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“タリフマン、トランプ・プット、米中首脳会談期待”
“タリフマン、トランプ・プット、米中首脳会談期待”
2019/5/14
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘、増渕 透吾
“タリフマン、トランプ・プット、米中首脳会談期待”
5/10に、トランプ政権は中国からの2.000億ドル分の輸入製品に対して10%から25%に関税引上げを実施した。同時に、まだ追加関税が課されていない残りの3,000億ドル分についても25%への関税を課す方針を示した。既にイラン産およびベネズエラ産の原油への禁輸措置を実施しており、関税と制裁による世界貿易縮小、および世界経済成長の減速懸念が強まりやすくなっている。 このような事態がもたらし得る影響としては、先ず、関税コストが米国物価に反映することによるインフレ圧力である。5/10発表の4月消費者物価指数は前月比0.3%上昇(市場予想同0.4%増)、前年同月比2.0%増(市場予想同2.1%増)と落ち着きを見せているが、今回の関税引上げ対象製品が米国内に流通する6月以降は要注意である。次に、米ドルを介さずに禁輸や関税引上げ対象となっている製品を輸出しようという「密輸」が出てくるのではないかという懸念である。暗号資産のビットコインが米ドル建てで4月末の5,350ドルから5/13に7,500ドルへと短期的に急騰しており、基軸通貨米ドルの外で国際送金決済を行いたい需要が強まってきている思惑の現われとして、要注目である。 2018年における米国の対中輸出額は1,203億ドル、中国の対米輸出額は5,395億ドルであり、中国の輸出超過4,192億ドルとなっている。これは、2018年の中国における貿易黒字額3,517億ドルを上回る。中国は対米輸出超過額が無くなれば貿易赤字国に転落してしまい、人民元相場下落を懸念した資本逃避を引き起こしかねない。中国は自国の屋台骨を支える大口顧客の米国と対立して得をすることが無い事情もあり、今後も粘り強く米政権と交渉していくスタンスは変わらないだろう。6月末のG20大阪サミットにて米中トップ会談を実施することによって抜本的解決を図る「期待」を繋ぐ展開が想定される。 また、好調な1-3月GDP、4月雇用統計・失業率、および世論調査で過去最高となった支持率を背景に、トランプ大統領のツイートが相場に与えるインパクトは力強さを増しており、前向きな発言に対する株価の感応度も高い。同時に、「大統領再選のために株価を下げることはしないだろう」という期待(願望)も強まりつつある。しかし、米中首脳会談への期待からNYダウで26,000ドル近辺まで戻った後で「材料出尽くし」感から下げ相場に転じた昨年12月初のG20ブエノスアイレス・サミットにおける米中首脳会談を忘れることはできまい。6月までは「期待」による買戻しが出やすい環境が続くとしても、過信は禁物だろう。(笹木) 5/14号では、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG) 、ドロップボックス(DBX) 、ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー(DIS) 、ニュアンス・コミュニケーションズ(NUAN) 、タペストリー(TPR) 、バイアコム(VIAB) を取り上げた。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(5/10現在)
5月14日(火) ラルフローレン、アジレント・テクノロジー 5月15日(水) NTN、メーシーズ 、シスコシステムズ 5月16日(木) ウォルマート 、エヌビディア 5月17日(金) ディア
5月14日(火) ニューヨーク連銀総裁、カンザスシティー連銀総裁講演 輸入物価指数 (4月) ユーロ圏鉱工業生産 (3月)、独CPI (4月)、独ZEW景況感指数(5月) 5月15日(水) リッチモンド連銀総裁講演 小売売上高(4月) 、鉱工業生産(4月) 、企業在庫 (3月)NAHB住宅市場指数 (5月) 対米証券投資 (3月) ユーロ圏GDP (1Q)、独GDP (1Q) 中国小売売上高、工業生産、固定資産投資 (4月) 5月16日(木) ミネアポリス連銀総裁講演 ユーロ圏財務相会合(ユーログループ、ブリュッセル) 住宅着工件数 (4月) 新規失業保険申請件数(11日終了週) 中国新築住宅価格 (4月) 5月17日(金) ニューヨーク連銀総裁、地域会合に参加 EU財務相理事会(ブリュッセル)、欧州新車販売台数 (4月) 、ユーロ圏CPI (4月) 景気先行指標総合指数 (4月) 、ミシガン大学消費者マインド指数 (5月) 5月20日(月)
1919年創業。世界有数の規模を誇る保険グループで、80以上の国・地域で保険事業を展開。損害保険、生命保険、退職給付およびその他の金融サービスなど、幅広いサービス提供している。 5/6発表の2019/12期1Q(1-3月)は、経常収益が前年同期比6.4%増の124.56億USD、純利益が同30.3%減の6.54億USD。純実現キャピタルロスなどの影響により減益となったものの、特別項目を除く調整後税引前利益は同51.9%増。調整後EPSは1.58USDと市場予想の1.05USDを上回った。 ホーガン副社長兼CEOによると、2019/12通期の調整後税引前利益は前期から横ばいとなる見通し(前期実績:14.09億USD)。同社は損害保険事業のリスク選好を見直し、新規事業参入のためバミューダの再保険会社バリダス・ホールディングスを買収した。こうした取り組みが奏功し、損害保険部門はデュパロウ社長兼CEO就任以降で最高のアンダーライティング・マージンを達成。(増渕)
2007年設立。ウェブ上でファイル、写真、動画、音楽、スプレッドシートなどを保管・共有できるプラットフォームを提供するソフトウェア会社。180ヵ国以上に5億以上のユーザーを有する。 5/9発表の2019/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比21.9%増の3.85億USD、純利益が前年同期の▲4.65億USDから▲770万USDに赤字幅縮小。調整後純利益では同35.0%増の4,170万USD。有料登録ユーザー数が同14.8%増、ユーザー当り平均収入が同5.9%増と堅調に推移。 2019/12通期市場予想は、売上高が前期比18.1%増の16.42億USD、当期利益が前期の▲4.84億USDから▲7,790万USDに赤字幅縮小。2/8に電子署名・文書改定履歴プラットフォームのHelloSign社を2.30億USDで買収完了。SaaS(Software as a Service)企業としてユーザー企業に係る日常業務の囲い込みを進めることで、ユーザー当り平均収入の向上を狙う戦略に期待。(笹木)
1920年代にアニメスタジオとして発足。世界最大のエンターテインメントおよびメディア企業で、テレビ放送をはじめ、映画・ゲーム制作、テーマパーク・リゾートの運営など幅広い事業を手掛ける。 5/8発表の2019/9期2Q(1-3月)は、売上高が前年同期比2.6%増の149.22億USD、営業利益が同9.9%減の38.16億USD。セグメント別営業利益は、テーマパーク事業が同15.0%増だったが、動画配信事業に係る先行投資費用および映画事業の前年人気映画に対する反動により減益だった。 2019/9通期市場予想は、売上高が前期比20.8%増の718.11億USD、営業利益が同3.8%増の153.62億USD。映画事業は4月公開の「アベンジャーズ/エンドゲーム」が大ヒット。テーマパーク事業は5月末のスターウォーズ・エリア新設。動画配信事業は12/11開始予定の「Disney+」が控える。その他、映画・テレビ放送の21世紀FOX社、動画配信Hulu社の買収の業績寄与に期待。(笹木)
1992年設立の音声認識ソリューションのリーディングプロバイダー。自動音声認識、自然言語理解(NLU)、テキスト読み上げ(TTS)、声紋生体認証、光学文字認識などソリューションを提供する。 5/8発表の2019/9期2Q(1-3月)(※)は、売上高が4.09億USD(ASC 605基準:前年同期比3.7%減の4.09億USD)、純利益が7,733万USD(同:1.24億USDと前年同期の▲1.64億USDから黒字転換)。調整後EPSは0.29USDと市場予想の0.25USDを上回った。Dragonクラウドなどが牽引した。 (※)2018/10より収益認識基準をASC 605からASC 606に変更しているため、前年同期比増減率を記載していない 2019/9期3Q(4-6月)会社計画(ASC 605基準)は、売上高が4.51-4.65億USD、調整後EPSが0.27-0.30USD。通期会社計画(ASC 605基準)を上方修正。売上高を18.40-18.82億USDから18.45-18.77億USDへレンジ幅を縮小し、調整後EPSを1.10-1.18USDから1.13-1.21USDへ引き上げた。(増渕)
1941年に「COACH」として創業。2017年にKATE SPADEの買収が完了し社名変更。「COACH」、「KATE SPADE」、「STUART WEITZMAN」などのブランドのもとハンドバッグ、アクセサリーを提供する。 5/9発表の2019/6期3Q(1-3月)は、売上高が前年同期比6.8%増の13.31億USD、純利益が同16.3%減の1.17億USD。基幹業務システムの導入や統合費用が重荷に。調整後EPSは0.42USDと市場予想の0.41USDを上回った。COACHの既存店売上高は同1%増、KATE SPADEは同3%減。 2019/6通期会社計画は、売上高が1桁台前半から中盤の伸び率、EPSが2.55-2.60USD。EPS見通しは2/7の2Q決算発表時に従来計画の2.75-2.80USDから下方修正したが、今回は据え置いた。市場予想は2.58USDだった。KATE SPADEとのシナジーにより1.00-1.15億USDのコスト削減効果を見込む。同社はKATE SPADEの既存店は4Q末までにプラスに回復する可能性があると説明した。(増渕)
2005年設立のメディア・コングロマリット。ケーブルテレビ・チャネルの「ニコロデオン」「MTV」「BET」、映画会社「パラマウントピクチャーズ」などを運営する。世界180の国・地域で展開している。 5/10発表の2019/9期2Q(1-3月)は、売上高が前年同期比6.0%減の29.58億USD、純利益は同41.4%増の3.76億USD。調整後EPSは0.95USDと市場予想の0.80USDを上回った。アドバンスドマーケティングソリューション(AMS)が牽引し、国内広告収入が伸びた。Pluto TVとの統合も進展した。 デービスCFOによると2019/9通期は売上高が為替変動を除くベースで前期比1桁台前半の伸びとなる見通し。5月にエルトン・ジョンの伝記映画「ロケットマン」、8月に「Dora and the Lost City of Gold」が公開予定。テレビ番組も22の番組を受注。2QにはDirecTVやU-Verseなどへのコンテンツ配信を含むAT&Tとの長期契約を更新したほか、Tモバイルとも配信契約を締結した。(増渕)
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