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“主要中国ADR銘柄、マカオカジノ関連、mRNA医薬”
“主要中国ADR銘柄、マカオカジノ関連、mRNA医薬”
2022/12/20
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘
“主要中国ADR銘柄、マカオカジノ関連、mRNA医薬”
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海外売上比率の高い米国多国籍企業は今年、20年ぶりの水準の米ドル高、物流・供給網の混乱に伴う部品不足、中国のゼロコロナ政策に伴う経済の落ち込みといった「三重苦」の逆風に見舞われた。足元では既にこれらの業績下押し要因がそれぞれ改善に向かう兆しもみられている。その中でも、中国の強固な統制を伴うゼロコロナ政策は、若者たちの抗議デモが全国に広がったことを受けてPCR検査場が消え、スマホアプリによる行動規制もなくなるなど一挙に緩和へと舵が切られた。香港では入境者に対する新型コロナ関連規制が14日から緩和され、マカオでも新型コロナ感染者の自宅での自主隔離が14日から認められるようになった。
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香港ハンセン指数またはハンセンテック指数構成銘柄の中でも、2021年末から13日終値までの騰落率上位銘柄を見ると、1位がラスベガス・サンズ(LVS)の子会社であるサンズ・チャイナで46%の上昇、2位が携程旅行網[トリップドットコム・グループ]で39%と、経済再開や人の移動活発化を期待しての上位となった。また、5位がアリババグループ・ホールディング(BABA)の子会社でオンライン薬局・遠隔診療の阿里健康信息技術で33%、6位がJDドットコム(JD)の子会社でオンライン薬局・遠隔診療の京東健康で31%と、ゼロコロナ緩和に伴う新型コロナ感染拡大によって自宅隔離を余儀なくされた人が解熱剤などのネット購入増加が株価を押し上げているとみられる。
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米国市場にADR(米国預託証券)を上場している中国企業については、米上場企業会計監視委員会(PCAOB)が15日、監査状況を確認するため中国本土と香港の会計監査法人を検査できるようになったと発表し、上場廃止リスクが後退している。米中対立激化や中国企業の不正会計問題の摘発を受け、米議会で20年12月に外国企業説明責任法が成立。3年連続でPCAOBの検査を拒んだ場合にその監査法人が担当する企業を米国で上場廃止とすることとしており、同法の下で24年にも多くの中国企業が米国市場から退場させられる懸念が和らいだ。主要中国企業のADRは、売られ過ぎから反発が期待される「リターンリバーサル」の局面に来ている可能性があろう。
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新型コロナワクチン開発企業の株価は特需が一巡して上昇しにくい状況にあるなかで、特にm(メッセンジャー)RNA型については新型コロナ以外の領域への可能性が注目される。モデルナ(MRNA)のバンセルCEOは9月に日本での記者会見で、mRNA医薬を遺伝情報における4種類の塩基に係るデジタルプラットフォームと捉え、がん免疫療法、希少疾患、循環器系疾患、自己免疫疾患の4領域で14の新薬候補を抱えていると述べている。(笹木)
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12/20号では、アリババグループ・ホールディング(BABA)、ブッキング・ホールディングス(BKNG)、iシェアーズ・グローバル資本財ETF(EXI)、ラスベガス・サンズ(LVS)、モデルナ(MRNA)、スノーフレーク(SNOW)を取り上げた。
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(12/16現在)
12月21日(水) | マイクロン・テクノロジー、シンタス、カーニバル |
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12月22日(木) | ペイチェックス、カーマックス |
12月20日(火) | |
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12月21日(水) | - 米下院特別委員会で連邦議会議事堂襲撃事件の最終報告書公表の見込み
- 米経常収支 (3Q)、中古住宅販売件数 (11月)、消費者信頼感指数・カンファレンスボード(12月)
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12月22日(木) | - 米新規失業保険申請件数 (17日終了週)、米GDP (3Q、確定値)、景気先行指標総合指数 (11月)
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12月23日(金) | - 米債券市場短縮取引
- 米個人所得・支出 (11月)、個人消費支出(PCE)価格指数 (11月)、耐久財受注 (11月)、新築住宅販売件数(11月)、ミシガン大学消費者マインド指数・改定値(12月)
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- 1999年設立の中国の電子商取引世界最大手。C2C(顧客間)のECサイト「淘宝」と、B2C(企業対顧客)のECサイト「天猫(Tモール)」を運営。電子決済(支付宝)やクラウド事業なども展開する。
- 11/17発表の2023/3期2Q(7-9月)は、売上高が前年同期比3.2%増の2071億元、Non-GAAPの調整後純利益が同18.6%増の338億元。売上比率65%の中国コマースが同1%減収も海外が同4%増収、国内消費者向けサービスが同21%増収、物流が同36%増収、クラウド事業が同4%増収。
- 2023/3期会社計画は非公表。2Qの調整後純利益増は、業績立直しへ向けて赤字事業の見直しや人員削減など収益重視シフトが奏功。 米上場企業会計監視委員会が15日、米国上場中国企業の監査状況を検査するための全面的アクセスを初めて得たと発表。上場廃止リスクが回避された。また、中国ゼロコロナ政策緩和に伴う感染急拡大により子会社オンライン薬局で解熱剤が売上増。
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- 1998年にpriceline.comとして設立のオンライン旅行サイト運営事業。Booking.com、KAYAK、priceline、agoda.com、Rentalcars.com、OpenTableの6ブランドの下230ヵ国で予約サービスを展開。
- 11/2発表の2022/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比29.4%増の60.52億USD、Non-GAAPの調整後EPSが同40.7%増の53.03USD。米ドル高で増収率が18ポイント押し下げられたが、宿泊済み部屋に日数を乗じた「Room Nights」が同31.5%増、代理販売と直販合計の総予約額が同35.6%増。
- 2022/12期会社計画は非公表。同社CEOによれば、今年10月のRoom Nightsが3Qから上向きに加え、2023年初頭向け予約件数も堅調に推移と世界的な旅行需要回復に手応えを示した。中国本土はゼロコロナ政策緩和後にパンデミック拡大の混乱が見られるものの、日本が10月以降に水際対策規制を撤廃のほか、香港も12月に入境に係る規制撤廃など国際的な旅客需要増加が期待される。
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- 建設・産業資材の生産を行う株式、世界各国の工業セクター株式に的を絞った投資向けに、S&Pグローバル1200資本財セクター指数の価格および利回り実績と同等水準の投資成果を目指す。
- 12/16終値で時価総額が3.2億USD、過去1年間の分配金単価(ネット)合計は1.911485 USD。組み入れ上位時価総額7社はレイセオン・テクノロジーズ(RTX)、ハネウェルインターナショナル(HON)、ユニオン・パシフィック(UNP)、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)、キャタピラー(CAT)、ディア(DE)、ロッキード・マーチン(LMT)である。
- 昨年末終値から12/16終値までの騰落率(インカムゲインを除く)は、同ETFが▲13.7%に対し、ダウ工業株30種平均が▲9.4%、S&P500株価指数が▲19.2%、ナスダック100が▲31.1%。海外売上比率の高い「グローバル景気敏感株」は今年、米ドル高、物流・供給網の混乱、中国のゼロコロナ政策に伴う経済の落ち込みといった「三重苦」に見舞われていたなか、それらの反転が期待されよう。
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- 2004年にネバダ州で設立。統合型リゾート(IR)を米国、アジアで展開する。カジノには、マカオのThe Plaza and Four SeasonsやThe Venetianほか、シンガポールのマリーナベイサンズなどがある。
- 10/19発表の2022/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比17.3%増の10.05億USD、継続企業からのNon-GAAPの調整後EPSが前年同期の▲0.46USDから▲0.29USDへ赤字幅縮小。ローリングチップと呼ばれるVIP向けチップ考慮後の調整後EBITDAは、シンガポールが堅調もマカオが赤字転落。
- 2022/12期会社計画は非公表。シンガポールが好調の一方、マカオはカジノのために訪れる中国本土の観光客に大きく依存しているため本土と同じコロナ対策を講じてきたことから、ゼロコロナ政策によるダメージを受けてきた。マカオも防疫措置緩和が進行中であり、子会社のサンズ・チャイナは業績改善期待から13日終値が香港ハンセン指数構成銘柄の中で年初来騰落率で首位に躍進。
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モデルナ(MRNA)市場:NASDAQ・・・2023/2/24に2022/12期4Q(10-12月)の決算発表予定
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- 2010年設立のバイオテクノロジー企業。感染症、がん免疫、心血管疾患に係るm(メッセンジャー)RNAによる治療薬とワクチンの発見・開発に注力し、臨床試験段階のバイオテクノロジーに関わる。
- 11/3発表の2022/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比32.3%減の33.64億USD、純利益が同68.7%減の10.43億USD。新型コロナワクチン売上げが減少したほか販売コストも上昇。オミクロン派生型に関し、米国向け「BA.4」と「BA.5」と日本・欧州向け「BA.1」対応の同時生産の難航も響いた。
- 通期の新型ワクチン売上高を180-190億USDと従来予想(210億USD)から下方修正。供給制約により30億USD分の売上は来期にずれ込む見通し。同社とメルク(MRK)は13日、mRNA技術を活用したがんワクチンに関する中期臨床試験で、皮膚がんの一種であるメラノーマ(黒色腫)治療で有効性が示されたと発表。mRNA技術の適用範囲と優位性に係る潜在可能性の大きさが注目されよう。
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。
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- 2012年設立のクラウドコンピューティング関連データウェアハウス企業。独自マルチクラスタ共有データアーキテクチャで複数ワークロードを大規模並列処理できる。バークシャー・ハサウェイも投資。
- 11/30発表の2023/1期3Q(8-10月)は、売上高が前年同期比67%増の5.57億USD、Non-GAAPのEPSが同3.7倍の0.11USD、調整後フリーキャッシュフロー(FCF)が同3.0倍の65百万USD。前四半期比は100万USD以上売上顧客の過去12ヶ月間売上継続率が6ポイント低下の165%も合計顧客数は7%増。
- 通期会社計画を上方修正。売上構成比9割超の製品売上高を前期比68-69%増の19.19 -19.24億USD(従来計画19.05-19.15億USD)、調整後FCFマージンを同9ポイント上昇の21%(従来計画17%)とした。2019年4月よりCEOを務めるスルートマン氏は1社目のデータ・ドメインを数千億円相当規模で売却に続き、2社目サービスナウ(NOW)は時価総額10兆円規模まで拡大の経営実績を誇る。
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- (※)決算発表の予定は12/16現在であり、変更される可能性があります。
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