コロナ経口治療薬とワクチンmRNA、長期金利低下
- 当ウィークリー2021年9月28日号の「銘柄ピックアップ」で取り上げた製薬大手のメルク(MRK)は1日、開発中の新型コロナウイルス経口治療薬「モルヌピラビル」が患者の入院や死亡リスクを約半減できることを臨床試験の中間結果で確認したと発表。症状が出て5日以内の軽度から中度と診断された患者が5日間にわたり1日2回の投与を受けていたとのことであり、実用化されれば軽症患者は自宅で短期間で治療することが可能となるとみられ、新規感染者拡大で経済活動を制限する主な理由となっていた医療提供体制の逼迫を解消できる余地が生まれる。そうなると、新型コロナワクチン接種普及の前提の下では再び新規感染者が増加しても経済活動を制限する理由が薄れることから、経済正常化が一気に進むと見込まれる。
- 一方で、新型コロナワクチンの3回目以降の「ブースター接種」の必要性が薄れると見られたためか、10/1の モデルナ(MRNA)や ビオンテック(BNTX)、マラバイ・ライフサイエンシズ・HD(MRVI)の株価が急落。短期的な株価の動きとしては妥当かもしれないが、治療薬が普及してもワクチンの必要性が薄れるわけではないほか、新型コロナワクチンで使われるmRNAワクチンは、遺伝情報さえあれば短期間で有効性の高いワクチンを生み出せる汎用性の高さに大きなメリットがあると言われており、中長期観点では本質的価値が損なわれることにはならないだろう。ビオンテックの上級副社長を務めるカリコ氏がノーベル賞を受賞するかどうかも注目される。
- イエレン財務長官が「債務上限の引き上げが無ければ18日頃に米国債がデフォルトに陥る可能性がある」と述べるなか、米国債市場は歳出法案などを巡る協議の影響を殆ど受けていないように見受けられる。9/29まで上昇していた米国長期金利は新会計年度入りの10月に入り低下を示した。半年前も現在と同様に、3月末にかけて米10年国債利回りが1.7%台まで上昇後に4月になって低下に転じ、低下傾向は8月頃まで継続した。日本の機関投資家などからの買いが入ったためと一部報道で伝えられた。
- また、債務上限問題で財政出動が困難となれば、景気への悪影響を未然に防ぐためにFRBによる短期金融市場への流動性供給が行われる展開も考えられ、長期金利の低下に繋がる可能性もあろう。その場合、過剰流動性の受け皿として時価総額が大きな大型ITハイテク株が物色される流れも考えられる。5日に「Windows11」を提供開始する マイクロソフト(MSFT)、電気自動車(EV)販売台数が好調な テスラ(TSLA)、オリジナル配信ドラマが世界的に大ヒットの ネットフリックス(NFLX)は要注目だろう。(笹木)
- 10/5号では、CFインダストリーズ・ホールディングス(CF) 、セレンス(CRNC)、 フォックス・ファクトリー・ホールディング(FOXF) 、リベント(LTHM)、 ネットフリックス(NFLX)、 テスラ(TSLA) を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(10/1現在)
主要企業の決算発表予定
10月5日(火) | ペプシコ |
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10月6日(水) | コンステレーション・ブランズ |
10月7日(木) | ラム・ウェストン・ホールディングス、コナグラ・ブランズ |
主要イベントの予定
10月5日(火) |
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10月6日(水) |
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10月7日(木) |
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10月8日(金) |
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- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
CFインダストリーズ・ホールディングス(CF)市場:NYSE・・・2021/11/13に2021/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定
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セレンス(CRNC)市場:NASDAQ・・・2021/11/16に2021/9期4Q(7-9月)の決算発表を予定
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フォックス・ファクトリー・ホールディング(FOXF)市場:NASDAQ・・・2021/11/10に2021/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定
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リベント(LTHM)市場:NYSE・・・2021/11/10に2021/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定
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ネットフリックス(NFLX)市場:NASDAQ・・・2021/10/20に2021/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定
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テスラ(TSLA)市場:NASDAQ・・・2021/10/22に2021/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定
(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
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- (※)決算発表の予定は10/1現在であり、変更される可能性があります。