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“メタバース、ハイブリッドクラウド、mRNAプラットフォーム”
“メタバース、ハイブリッドクラウド、mRNAプラットフォーム”
2021/12/28
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘
“メタバース、ハイブリッドクラウド、mRNAプラットフォーム”
- 2021年も残すところ1週間足らずとなった。振り返ると年内でNYダウ平均が3万ドルを割り込んだのは1月下旬だけだった。その時はSNS掲示板で情報交換をしていた個人投資家が投資アプリ「ロビンフッド」上で一部の銘柄を投機的に買い上がり、割高と見て空売りを仕掛けた大手ヘッジファンドの損失が報じられた。その後、5月中旬頃までは昨年秋の大統領選以降の上昇相場の余勢をかって「脱炭素」に係るコモディティ相場高騰を背景に上昇。NYダウ平均は3万5千ドルを突破したものの、その頃からインフレが目立ち始め、年末まで概ね3万3千-3万6千ドル台のレンジ圏の横ばい相場で推移した。
- 2022年は、2月の北京五輪を挟んだ米中対立やウクライナ問題に係る米露対立の激化が想定されるほか、3月のFRBによる量的緩和の段階的縮小(テーパリング)終了後には、インフレ動向とともに利上げ観測が取り沙汰されやすいだろう。その後は秋に中間選挙を控えており、政策遂行への不透明感が増すかもしれない。市場全体としては、コロナ禍対応の緩和マネーや財政出動に支えられたこの2年間ほどの力強さには欠けると考えられよう。
- 一方で、相場全体の「森」から個別銘柄の「木」に目を転じると、銘柄選択の柱を絞りやすい面もある。来年の米国株式市場のキーワードとして「メタバース」、「ハイブリッドクラウド」、「mRNAプラットフォーム」を取り上げたい。
- メタバースとは、コンピュータ・ネットワークの中に構築された現実世界とは異なる3次元の仮想空間およびサービスのことであり、メタ・プラットフォームズ(FB)を中心に取組みが進行中。構築に期間を要すると見られるものの、来年はメタバース構築に係る初期から恩恵を受ける企業が狙い目となろう。
- ハイブリッドクラウドとは、複数のクラウド・ベンダーが提供するパブリッククラウドやプライベートクラウド、利用者自身が保有するIT資産であるオンプレミスなどを組み合わせて、アプリケーションやシステムを稼働させるためのクラウド・インフラストラクチャーを指す。この実現に向け、汎用的なオープンソースのオペレーティング・システム(OS)やネットワーク間の接続・切替のスイッチに係るネットワーク機器、統合的なセキュリティ管理などの重要性が増そう。
- mRNAプラットフォームとは、疾患ごとに一つひとつ薬物療法を定義するのではなく、一度に複数の疾患と戦って様々なワクチンや治療薬を同時進行で開発できるm(メッセンジャー)RNAの特徴を指している。mRNAをベースとした新型コロナワクチン開発メーカーは、遺伝子情報があれば原則としてどのような感染症でもワクチンの設計図を容易に作成できる。その技術開発力に対して、来年は改めて評価が高まるのではないかと期待されよう。(笹木)
- 12/28号では、アリスタネットワークス(ANET)、ビオンテック(BNTX)、シスコシステムズ(CSCO)、フォーティネット(FTNT)、ポラリス(PII)、Unity Software Inc(U)を取り上げた。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(12/23現在)
※12/28-1/4までは、主な企業決算の発表予定がありません。
12月28日(火) |
- FHFA住宅価格指数(10月)、主要20都市住宅価格指数(10月)
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12月29日(水) |
- 卸売在庫 (11月)、中古住宅販売成約指数 (11月)
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12月30日(木) |
- 新規失業保険申請件数(25日終了週)、シカゴ製造業景況指数(12月)
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12月31日(金) |
- 米債券市場短縮取引、ウォルト・ディズニー会長にスーザン・アーノルド氏が就任
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1月1日(土) |
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1月3日(月) |
- 家電見本市「CES」のプレスデー(4日まで)・一般公開は5−8日(ラスベガス)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のCEOにホアキン・デュアト氏が就任
- 建設支出(11月)、マークイット米製造業PMI (12月)
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1月4日(火) |
- 「OPECプラス」閣僚級会合(オンライン)、 核拡散防止条約(NPT)再検討会議(ニューヨーク国連本部・28日まで)
- 米自動車販売 (12月)、求人件数( 11月)、ISM製造業景況指数(12月)
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- 2004年設立。世界中の様々な業界に跨り、大規模データセンターやキャンパス向けにソフトウェアで制御されたクラウドのネットワーキング・ソリューションを提供するネットワーク機器メーカー。
- 11/1発表の2021/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比23.7%増の7.48億USD、Non-GAAPの調整後純利益が同23.4%増の2.36億USD。部品に係る供給制約があったが、顧客のクラウド・コンピューティング利用に係るネットワーク化需要増に支えられた。調整後粗利益率が同0.3ポイント上昇。
- 2021/12期4Q(10-12月)の会社計画は、売上高が前年同期比19.5-22.6%増の7.75-7.95億USD、調整後粗利益率が同▲2.0-0.0ポイント低下の63.0-65.0%。メタ・プラットフォームズ(FB)のメタバース(仮想空間)関連データセンター投資支出増が増収に寄与する見通し。同社顧客であるマイクロソフト(MSFT)やアマゾン・ドット・コム(AMZN)のデータセンター投資拡大も同社業績に貢献しよう。
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- 2008年設立の独バイオテクノロジー企業。癌や感染症など重篤疾患の新しい免疫療法を開発・商品化。複数のグローバル製薬会社と協力して様々な感染症に対するmRNAワクチン候補を開発中。
- 11/9発表の2021/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比90倍の60.87億EUR、純利益が前年同期の▲2.10億EURから32.11億EURへ黒字転換。新型コロナウイルスワクチン関連売上高は60.21億EUR。これに対して、モデルナ(MRNA)が48億USD、共同開発のファイザー(PFE)が129億USD。
- 通期会社計画を上方修正。新型コロナワクチンの売上高を160-170億EUR(従来計画159億EUR)とした。追加(ブースター)接種や子どもへの接種に向けた需要拡大が寄与する見通し。同社の強みは創薬にAI(人工知能)を用いた様々な計算により治療薬を発見・開発する技術プラットフォームの活用にある。「タンパク質製造の設計図」と言われるmRNAによるがん治療への応用が期待される。
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- 1984年設立。世界最大のコンピューターネットワーク機器開発会社で、ルーター、スイッチ、ワイヤレスLAN、アクセスポイント、IP電話、ビデオ会議端末、セキュリティー、ソフトウェアなど手掛ける。
- 11/17発表の2022/7期1Q(8-10月)は、売上高が前年同期比8.1%増の129.00億USD、Non-GAAPの調整後純利益が同8.2%増の34.75億USD。供給制約に係る部品コスト増で調整後粗利益率が同1.3ポイント低下も、顧客企業のデジタル変革(DX)需要を受けて総製品受注が同33%増と伸びた。
- 通期会社計画は、売上高が前年同期比5-7%増、調整後EPSが同5.0-7.1%増の3.38-3.45USD。顧客企業のDX加速に伴い、自社管理(オンプレミス)のデータセンターとAWSやAzure、Google Cloud等のクラウド・コンピューティングとを統合して機動的にネットワークを切替・接続する需要が高まると想定される。6月末でネットワーク・スイッチの世界シェア40%を占める同社への追い風となろう。
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- 2000年設立。Internet Gatewayに必要なセキュリティ機能を実現する統合脅威管理(UTM)の「FortiGate」、それを効率的に活用する統合管理監視ツールを提供。UTMの出荷額で世界首位。
- 11/4発表の2021/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比33.2%増の8.67億USD、Non-GAAPの調整後純利益が同14.1%増の1.65億USD。供給制約に伴うコスト増で調整後営業利益率が同1.6ポイント低下したものの、UTMの範囲拡大に伴い請求ベースの取扱高が同42%増の10.6億USDと伸長。
- 通期会社計画を上方修正。取扱高を前期比30.7-32.4%増の40.4-40.9億USD(従来計画38.7-39.2億USD)、調整後EPSを同14.9-17.9%増の3.85-3.95USD(同3.75-3.90USD)とした。セキュリティに係るUTM適用領域およびそれに伴うシステム連携と自動化範囲が従来のデータセンター中心から、LANやWAN、およびクラウド・コンピューティング、在宅勤務にも拡大。1顧客当たり取扱高が増加しよう。
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- 1954年設立。スノーモービル、サイド・バイ・サイド、全地形対応車などオフロードやスポーツ、災害現場での用途に適した自動車メーカー。傘下に米国最古の二輪メーカーのインディアンを擁する。
- 10/26発表の2021/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比横ばいの19.59億USD、Non-GAAPの調整後純利益が同31.1%減の1.23億USD。供給制約に伴う欠品で米国が同24%減収となったことで売上が伸び悩んだほか、物流や原材料・人件費増により調整後粗利益率が同3.62ポイント低下。
- 通期会社計画を下方修正。売上高を前期比16%増の81.5億USD(従来計画83.75-85.00億USD)、調整後EPSを同16.3%増の9.00USD(同9.35-9.60USD)とした。米RV(リクレーショナル・ヴィークル)産業協会によれば在庫状況より2022年は1年前比で約1,100万人増の7,200万人の米国人がRVを使った旅行を計画中と、来期以降の休暇関連需要が期待されよう。また、同社は25期連続増配中。
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
- 2005年設立。ゲーム開発言語のUnityを展開。開発者向けプラットフォームを提供する「開発ソリューション」とユーザー獲得支援の「運用ソリューション」を2大事業部門とする。20年9月に新規上場。
- 11/9発表の2021/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比42.6%増の2.86億USD、Non-GAAPの調整後純利益が▲1,296万USDから▲1,481万USDへ赤字幅拡大。過去12ヵ月間で売上高10万USD以上の顧客数が同32%増の973件も、調整後の研究開発・マーケティング費率が同1.1ポイント上昇。
- 通期会社計画は、売上高を前期比40%増(従来計画35-37%増)と上方修正も、調整後営業利益を前年同期の▲50百万USDから▲59-▲64百万USDへ赤字幅拡大(同▲55-▲60百万USD)と引き下げ。同社がインタラクティブなリアルタイム3Dコンテンツ開発の主要プラットフォームと位置付けられるなか、メタバース参入を目指す大半の業界・企業が同社プラットフォームを活用すると期待される。
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- (※)決算発表の予定は12/23現在であり、変更される可能性があります。
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