2023年は、中国株が好スタートを切りました。中国株にとって「卯跳ねる」一年となるか、好スタートを切った背景を確認するとともに、今年の見通しを展望してみたいと思います。
図表1 主な言及銘柄
銘柄 | 株価(1/3) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
ウィズダムツリー 中国株ニューエコノミーF(CXSE) | 35.760米ドル | 50.970米ドル | 26.310米ドル |
iシェアーズ 中国大型株 ETF(FXI) | 29.320米ドル | 39.780米ドル | 20.870米ドル |
iS MSCIチャイナ(02801) | 20.700香港ドル | 28.500香港ドル | 15.290香港ドル |
CSOPハンセンテックインデックスETF(03033) | 4.172香港ドル | 5.860香港ドル | 2.686香港ドル |
Tracker Fund香港(02800) | 20.260香港ドル | 25.160香港ドル | 14.680香港ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
中国株が2023年に好スタートを切りました。
香港市場のハンセン指数とハンセンテック指数はいずれも2022年末に200日移動平均線を突破した後、一旦調整しましたが、2023年に入ってからそれぞれ1.8%上昇、2.5%上昇(1/3まで)し、200日移動平均線上を維持しています。
図表2 米国の住宅ローン金利と米10年国債利回り
注:1/3までのチャートです。
※BloombergデータによりSBI証券が作成
米国上場の中国ADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)も、2023年に入ってから3.8%上昇(同1/3まで)しました。S&P500指数が0.4%下落、ナスダック指数が0.8%下落(同1/3まで)したこととは対照的で、米国市場でも中国株が買われた格好です。
図表3 主要株価指数の年初来騰落率(1/3まで)
※BloombergデータによりSBI証券が作成
背景には、米国のリセッション(景気後退)に対する懸念が根強い一方、中国に対しては「ゼロコロナ政策」の撤廃による景気回復への期待が高まっているからです。「ゼロコロナ政策」の撤廃に伴う新型コロナの感染拡大は懸念材料ですが、米国や欧州が経験したようにWithコロナの初期段階の混乱はいずれ落ち着く可能性が高いと考えられます。
去る2022年を振り返ってみると、中国株は2008年の世界金融危機以来の厳しい一年を経験しました。たとえば、ハンセン指数を代表例として確認してみると、2022年は10月まで下降トレンドが続きました。
バリュエーション(株価水準)と業績の両面でハンセン指数の下落要因を分析してみると(図表4)、2022年10月までの下落はPER(株価収益率)とEPS(一株当たり利益)の両方が下落要因となっています。つまり、投資家の期待を反映するPERの低下だけでなく、EPSの低下(減益予想)もハンセン指数を押し下げる要因となりました。
図表4 ハンセン指数の終値および騰落率に対するPERとEPSの寄与度(月次ベース、2020年-2022年)
※BloombergデータによりSBI証券が作成
PERの低下は、主に中国当局が経済成長よりも共同富裕や規制強化(ネット大手と不動産市場に対する締め付け)を重視したことによるものです。それに加えて、米中対立を背景とした中国ADRの上場廃止リスクの高まりも、中国株に対する投資家のセンチメントを悪化させました。
他方、EPSの低下は、中国当局が「ゼロコロナ政策」を堅持したことが大きく影響しています。たとえば、上海のロックダウンによる2022年4-6月期のGDP成長率の鈍化や企業業績の悪化がその代表例です。
2022年9月は、PERとEPSがともに大幅に低下し、10月は特にPERの低下が目立ちました。背景には、10月末の共産党全国代表大会を前に、「3期目の習政権」の発足が確実視されるなか、中国当局が経済成長よりも共同富裕や規制強化を重視し、「ゼロコロナ政策」を堅持するのではないかとの懸念がピークに達したからです。
しかし、「3期目の習政権」は大方の予想に反して、発足してすぐ「ゼロコロナ政策」を見直すと同時に、成長を重視すると表明しました。米国に対しても歩み寄る姿勢を示し、それを背景に中国ADRの上場廃止リスクも大幅に低下しました。それにより中国株に対する投資家のセンチメントは大きく回復し、ハンセン指数は2022年11月と12月にPER主導で反発しました。
2023年初の続伸は、このような2022年末の流れを引き継いだものと考えられます。つまり、足元の中国株高は依然として期待先行(PER主導)の上昇と言えます。今後、中国が確実にリオープンに向けて進んでいくのであれば、GDP成長率や企業業績の回復が予想されます。比較対象となる2022年の水準が低いことも併せて考えると、2023年の中国株はEPS主導の上昇も期待できそうです。
図表5 主要中国株ETFと組入上位銘柄
上場先 | 銘柄名 | 連動する指数 | 組入上位銘柄(1/3時点) |
---|---|---|---|
米国 | ウィズダムツリー 中国株ニューエコノミーF(CXSE) | ウィズダムツリー 中国企業(除く国有企業)指数 | アリババ(09988)、美団(03690)、中国平安保険(02318)、JDドットコム(09618)、薬明生物(02269) |
iシェアーズ 中国大型株 ETF(FXI) | FTSE中国50指数 | テンセント(00700)、アリババ(09988)、美団(03690)、JDドットコム(09618)、中国建設銀行(00939) | |
香港 | iS MSCIチャイナ(02801) | MSCI中国指数 | 快手(01024)、テンセント(00700)、美団(03690)、小米(01810)、アリババ(09988) |
CSOPハンセンテックインデックスETF(03033) | ハンセンテック指数 | テンセント(00700)、アリババ(09988)、美団(03690)、JDドットコム(09618)、中国建設銀行(00939) | |
Tracker Fund香港(02800) | ハンセン指数 | HSBC(00005)、AIA(01299)、テンセント(00700)、アリババ(09988)、美団(03690) |
※BloombergをもとにSBI証券が作成
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