“利上げから利下げへの道のり、インフレ共存への道”
- 27日発表の12月の米個人消費支出(PCE)は前月比0.2%減、PCE価格指数は前年同月比5.0%上昇と11月の5.5%から伸びが鈍化した。12日発表の12月の米消費者物価指数(CPI)は同6.5%上昇と11月の7.1%から大幅に減速していた。CPIは基準年の品目ウエイトを用いることから新製品や低価格品への代替消費が反映されない一方、PCEは消費行動の変化を織り込むように調整がされることからPCEのほうがCPIよりも低くなる傾向があり、米FRB(連邦準備制度理事会)もPCEを重視しているとされる。両者ともに伸びの鈍化が示されてていることから、利上げ停止と高い政策金利の維持により過去の利上げの累積効果が景気に与える影響を注視する方針への転換が期待される。
- 2000年代の利上げは速度が急だった。1.00%をスタートとして04年6月から06年6月まで利上げを続けた後に5.25%のピーク金利が続いた。利下げに転じたのは07年9月と、利上げから利下げまで約39ヵ月間を要した。2010年代の利上げは緩やかだった。0.25%を発射台として15年12月から18年12月まで利上げを続けた後に2.50%のピーク金利が続き、19年8月に利下げに転じた。利上げから利下げまで約44ヵ月間を要した。足元の利上げ局面を見ると、0.25%の最低水準から利上げを開始したのが22年3月である。仮に年内12月に利下げするとすれば約21か月という異例の短期間となる。突発的な大混乱が発生すれば別としても、現実的な期待ではないと思われる。
- 現在は、2000年代や2010年代には無かったインフレ長期化をもたらす構造的要因が横たわり、生産制約として重くのしかかろうとしている。主に以下の3点が挙げられる。 ①労働人口の高齢化による労働参加率(生産年齢人口に占める労働人口の割合)の低下により労働需給の逼迫が解消されにくい。 ②ウクライナ情勢に伴う欧米によるロシアへの制裁固定化、米中の冷戦的な競争などを柱としてブロック経済圏が構築され、サプライチェーン再構築および自国での調達比率引き上げのコストが増大している。 ③大規模な気候変動対策により脱炭素社会へ移行するに際し、代替エネルギー供給に向けた投資が不十分なことからエネルギー不足が発生している。
- 足元はFRBが株式市場と景気を犠牲にしてもインフレ退治を優先する方針を採っているように見受けられるが、インフレの構造的要因が理解されるに従い、目標インフレ率までの減速を待たずしてインフレ抑制を緩めるといった「インフレとの共存」が模索されるようになるのではないだろうか。クリーンまたは代替エネルギーのためのインフラ投資をはじめとした重厚長大・バリュー銘柄、あるいは高齢化に伴うヘルスケア銘柄への物色が強まろう。(笹木)
- 1/31号ではアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)、アメリカン・エキスプレス(AXP)、ゼネラル・エレクトリック(GE)、Jacobs Solutions Inc(J)、シェニエール・エナジー(LNG)、バンガード短期インフレ連動債インデックス・ファンド(VTIP)を取上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(1/27現在)
主要企業の決算発表予定
1月31日(火) | ジュニパーネットワークス、アイデックス、チャブ、ウエスタンデジタル、マッチ・グループ、エレクトロニック・アーツ、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、アムジェン、エドワーズライフサイエンス、ストライカー、モンデリーズ・インターナショナル、ドーバー、ゼネラル・モーターズ(GM)、キャタピラー、エクソンモービル、インターナショナル・ペーパー、フィリップス66、マラソン・ペトロリアム、コーニング、パルトグループ、ファイザー、シスコ、A.O.スミス、MSCI、マクドナルド、ペンテア、ムーディーズ、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)、NVR |
---|---|
2月1日(水) | ゙マケッソン、ホロジック、コルテバ、メットライフ、メタ・プラットフォームズ、ミッド・アメリカ・アパートメント・コミュニティーズ、アフラック、CHロビンソン・ワールドワイド、マイクロチップ・テクノロジー、PTC、グローブライフ、オールステート、DXCテクノロジー、アライン・テクノロジー、コルボ、アルトリア・グループ、TモバイルUS、ヒューマナ、ウエイスト・マネジメント、オールド・ドミニオン・フレイト・ライン、サーモフィッシャーサイエンティフィック、アメリソースバーゲン、ボストン・サイエンティフィック、フォーティブ、オーチス・ワールドワイド、ジョンソンコントロールズインターナショナル、ウエストロック、バイオテクネ |
2月2日(木) | カムデン・プロパティー・トラスト、アトラシアン、ハートフォード・ファイナンシャル・サービシズ・グルー、フォード・モーター、アップル、アルファベット、コグニザント・テクノロジー・ソリューションズ、ジェン・デジタル、アマゾン・ドット・コム、ギリアド・サイエンシズ、スターバックス、クアルコム、クロロックス、WWグレンジャー、イリノイ・ツール・ワークス、WECエナジー・グループ、エイブリィ・デニソン、ベクトン・ディッキンソン、エスティローダー、インターコンチネンタル・エクスチェンジ、メルク、スタンレー・ブラック・アンド・デッカー、アプティブ、ボール、シリウスXMHD、コノコフィリップス、カーディナルヘルス、エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ、ハネウェルインターナショナル、ハーシー、JDドットコム、トレイン・テクノロジーズ、アメテック、ブリストル マイヤーズ スクイブ、CMSエナジー、スナップオン、イーライリリー、クエスト・ダイアグノスティクス、パーカー・ハネフィン、ブロードリッジ・ファイナンシャル・ソリューションズ |
2月3日(金) | ジンマー・バイオメット・HD、シグナ、ニューズ・コーポレーション、Cboe・グローバル・マーケッツ、エーオン、リジェネロン・ファーマシューティカルズ、チャーチ・アンド・ドワイト、ライオンデルバセル・インダストリーズ |
2月6日(月) | テイクツー・インタラクティブ・ソフトウエア、シンシナティ・ファイナンシャル、アクティビジョン・ブリザード、UDR、スカイワークス・ソリューションズ、タイソン・フーズ、カミンズ、オン・セミコンダクター、ロウズ、アイデックスラボラトリーズ |
主要イベントの予定
1月31日(火) |
|
---|---|
2月1日(水) |
|
2月2日(木) |
|
2月3日(金) |
|
2月4・5日(土・日) |
|
- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)市場:NYSE・・・2023/4/26に2023/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定
|
アメリカン・エキスプレス(AXP)市場:NYSE・・・2023/4/21に2023/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定
|
ゼネラル・エレクトリック(GE)市場::NYSE・・2023/4/25に2023/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定
|
Jacobs Solutions Inc(J)市場:NYSE・・・2023/2/7に2023/9期1Q(10-12月)の決算発表を予定
|
シェニエール・エナジー(LNG)市場:NYSE・・・2023/2/23に2022/12期4Q(10-12月)の決算発表予定
|
バンガード短期インフレ連動債インデックス・ファンド(VTIP)市場:NASDAQ・・・分配金:年4回
(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
|
- (※)決算発表の予定は1/27現在であり、変更される可能性があります。