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“コロナ飲み薬、ワクチン接種義務化、インフラ投資法案”
“コロナ飲み薬、ワクチン接種義務化、インフラ投資法案”
2021/11/9
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘
“コロナ飲み薬、ワクチン接種義務化、インフラ投資法案”
- 製薬大手ファイザー(PFE)が11/5、開発中の新型コロナウイルス向け飲み薬「パクスロビド」の投与により入院や死亡のリスクを約9割減らせたとの治験データを公表。「圧倒的な効果」が示されたことから臨床試験での新規患者受入れを停止し、緊急使用許可を得るため米食品医薬品局(FDA)に今月中にもデータを提出する計画とした。メルク(MRK)も先月、コロナ経口薬「モルヌピラル」の緊急使用許可をFDAに申請。メルクは9月に大規模治験を開始して入院・死亡リスクを半減させる中間結果を得たと10/5までに発表された。ファイザーも9/28に大規模治験を開始したと報じられていたことから、順調ならば11月上旬に治験結果が公表される可能性が高かったと言えよう。
- 米国は、11/8より外国籍者の入国について、新型コロナワクチン接種を義務化するとともに接種完了を条件として渡航制限を解除。また、米バイデン政権は従業員100人以上の企業を対象にした新型コロナワクチン接種の義務化を来年1月から導入すると発表。従業員がワクチン未接種の場合に週1回以上の検査が必要となり、違反した場合の罰金が科される。対象は全米で8,400万人に上ることから、モデルナ(MRNA)やバイオエヌテック(BNTX)などワクチン開発企業への追い風は続こう。
- ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)(JNJ)製の新型コロナワクチンは、FDAが10/20までにファイザー製やモデルナ製に対する混合接種を承認していたなか、米国立衛生研究所(NIH)のFDAに提出した治験データによれば、特に混合接種が有効だったことが示された。その意味では、今後はJ&Jの新型コロナワクチンに占める重要度が増していくものと期待されよう。
- 5年間で約5,500億ドルの新規支出を含む1兆ドル規模の超党派インフラ投資法案が11/5の米下院で可決。上院では8/10に既に可決済みであり、バイデン大統領が3月末に「米国雇用計画」を打ち出してから7ヵ月以上経過して成立した。道路や橋梁、鉄道網の補修や強化に加えて、電気自動車(EV)の充電所の整備が盛り込まれており、インフレ圧力の要因にもなっている供給制約を軽減する役割も期待される。鉄鋼株をはじめ、建設機械、水処理、EVのネットワーク網運営、建設資材など幅広い業界への恩恵が見込まれよう。
- メタ・プラットフォームズ(FB)が構築を主導する仮想空間「メタバース」の関連銘柄が市場で賑わっている。追い風を受けそうな企業としては、エヌビディア(NVDA)やアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)など半導体大手のほかに3D開発プラットフォームのユニティ・ソフトウエア(U)も有望だろう。(笹木)
- 11/9号では、エアビーアンドビー(ABNB)、CVSヘルス(CVS)、ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー(DIS)、クロ―ガー(KR)、モンスタービバレッジ(MNST)、タイソン・フーズ(TSN)を取り上げた。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(11/5現在)
11月9日(火) |
ウィン・リゾーツ、ウエストロック、カーディナルヘルス、シスコ |
11月10日(水) |
ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー(DIS)、アトモス・エナジー |
11月11日(木) |
タペストリー、Organon & Co |
11月15日(月) |
アドバンス・オート・パーツ、タイソン・フーズ(TSN) |
11月9日(火) |
- FRB議長が会議冒頭で挨拶、セントルイス連銀総裁・米サンフランシスコ連銀総裁が参加(オンライン)
- 米PPI(10月)
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11月10日(水) |
- 米CPI(10月)、新規失業保険申請件数(6日終了週)、卸売在庫(9月)、財政収支(10月)
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11月11日(木) |
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11月12日(金) |
- ニューヨーク連銀総裁の講演、APEC首脳会議(AELM、議長国ニュージーランド)、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が閉幕
- 求人件数(9月)、ミシガン大学消費者マインド指数(11月)
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11月15日(月) |
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- 2008年設立の米バケーションレンタル(貸別荘)サイト大手。世界220ヵ国、10万以上の都市で民泊物件の仲介を展開。21年3月末で物件数740万件中、稼働物件が560万件。20年12月に新規上場。
- 11/4発表の2021/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比66.7%増の22.37億USD、Non-GAAPの調整後EBITDAが同2.2倍の11.01億USD、フリーキャッシュフロー(FCF)が同57.8%増の5.17億USD。デルタ株感染拡大の下、近場への旅行増、柔軟な勤務形態利用の長期滞在や宿泊予約が業績に貢献。
- 2021/12期4Q(10-12月)の会社計画は、売上高が前年同期比62-72%増の13.9-14.8億USD、予約流通額(GBV)が2年前同期(85億USD)を上回り、調整後EBITDAも堅調な推移を見込む。米国入国外国人に対して新型コロナワクチン接種義務化の一方で入国制限を解除したほか、メルク(MRK)やファイザー(PFE)が開発中の新型コロナ経口治療薬が実用化されれば同社業績を押し上げよう。
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- 薬局大手のCVSと薬剤給付管理(PBM)大手のケアマークが合併して2007年に設立。薬局サービス、PBM運営を含む小売・長期介護(LTC)、およびヘルスケア福利厚生の3事業セグメントを展開。
- 11/3発表の2021/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比10.0%増の737.94億USD、Non-GAAPの調整後EPSが同18.7%増の1.97USD。同期間内に薬局の店舗内での新型コロナウイルスの検査数が800万件以上、ワクチン接種が1,100万件以上に達したほか、金融費用の減少が業績に寄与。
- 通期会社計画を上方修正。調整後EPSを前期比6.3-6.7%増の7.90-8.0USD(従来計画7.70-7.80USD)へ、営業キャッシュフローを同15-21%減の130-135億USD(同125-130億USD)へ引き上げた。バイデン政権は11/14、従業員100人以上企業を対象に新型コロナワクチン接種義務化の来年1月からの導入を発表。ワクチン未接種の際の週1回検査に違反した場合の罰金も盛り込まれた。
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- 1920年代にアニメスタジオとして発足。世界最大のエンターテインメントおよびメディア企業で、テレビ放送をはじめ、映画・ゲーム制作、テーマパーク・リゾートの運営など幅広い事業を手掛ける。
- 8/12発表の2021/9期3Q(4-6月)は、売上高が前年同期比44.5%増の170.22億USD、継続事業からの純利益が前年同期の▲47.18億USDから9.23億USD。「Disney+」など動画配信の契約者数が同9%増の1億7,400万人へ拡大のほか、コロナ禍で打撃を受けていたテーマパーク部門が黒字転換。
- 2021/9期の会社計画は非開示。動画配信サービスに係る「ダイレクト・トゥ・コンシューマー」部門の2Qの営業利益は前年同期の▲6.24億USDから▲2.93億USDへ赤字幅縮小。巣ごもり特需の反動減懸念があるものの、3Q以降での黒字転換が注目される。また、新型コロナワクチン接種義務化に伴う米国への入国制限解除や経口治療薬の実用化の動きはテーマパーク部門への追い風となろう。
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- 1883年開業の全米最大の食品スーパーマーケットチェーン。傘下に、ラルフス、フード4レス、ハリス・ティーター、フレッドマイヤーなどがある。プライベートブランドのシンプル・トゥルースを擁する。
- 9/10発表の2022/1期2Q(5-7月)は、燃料費や一時的項目を除く調整後売上高が前年同期比0.6%減の276.06億USD、Non-GAAPの調整後EPSが同9.6%増の0.80USD。2年前の同期比では、調整後売上高が14.0%増、調整後EPSが81.8%増と巣ごもり特需の影響を除いても堅調に利益拡大。
- 通期会社計画を上方修正。調整後売上高を前期比1.0-1.5%減(従来計画2.5-4.0%減)、調整後EPSを同3.5-6.3%減の3.25-3.35USD(同2.95-3.10USD)へ引き上げた。デジタル投資に注力するなか、既に2箇所の自動倉庫を開設したほか今後2年間で更に9箇所の開設を計画中。自動倉庫では「Grobot」と呼ばれるロボットが必要な食料品アイテムを自動で取り出し、配達運転手に渡している。
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- 1990年設立の飲料メーカー。モンスターエナジー事業、2015年にコカコーラから取得したブランドの戦略的ブランド事業、2016年買収子会社によるサードパーティ向け販売のその他事業を営む。
- 11/4発表の2021/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比13.2%増の14.10億USD、純利益が同3.0%減の3.37億USD。モンスターエナジー事業が同14.3%増収、海外売上が同18.7%増と堅調の一方、市況高騰および物流費用の上昇によるアルミ缶費用増が響き粗利率が同3.2ポイント低下。
- 同社は会社業績予想を発表していない。アルミ缶に係る費用増に対応するため米国アルミ缶供給業者2社と契約を締結し、10-12月期に納入開始予定。栄養・エネジードリンクの世界市場はレッドブルとモンスターエナジーの2強が続くなか、日本ではモンスターエナジーが独走。同社はコカ・コーラ(KO)と国際流通調整契約を締結し、コカ・コーラの流通ボトラーを利用できる点で優位性を確保。
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
- 1935年設立の食肉加工世界最大手企業。牛・豚・鶏の加工品および調理済食品を製造・販売。「Tyson」のほか「Jimmy Dean」、「Hillshire Farm」、「Ball Park」、「Wright」などのブランドを展開する。
- 8/9発表の2021/9期3Q(4-6月)は、売上高が前年同期比24.5%増の124.78億USD、Non-GAAPの調整後EPSは同92.9%増の2.70USD。販売量が同9.7%増、平均販売価格が同17.1%上昇。牛肉・豚肉・鶏肉・調理済食品の全部門が堅調に推移。全体の調整後営業利益率も同3.2ポイント上昇した。
- 通期会社計画を上方修正。売上高を前期比6.5-8.8%増の460-470億USD(従来計画440-460億USD)とした。米国内需要の拡大のほか中国での需要拡大により米国産の牛肉が中国に流れることで日本でも「ミートショック」と言われる輸入牛肉の価格高騰が発生。著名な牛丼チェーンも値上げに追い込まれた。ミートショックおよび豚や鶏への波及による価格高騰は同社への追い風となろう。
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- (※)決算発表の予定は11/5現在であり、変更される可能性があります。
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