米利上げ見通しと長期金利動向
FRBは20-21日開催のFOMCで政策金利(フェデラルファンド金利)誘導目標を0.75ポイント引き上げて3.00-3.25%とした。同時に発表された金利見通しは年末までに4.25-4.50%へ引き上げ、23年に4.50-4.75%でピークに達するとの見方が示された。FedWatchによる市場の政策金利予想もFRB見通しに沿っている。
米長期金利については、政策金利ピーク予想を目処に足元で上昇を加速させる可能性のほか、期待インフレ率を差し引いた「物価連動国債(TIPS)利回り」のピークアウト時期が注目されよう。
米利上げ見通しと長期金利動向〜FFレート4.50-4.75%ピーク見通しへ
79年 8月・ボルカーFRB議長就任
8/26のジャクソンホール会議での講演でパウエル議長は1970年代の高インフレ時代、およびボルカー議長が急速な利上げでインフレ退治に成功したという経験を引合いに出し、物価安定の回復に強い決意を示した。
ボルカー氏は1979年8月にFRB議長に就任後、金融政策の操作目標をマネーサプライの安定化とし、マネーを管理するために政策金利であるFFレートの大幅な変動を容認。そのため、FFレートが一時20%に達した。急激な金融引き締めによる金利高騰で倒産に追い込まれる中小金融機関が相次ぎ、失業率が大幅に悪化したものの、高いインフレ率は収束し、82年後半から株価も急回復した。株価の下落傾向は、1980年のCPI上昇率ピークアウト後に発生している。
79年 8月・ボルカーFRB議長就任〜インフレ抑制最優先ボルカー・ショック
何度も繰り返される大幅円安相場
ドル円相場が7日に一時145円まで高騰し、年初来上昇率が約26%に達した。2020年末頃から約19ヵ月で約43円の円安ドル高が進んだ。長期的には急速かつ大幅な円安ドル高は珍しくない。過去34年間でも、1988年11月から約17ヵ月で約38円、95年4月から約40ヵ月で約67円、99年11月から約26ヵ月で約33円、2012年8月から約36ヵ月で約47円の大幅な値幅での円安ドル高が実現された。
為替相場は名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利を反映しやすい。円の名目金利が上昇し難いなかで過去の例を辿れば、20年末起点で3年程度で50-70円の大幅な円安ドル高が進んでも異例ではない。24年前は147円まで高騰後、ドル指数上昇の中で円高ドル安に反転したことは注意を要す点だ。
何度も繰り返される大幅円安相場〜2-3年40-70円値幅も。ドル指数も鍵
日米の株式相場「恐怖指数」比較
米国株でS&P500を元に市場が今後30日間で予想する変動を数値化し、投資家の心理状態を数値化した「VIX指数」があり、「恐怖指数」とも呼ばれている。同様に日経平均株価についても、日経平均株価の今後30日での変動率を推計した数値を表す「日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)」がある。
過去1年間の日経平均株価と日経平均VIの日足終値推移を見ると、日経平均株価の短期的なピーク(ボトム)と日経平均VIの短期的なボトム(ピーク)が一致しやすい面が窺われる。また、日経平均VIは概ね20-30ポイントのレンジを意識して推移しているように見受けられる。足元では日米ともに20ポイント割れから反転上昇。VIX指数は30ポイント超えの「売られ過ぎ」ゾーンに差し掛かってきている。
日米の株式相場「恐怖指数」〜日経平均VIと米VIX指数の類似性と相違点
半導体不足改善と米自動車株価
世界的な半導体不足のあおりで自動車メーカーが顧客の注文に応えられなかったり、利益率悪化に繋がっていた状況が改善しつつある。車載半導体大手で米ナスダック上場の蘭NXPセミコンダクターズ(NXPI)の四半期決算から算定した平均在庫回転月数も、20年後半からの世界的な半導体需給逼迫で減少していた状況から改善し、6月末にはコロナ禍前2019年の水準に近づきつつある。
このような動きを受け、米大手自動車メーカーのゼネラル・モーターズ(GM)とフォード・モーター(F)
の株価も7月上旬から反転してきた。新車の挽回生産への期待の表れとみられる。ただ、物流混乱といった別の供給制約要因が残るほか、中央銀行の金融引き締め強化が最終需要に響く懸念もあり、要注意だろう。
半導体不足改善と米大手自動車株〜足元の自動車株価は反転持直しも
米国住宅市場とサプライチェーン
米ニューヨーク連銀が毎月公表する世界の供給制約の改善・悪化状況を表す「グローバル・サプライチェーン圧力指数」によれば、8月の指数は4ヵ月連続で前月を下回り、21年1月以来の低水準だった。上海発ロサンゼルス向け40フィートコンテナ標準運賃も21年9月のピークから約7割下落と、物流の目詰まりが緩和。インフレ抑制への追い風が期待される。
物流混乱の元を辿れば、「ウッドショック」と呼ばれる木材価格の高騰がある。すなわち、米消費者がコロナ禍で外出規制を伴う「巣ごもり」を余儀なくされ、テレワーク定着で郊外戸建て需要が急激に伸びたことが要因となり、木材価格の高騰に繋がったのだ。しかし、足元の米住宅市場が住宅ローン金利と建設資材価格の高騰が重しとなって縮小傾向に転じていることも物流目詰まり緩和に寄与しよう。