ドル指数と米企業海外売上比率
米供給管理協会(ISM)が1日発表の11月の製造業総合指数が49.0と2020年5月以来初めて経済拡大と縮小の分かれ目の50を下回るなか、米国外では行動規制からの経済再開速度がアセアン・日本・中国などで異なり、景気拡大ピークが欧米諸国より遅れると見込まれる。
ダウ工業株30種平均構成銘柄の内、2021年度の海外売上比率50%以上が13銘柄。仮に米国経済が悪化しても多国籍企業の業績の落ち込みは軽微にとどまると期待される。2021年度の海外売上比率上位5銘柄と下位5銘柄の年初来騰落率を見ると、上位5銘柄の中でも騰落率がプラスとマイナスに二極化。仮に米ドル安を想定すると高海外比率の売られ過ぎ銘柄は好機到来の余地があろう。
ドル指数と米企業海外売上比率〜売られ過ぎ多国籍企業の平均回帰も
米国の住宅取得能力指数
米国で11月に住宅ローン金利が7%を超えた。今月16日で6.31%とやや低下も前年同時期比で2倍近くの高水準。S&P500住宅建設株指数は、昨年12月からの下落基調が今年10月に反転上昇し始め、16日に昨年3月水準まで戻した。
全米不動産協会(NAR)が3ヵ月毎に公表の「住宅取得能力指数」(100以上なら住宅取得可能な所得を得ていることを意味する)によれば、初回購入者は既に昨年6月から100を下回り、足元は60台で推移。住宅購入者全体は今年6月以降100を僅かに下回った。これは過去20年間で初めてだ。9日発表の7-9月米家計純資産も前四半期比0.3%減少した。
米国の住宅取得能力指数〜住宅ローン金利高騰で重要節目100割れの危機
AAPLとTSLAの相対力指数(RSI)
よく使われる株価のテクニカル分析で買われ過ぎ・売られ過ぎを判断する指標として「相対力指数(RSI)」がある。RSIは直近一定期間において終値での上昇幅の合計を、その一定期間の上昇幅と下落幅の合計で割った割合。30を下抜けるほど売られ過ぎた後に反発し、30を上抜ける動きとなった場合に買戻しが強まりやすいとされる。反対に上昇基調が続き、RSIが70を上回るほど買われ過ぎた後に70を下抜ける動きとなった場合は、調整売りが強まりやすいとされる。
米国株に関し個人投資家の間で高い人気のアップル(AAPL)とテスラ(TSLA)を比較すると、足元のテスラの株価は下落基調で14日間RSIが30を大きく下回っている。30超え回復時には注目されよう。
AAPLとTSLAの相対力指数(RSI)〜株価下落でRSI30割れから回復待ち
ユーロ高と欧州長期金利上昇
ロシアのウクライナ侵攻を契機とする欧州のエネルギー危機を背景に、ユーロは対米ドルで今年9月下旬まで下落基調を辿っていた。その間、欧州主要国は長期金利も上昇基調で推移しており、景気悪化、通貨安、金利上昇に喘いだ。
10月以降、米国のインフレ伸び率の鈍化観測の台頭に伴う米ドル高騰の一服に伴い、ユーロは対米ドルで反転上昇に転じてきた。米国、欧州ともに長期金利は10月上旬以降の低下傾向から12月上旬に反転上昇の兆しを示しているなか、ドイツやイタリアのほうが米国よりも上昇ペースで上回っている。その主な背景としては、金融引締めスタンスに関してラガルド欧州中央銀行総裁のほうがパウエル米FRB議長よりも「タカ派」の度合いが強かったことが挙げられる。
ユーロ高と欧州長期金利上昇〜欧州金利上昇がユーロ安からユーロ高へ
VIX指数とMOVE指数(2000年代)
VIX指数とは、シカゴ・オプション取引所(CBOE)が米S&P500株価指数を元に算出・発表している株価変動率の数値で「恐怖指数」と呼ばれている。これに対し、米国債版の恐怖指数としてインターコンチネンタル取引所(ICE)が米国債先物の2年・5年・10年・30年物を元に加重して算出・公表する「MOVE指数」がある。
2002年11月からリーマン・ショックを経た10年11月までのVIX指数とMOVE指数のそれぞれの恐怖指数をみると、政策金利(FF金利誘導目標上限)が03年6月に1.0%に引き下げられたのち、04年6月末から06年6月までに17回(合計4.25ポイント)の利上げ局面で、株価のVIX指数、債券のMOVE指数ともに低下していた。債券利回り上昇が景気拡大の表れとして株価に好影響を与えていた面もあろう。
VIX指数とMOVE指数(2000年代)〜2003-2007年までは連動して低下
VIX指数とMOVE指数(直近8年)
新型コロナ感染拡大で「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数、MOVE指数ともに2020年3月に急騰後、それぞれ低下。21年以降、VIX指数は15-35ポイントのレンジの範囲内で推移した一方、MOVE指数は20年9月末の約37ポイントから、米10年国債利回りが4.2%を超えた22年10月下旬に157ポイントと、20年3月の高値水準を超えて一貫して上昇基調を辿った。リーマンショックを含む国際金融システムの危機状況だった08年10月には、MOVE指数が約264ポイントに達していた。
02年11月〜06年11月にかけて見られたように金利上昇が必ずしも債券価格の変動性を高めるものではない。米FRB(連邦準備制度理事会)が利上げを継続するとしても、利上げ幅鈍化に伴いMOVE指数の低下に繋がる余地もあるだろう。