“米経済悲観論と採用抑制ニュースの増加をどう見るか”
- 米国金融市場を巡り、急にネガティブなニュースを聞く機会が増えてきた。JPモルガン・チェース(JPM)のダイモンCEOは、金融引き締めやロシアのウクライナ侵攻といった前例の無い課題の組合わせに経済が直面する中、投資家は経済の「ハリケーン」に身構えるべきだと警告した。ゴールドマン・サックスのウォルドロン社長も「これまでのキャリアで見た中で、最も複雑でダイナミックな環境だ。これほどの数の衝撃が同時発生するのは、私にとって前代未聞のことだ」と述べた。更に、「ブラック・スワン」(予想ができず、起きた時の衝撃が大きい事象)的なイベントに備えるファンドを運用する米ユニバーサ・インベストメンツの創業者であるスピッツナーゲル氏は「人類史上最悪のクレジットバブル」が迫っていると警告する有り様だ。
- テスラ(TSLA)のイーロン・マスクCEOは「経済について非常に悪い予感がする」としたうえで、固定給従業員の10%が人員削減の対象になると従業員に伝えたと報じられたほか、暗号資産交換業者の米最大手コインベース・グローバル(COIN)も、新規・既存ポジションの採用凍結を「当分の間」継続するとともに、多くの内定を取り消す方針を示した。
- 3日発表の5月の雇用統計で非農業部門の雇用者数が市場予想を上回る前月比39万人増だったこと、平均時給が前年同月比5.2%上昇で市場予想と一致したことから、6月と7月に続いて9月のFOMC(連邦公開市場委員会)でも0.50%の政策金利引上げが継続されるという市場の見通しが強まり、米国債10年利回りも再び3%近くまで上昇している。そのような市場の見方は、上記のような悲観論および雇用にブレーキをかける大手企業の動きの拡がりにより軌道修正を余儀なくされる可能性があろう。6月14-15日の次回FOMCを控えて10日に5月の消費者物価指数が発表される。足元のインフレについて需要面のピークアウト感が強まる余地もありそうだ。
- 労働市場の需給逼迫が緩むことで今までよりも採用のハードルが下がり、人件費の高騰が落ち着くとすれば企業業績の面ではプラスに作用する場合もあるだろう。この点は、ロシアのウクライナ侵攻長期化などにより原材料や燃料費、物流コスト等の高騰が逆風となりやすい製造業よりも、人件費の比率が相対的に高いサービス業種への追い風となる場合も考えられよう。
- 需要が縮小する場合、米企業の売上高成長率が全体的に小さくなっていくことが想定される。そのようななか、いち早く過去最高値から下落を開始して下落率や下落期間などで調整が進んだSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)企業の高い増収率は注目されよう。(笹木)
- 6/7号では、フォード・モーター(F)、オクタ(OKTA)、パラマウント・グローバル(PARA)、ペイパル・ホールディングス(PYPL)、トゥイリオ(TWLO)、ユニティ・ソフトウェア(U)を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(6/3現在)
主要企業の決算発表予定
6月7日(火) | JMスマッカー |
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6月8日(水) | ブラウン・フォーマン、キャンベルスープ |
6月9日(木) | ドキュサイン |
主要イベントの予定
6月7日(火) |
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6月8日(水) |
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6月9日(木) |
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6月10日(金) |
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6月11日(土)・12日(日) |
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- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
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- (※)決算発表の予定は6/3現在であり、変更される可能性があります。