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“相場転換点、そして、経済活動正常化と株価正常化”
“相場転換点、そして、経済活動正常化と株価正常化”
2021/6/22
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘、李一承
“相場転換点、そして、経済活動正常化と株価正常化”
- 当ウィークリーの2021年6月1日号「6月中旬相場転換点の可能性、石油供給危機リスク」で述べたように、一目均衡表の「対等数値」の考え方をもとにすれば、NYダウ平均株価の推移で、昨年の安値を付けた昨年3/23を起点として大統領選前に押し目の底値を付けた10/30までの取引日数は156日。10/30から数えて取引日数156日目が今年の6/15に到来した。
- また、2018年に遡ると、終値で21,792ドルまで下落した12/24を起点として昨年3/23までの取引日数は313日。昨年3/23から数えて取引日数313日目が今年の6/17に到来した。以上をもとに、6月第3週は相場の転換点となりやすい時期であると述べていたなか、6/16以降、FOMC(米連邦公開市場委員会)の会合後の声明および経済予測で、金融政策の正常化が想定よりも早まるとの見方が広がったことを契機としてNYダウ平均株価は下げを加速させた。6/15-16は、日足一目均衡表上でも転換線や基準線、および先行スパン上限が近接した需給上の均衡点と言える状況だったことも、動きが加速し易いポイントだっという面はあろう。
- 新型コロナワクチン接種の普及に伴い経済活動の正常化が進展する一方、米国上場企業の総時価総額の対米GDP比率が200%を超えるなど、株価が実体経済を反映していないことが懸念されていた。仮に「株価正常化」に向けた調整局面を考えるならば、実体経済がコロナ禍前に戻ることを意識した動きとして、NYダウ平均株価がコロナ禍以前の価格帯として、昨年2月高値の29,409ドルを下回るかどうかを試す局面が想定されよう。
- 既に今年の5/7頃から景気に敏感なコモディティ市況が総じて軟調となっていることから、足元の米長期金利急低下は、拙速な金融引締めによる景気減速・腰折れ懸念とみられる。景気過熱によるインフレ懸念から一足飛びで景気減速を懸念するのは行き過ぎの面もあり、早晩、その修正が行われる可能性が高いと思われる。一方で、バイデン大統領が連邦取引委員会(FTC)の委員長に反トラスト法の強化を唱えるリナ・カーン氏を指名したことで、GAFAなど巨大IT企業への規制強化が市場の想定以上に本格化することがあれば、株式市場への影響が一層大きくなる可能性もあろう。
- 軟調なコモディティ市況の中で、原油やガソリンは経済活動正常化に伴う需要増見通しに変わりがない一方、環境規制の観点から生産増を見込みにくいことから、相対的に相場が堅調に推移すると見込まれる。シェブロン(CVX)、エクソン・モービル(XOM)、フィリップス66(PSX)などの関連銘柄は配当利回り面も併せて注目されよう。(笹木)
- 6/22号では、キャタピラー(CAT)、カーバナ(CVNA)、ガーミン(GRMN)、フィリップス66(PSX)、Royalty Pharma PLC(RPRX)、タンデム・ダイアベティス・ケア(TNDM)を取り上げた。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(6/18現在)
6月23日(水) | IHSマークイット |
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6月24日(木) | フェデックス、ナイキ、アクセンチュア、ダーデン・レストランツ |
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6月25日(金) | カーマックス、ペイチェックス |
6月22日(火) | - パウエルFRB議長が下院特別小委員会で証言、クリーブランド連銀総裁・サンフランシスコ連銀総裁がオンラインイベントで講演、ニューヨーク市長選予備選
- 米中古住宅販売件数 (5月)
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6月23日(水) | - ボウマンFRB理事・アトランタ連銀総裁・ボストン連銀総裁が講演
- 米経常収支(1Q)、マークイット製造業・サービス業・総合PMI (6月)、新築住宅販売件数(5月)
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6月24日(木) | - アトランタ・フィラデルフィア両連銀総裁がパネル討論会に参加、ニューヨーク連銀総裁・セントルイス連銀総裁がオンラインイベントで講演、FRBがストレステスト結果発表、マイクロソフトの「ウインドウズ」イベント
- 新規失業保険申請件数 (19日終了週)、卸売在庫(5月)、耐久財受注(5月)、GDP(1Q 確定値)
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6月25日(金) | - クリーブランド連銀総裁・ボストン連銀総裁が講演
- 個人所得・支出(5月)、ミシガン大学消費者マインド指数 (6月)
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6月28日(月) | |
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- 1925年設立。建設・採鉱装置、ディーゼル・天然ガスエンジンなどの世界有数のメーカー。建設産業、資源産業、エネルギー・運輸の主要3事業のほか、リースやローンなどの金融商品事業を展開。
- 4/29発表の2021/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比11.8%増の118.87億USD、純利益が同40.1%増の15.31億USD。景気回復を背景に7四半期ぶり増収、5四半期ぶり最終増益。主要3事業が増収のほか、金融商品事業のセグメント利益はクレジット損失引当金繰入額減少により同2.3倍。
- 2021/12期2Q(4-6月)の会社業績予想は、中国の建機需要が伸びる見通しの一方、半導体不足や原材料費上昇の影響が読めないとして開示を見送った。バイデン大統領が発表した今後8年間に跨る大規模インフラ投資計画である「米国雇用計画」の内、道路・橋・高速道路・港湾など公共交通インフラ整備に約6,000億USDの予算が充てられる見通し。同社への恩恵が期待されよう。
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- 2012年設立の中古車売買のためのEコマース・プラットフォームを運営。顧客はCarvana.com上で360度画像を使用して検査、購入契約締結のほか、融資や配送、下取り・集荷などの設定ができる。
- 5/6発表の2021/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比2.0倍の22.45億USD、純利益が前年同期の▲6,000万USDから▲3,600万USDへ赤字幅縮小。主力の中古車販売で販売台数が同76.4%増、平均販売単価が同5.9%上昇。粗利率が同2.5ポイント上昇、販管費率が同7.45ポイント低下。
- 2021/12通期会社計画は、1台当たり平均粗利益(GPU)が3千USD台半ば(1Q実績:3,656USD)、EBITDAマージンが小幅のマイナス(同:▲1.3%)と、1Q実績は計画に対し順調に進捗。半導体不足の影響でメーカーの生産が減少するなか、米国中古車の取引価格を示す「マンハイム指数」は5月に過去最高を記録。レンタカー業者による中古車購入拡大の動きは、同社の業績を押し上げよう。
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- 1989年設立。スイスを本拠とし、世界中でナビゲーション・通信・情報デバイスの設計・開発・製造・販売を行う。「フィットネス」、「アウトドア」、「航空」、「マリーン」、「自動車」の5事業セグメントを展開。
- 4/28発表の2021/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比25.3%増の10.72億USD、純利益が同36.5%増の2.20億USD。フィットネス部門がウェアラブル・ウォッチの寄与により同38%増収、アウトドア部門がスポーツ向けアドベンチャー・ウォッチの貢献により同46%増収と全体の売上増を牽引。
- 2021/12通期会社計画は、売上高が前期比9.9%増の46億USD、Non-GAAPの調整後EPSが同0.2%増の5.15USD。日本で生命保険大手各社がウェアラブル端末と専用のスマートフォンアプリを使用して保険加入者の毎日の歩数を計測し、結果に応じて保険料の割引などを受けられる「健康増進型保険」への取組みを強化。ガーミンのデバイスを着用する保険加入者が増加中の模様だ。
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- 1875年創業。2002年にフィリップス石油とコンチネンタル・オイルが合併してコノコフィリップスとなった後、スピンオフにより独立。石油精製を行うほか、ガソリンスタンドを通じて石油製品の販売を行う。
- 4/30発表の2021/12期1Q(1-3月)は、総売上高が前年同期比3.2%増の219.27億USD、Non-GAAPの調整後純利益が前年同期の4.50億USDから▲5.09億USDへ赤字転落。今年2月のテキサス州寒波による操業停止の影響のほか精製部門における複数の定期修理費用が嵩んだことが響いた。
- 2021/12期2Q(4-6月)の会社計画は、定期修理費用が1.10-1.40億USD(1Q実績:1.92億USD)、寄附や環境問題関連の会社負担費用が2.40-2.50億USD(同:2.51億USD)。5月以降、木材や穀物ほかコモディティ市況が軟調となるなか、原油やガソリン価格は6月以降も上昇基調を継続。また、再生可能エネルギーの精製を行うため、2024年稼働目標でサンフランシスコの製油所を改装中。
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- 1996年に創業。主にバイオ医薬品のロイヤルティ(権利の使用料)に投資し、バイオ医薬品の開発に係る様々なイノベーションに対し資金を提供。2020年6月にナスダックに新規上場を果たした。
- 5/11発表の2021/12期1Q(1-3月)は、Non-GAAPの調整後受取現金が同37.2%増の5.24億USD、調整後キャッシュフローが同37.2%増の4.09億USDと、ロイヤルティのポートフォリオの拡大を受けて堅調に増加。同社は投資会社の性格が強く、キャッシュフロー主体の業績評価が必要とされる。
- 調整後受取現金の通期会社計画を従来の19.10-19.60億USDから19.40-19.80億USDへ上方修正。1Qの成長製品からの受取現金ロイヤルティでは、バーテックス(VRTX)の嚢胞性繊維症治療薬(CF)が前年同期比68%増の1.67億USDと急成長。米食品医薬品局(FDA)がバイオジェン(BIIB)のアルツハイマー治療薬以降、承認の判断基準を変えたとみられることは、同社の業績への追い風となろう。
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
- 2006年設立。インスリン依存型糖尿病患者向け製品の設計・開発・販売を手掛け、患者の負担軽減目的でのコンピューター制御による小型インスリンポンプシステム「t:slim X2」を主力製品とする。
- 5/5発表の2021/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比44.0%増の1.41億USD、純利益が前年同期の▲1,486万USDから▲504万USDへ赤字幅縮小。同社が重視するNon-GAAPの調整後EBITDAは同3.2倍の1,319万USD。出荷数は米国内向けが同26%増、海外向けが同2.1倍と堅調に推移。
- 2021/12通期会社計画にて、売上高を前期比25-28%増の6.25-6.40億USD(従来計画6.00-6.15億USD)とし、その内、海外向けを同50-56%増の1.25-1.30億USD(同1.05-1.10億USD)へ上方修正。今月2-5日に開催の「第14回糖尿病に対する高度技術と治療に関する国際会議(ATTD)」で同社の自動血糖管理コントローラー「Control-IQ」技術に係る患者の実証データが報告され、注目を浴びた。
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- (※)決算発表の予定は6/18現在であり、変更される可能性があります。
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