シリコンバレー銀行(略称SVB)の破綻による銀行不安のなか、ナスダック100指数の堅調さが目立ちます。ただ、足元では米長期金利の上昇でナスダック100指数が下落した一方、ディフェンシブ株は買い優勢が続きました。SVB破綻後の相場動向からすると、早期利上げ期待が残りつつ、リセッション懸念も根強いなか、「二刀流」戦略が有効かもしれません。
図表1 主な言及銘柄 (Bloomberg銘柄名)
銘柄 | 株価(3/28) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
マクドナルド(MCD) | 275.85米ドル | 281.67米ドル | 228.34米ドル |
モンダリーズ インターナショナル(MDLZ) | 69.59米ドル | 69.75米ドル | 54.72米ドル |
プロクター & ギャンブル(PG) | 146.36米ドル | 164.90米ドル | 122.18米ドル |
キンバリー クラーク(KMB) | 131.57米ドル | 144.53米ドル | 108.74米ドル |
エヌビディア(NVDA) | 264.10米ドル | 289.46米ドル | 108.13米ドル |
アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD) | 94.56米ドル | 125.67米ドル | 54.57米ドル |
テスラ(TSLA) | 189.19米ドル | 384.29米ドル | 101.81米ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
3/10に破綻した米シリコンバレー銀行(略称SVB)に対して、米地銀のファースト・シチズンズ・バンクシェアーズ(FCNCA)が3/27に買収することで合意したことを受け、米銀行セクターをめぐる不安は大幅に緩和しました。
その間の相場動向を確認してみると(図表2)、ハイテク株が中心のナスダック100指数の上昇が目立ちます。背景には、ナスダック100指数と負の相関が強い長期金利の低下が挙げられます。SVBをはじめとする地銀3行の破綻で銀行不安が高まったことを受け、市場では米連邦準備理事会(FRB)が早期に利上げを停止する、あるいは利下げに転じるとの観測が強まりました。それを受け、米10年国債利回りはSVBが破綻した後、3/24まで急低下(4%台から3.5%を下回る水準まで低下)しました。
図表2 S&P500指数とナスダック100指数および米10年国債利回りの年初来推移
(S&P500指数とナスダック100指数は2022年12月末=100として指数化)
※Bloombergおよび各種資料によりSBI証券が作成
3/27にSVBの買い手が決まったことで銀行不安が緩和し、米10年債利回りは上昇しました。それを受け、ナスダック100指数は反落しました。一方、S&P500指数指数は小幅ながら上昇しました。銀行不安が緩和したことで、金融をはじめとする景気敏感業種が持ち直しました。
他方、業種別騰落率を確認してみると、上昇率1位はエネルギーで、上昇率2位と3位は公益事業と生活必需品となりました。エネルギーは銀行不安の緩和に加え、トルコでの供給障害を背景とした原油高が支援材料となりました。上昇率4位以下がエネルギーと同じく景気敏感株であったことを考えると、もしトルコでの供給障害がなければ、公益事業や生活必需品はエネルギーを上回るパフォーマンスになった可能性もあります。全般的に言えることは、銀行不安が緩和した足元では、ディフェンシブの公益事業と生活必需品がより選好されている模様です。
図表3 S&P500指数の業種別騰落率(3/27-3/28)
※BloombergデータをもとによりSBI証券が作成
実際、ディフェンシブ業種は、SVBの破綻で銀行不安が強まり、ナスダック100指数が大幅に上昇した場面でも、買い優勢となりました(図表4)。
図表4 S&P500指数の業種別騰落率(3/10-3/24)
上記のように、SVBが破綻してから3/28までの米国市場では、金利低下の恩恵が期待できる「ハイテク関連株」と不景気に強い「ディフェンシブ株」が同時に買われました。「二刀流」の投資戦略が有効だった局面と言えます。
ただ、3/27-3/28は長期金利の上昇でハイテク株はやや失速しました。ハイテク株はSVBが破綻した後、上昇が続いたこともあり、利益確定売りの側面もあったかと思います。今後は、米政策金利に対する見通しや10年債利回りの動向をにらみながらの展開となりそうです。
肝心の米政策金利の行方について、市場では必ずしも明確なコンセンサスが得られているわけではありません。FRBも3月に0.25%の利上げを実施しながらも、FOMCの声明文では前回の「タカ派」から「ハト派」へ傾斜しています。最終的には米インフレの動向、およびリセッション入りの確率とリセッションとなった場合の程度次第とも言えるため、今後のデータや状況を踏まえながらトレンドを確認する必要がありそうです。
一方のディフェンシブ株はSVBが破綻した後(3/27に米長期金利が上昇した後も)、買い優勢が続きました。ただ、3/28までの上昇率を比較した際、ハイテク株には劣ります。一方、過去の経験からすると、ディフェンシブ株は相対的にリセッション局面に強い傾向があります。不透明感が依然として強い相場環境を考えると、ディフェンシブ株は「二刀流」戦略の片方として取っておくこともいいかもしれません。
図表5 S&P500指数の業種別騰落率の上位業種と、各業種の上昇率上位5銘柄(3/10-3/28)
銘柄コード | 業種・銘柄名(Bloomberg) | 騰落率(3/10-3/28) |
---|---|---|
S&P500 コミュニケーション・サービス | 6.73% | |
META | メタ・プラットフォームズ | 10.45% |
GOOGL | アルファベット A | 9.43% |
NFLX | ネットフリックス | 8.64% |
MTCH | マッチ・グループ | 7.76% |
ATVI | アクティビジョン・ブリザード | 7.63% |
S&P500 情報技術 | 4.56% | |
NVDA | エヌビディア | 12.69% |
AMD | アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD) | 12.53% |
INTC | インテル | 10.78% |
ADBE | アドビ | 10.35% |
ANET | アリスタネットワークス | 9.65% |
S&P500 生活必需品 | 3.04% | |
MKC | マコーミック | 12.75% |
GIS | ゼネラル・ミルズ | 7.80% |
MDLZ | モンデリーズ・インターナショナル | 7.46% |
KMB | キンバリー・クラーク | 7.31% |
PG | プロクター・アンド・ギャンブル(P&G) | 7.17% |
S&P500 ヘルスケア | 1.90% | |
REGN | リジェネロン・ファーマシューティカルズ | 11.19% |
PODD | インシュレット | 9.95% |
VRTX | バーテックス・ファーマシューティカルズ | 9.19% |
ISRG | インテュイティブサージカル | 9.15% |
WST | ウエスト・ファーマシューティカル・サービシズ | 7.77% |
S&P500 一般消費財・サービス | 1.86% | |
TSLA | テスラ | 9.41% |
DRI | ダーデン・レストランツ | 6.78% |
CMG | チポトレ・メキシカン・グリル | 6.56% |
MCD | マクドナルド | 5.44% |
AMZN | アマゾン・ドット・コム | 5.41% |
S&P500 公益事業 | 1.43% | |
SO | サザン | 5.95% |
WEC | WECエナジー・グループ | 4.91% |
AWK | アメリカン・ウォーター・ワークス | 3.94% |
PEG | PSEG | 3.67% |
ED | コンソリデーテッド・エジソン | 3.40% |
※BloombergデータをもとによりSBI証券が作成
免責事項・注意事項
- 本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。