“銀行破綻連鎖の突風~ここからの投資のポイント”
- 米銀持ち株会社シルバーゲート・キャピタルが8日、暗号資産関連企業との取引が多い傘下銀行の事業を自主的に清算する方針を発表。テック関連スタートアップへの融資で知られるシリコンバレー銀行は同8日、含み損を抱えた保有債券の売却や資本増強策を発表。信用不安を招いて株価が急落し、10日に事業停止に追いこまれた。同銀行の総資産は22年末で約28兆円相当と日本の地銀首位に匹敵する規模だ。更に12日、NY州で暗号資産関連企業との取引で知られるシグネチャー・バンクが事業停止となった。
- これら信用不安による金融機関破綻連鎖に対し、米財務省、FRB、FDIC(連邦預金保険公社)は預金保険の対象外の預金についても全額を保護する例外措置をとると発表。週明けマーケットの落ち着きが期待される。
- 17日には主要株価指数の先物・オプションおよび個別株の先物・オプションの最終決済に係る特別清算値(SQ値)算出の「米国版メジャーSQ」の「クアドラプル・ウィンチング」を控えており、米国株相場はポジションの期先物へのロールオーバーを巡って変動性が高まりやすいとみられる。そのようななか、投資家の心理状態を表す恐怖指数と言われる「VIX指数」は10日終値が24.80にとどまる。VIX指数は2022年を通して概ね20割れ〜30台半ばのレンジで推移していた。その意味では、今回のイベントのインパクトと比べて市場心理はやや楽観的に過ぎ、30台乗せは予め想定しておくべきだろう。
- 16日に欧州中央銀行(ECB)理事会、および23日に米FOMC(連邦公開市場委員会)の政策金利発表が予定されている。今回の一連の連鎖破綻を通じてインフレ抑制を優先としたタカ派・引締め強化スタンスの金融政策にブレーキが掛かる可能性が高まりそうだ。その場合、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は低下し、ドル安および金などの貴金属や資源価格その他コモディティへの資金流入が想定されよう。
- 実質金利低下はグロース銘柄にとって追い風となりやすいものの、金融システム懸念が強まる環境の下では、キャッシュフローや利益率の改善が見込まれる銘柄、またはChatGPTのような人工知能(AI)の新時代を支える技術など強い需要が見込まれる特定分野に物色が集中しやすい面があるだろう。
- 金融システムへの懸念が高まること、預金者が金融機関を選別するだけでなく、金融機関も取引先・融資先の信用リスクに敏感にならざるを得ない。債券発行の信用格付けなどとともに、信用スコアなどの分析データを提供するリサーチ会社・情報ベンダーの価値が高まると期待される。データ提供企業はインフレによる利益率悪化との関係が薄い点もプラス材料だろう。(笹木)
- 3/14号では、ファクトセット・リサーチ・システムズ(FDS)、フェア・アイザック(FICO)、ヴァンエック金鉱株ETF(GDX)、Mobileye Global Inc(MBLY)、ニューモント(NEM)、シノプシス(SNPS)を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(3/10現在)
主要企業の決算発表予定
3月14日(火) | レナー |
---|---|
3月15日(水) | アドビ |
3月16日(木) | フェデックス、ダラー・ゼネラル |
主要イベントの予定
3月14日(火) |
|
---|---|
3月15日(水) |
|
3月16日(木) |
|
3月17日(金) |
|
- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
ファクトセット・リサーチ・システムズ(FDS)市場:NYSE・・・2023/3/23に2023/8期1Q(9-11月)の決算発表を予定
|
フェア・アイザック(FICO)市場:NYSE・・・2023/4/27に2023/9期2Q(1-3月)の決算発表を予定
|
ヴァンエック金鉱株ETF(GDX)市場:NYSEArca・・・分配金:年1回(12月)
|
Mobileye Global Inc(MBLY)市場:NASDAQ・・・2023/5/8に2023/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定
|
ニューモント(NEM)市場:NYSE・・・2023/4/21に2023/12期1Q(1-3月)の決算発表予定
|
シノプシス(SNPS)市場:NASDAQ・・・2023/5/18に2023/12期1Q(1-3月)の決算発表予定
(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
|
- (※)決算発表の予定は3/10現在であり、変更される可能性があります。