EコマースのAmazon.comとともに「GAFA」と呼ばれ、ユーザーデータを取得して分析し新たな付加価値を生み出す「データ経済」の覇者として最近まで株式市場を牽引した。簡単な質問に対してリアルタイムで自然な会話でデータ生成するAIの普及は、インターネット革命、データ経済に匹敵する新たなテクノロジー時代の幕分けと見るべきであり、見過ごせないものだろう。(笹木)
- 5/23号では、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、キャピタル・ワン・ファイナンシャル(COF)、シスコシステムズ(CSCO)、イートン(ETN)、キーサイト・テクノロジーズ(KEYS)、マイクロン・テクノロジー(MU)を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
主要企業の決算発表予定
5月23日(火) | パロアルト・ネットワークス、アジレント・テクノロジー、インテュイット、VF、ロウズ、オートゾーン |
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5月24日(水) | エヌビディア、アナログ・デバイセズ |
5月25日(木) | ワークデイ、オートデスク、マーベル・テクノロジー、アルタ・ビューティ、コストコホールセール、ラルフローレン、メドトロニック、ダラー・ツリー、ベスト・バイ |
主要イベントの予定
5月23日(火) |
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5月24日(水) |
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5月25日(木) |
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5月26日(金) |
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5月28日(日) |
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5月29日(月) |
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- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
アマゾン・ドット・コム(AMZN) 市場:NASDAQ・・・2023/7/28に2023/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定
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キャピタル・ワン・ファイナンシャル(COF) 市場:NYSE・・・2023/7/21に2023/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定
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シスコシステムズ(CSCO) 市場:NASDAQ・・・2023/8/17に2023/7期4Q(5-7月)の決算発表を予定
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イートン(ETN) 市場:NYSE・・・2023/8/2に2023/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定
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キーサイト・テクノロジーズ(KEYS) 市場:NYSE・・・2023/8/17に2023/10期3Q(5-7月)の決算発表を予定
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マイクロン・テクノロジー(MU) 市場:NASDAQ・・・2023/6/30に2023/8期3Q(3-5月)の決算発表を予定
(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
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- (※)決算発表の予定は5/19現在であり、変更される可能性があります。
過去の「銘柄ピックアップ」パフォーマンス検証
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。