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中国の不動産リスク再び、あの「恒大集団」は今どうなっているのか

2022/7/20
投資情報部 李 燕

中国の一部都市で住宅ローンの返済をボイコットする動きが広がり、中国の不動産リスクは再び警戒されました。今回はその実態と中国当局の対応を確認し、「あの恒大集団」の状況をご報告します。

図表1 主な言及銘柄

銘柄 株価(7/19) 52週高値 52週安値
iS MSCIチャイナ(02801) 22.42香港ドル 33.60香港ドル 18.36香港ドル
iS FTSE A50(02823) 15.95香港ドル 19.87香港ドル 14.02香港ドル
Tracker Fund香港(02800) 21.22香港ドル 28.30香港ドル 18.44香港ドル
iS CSI300(02846) 32.64香港ドル 41.02香港ドル 29.00香港ドル
iシェアーズ 中国大型株 ETF(FXI) 31.95米ドル 43.98米ドル 26.13米ドル
ウィズダムツリー 中国株ニューエコノミーF(CXSE) 40.29米ドル 63.02米ドル 33.47米ドル
ヴァンエック チャイネクスト ETF(CNXT) 37.98米ドル 55.52米ドル 29.78米ドル
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

1 中国の不動産リスク再び:住宅ローン返済のボイコット事件

先週、中国の一部都市で住宅ローンの返済をボイコットする動きが広がりました。中国不動産市場の調査を行う易居研究院によると、7/16までに不動産開発会社の建設が遅れていることなどを理由に、住宅購入者が銀行に提出した住宅ローン返済のボイコット告知書は中国全土で少なくとも271件に上りました。ボイコット告知書は該当する住宅プロジェクトに対し、住宅購入者が集団で提出しているため、271件はプロジェクト数に等しいとみることができます。

図表2 住宅ローン返済のボイコット告知書が出されたプロジェクト数(7/6-7/16)

※易居研究院のデータをもとにSBI証券が作成

時系列でみると、7月初めから始まった住宅ローン返済のボイコットは7/13まで急増しました。足元では減少傾向にあります。易居研究院によると、地域別では内陸部の河南省が54件、湖南省が27件、湖北省が26件と多いです。プロジェクトの所在都市は鄭州市、西安市、武漢市がトップ3となっており、ボイコット事件は主に2級都市(上海や北京などは1級都市)に集中していることが判明しました。比較的需要が堅調な1級都市に比べて2級都市の不動産市場の回復遅れが背景と考えられます。

易居研究院の試算によると(2022年1-6月の主要50都市のデータに基づく)、住宅ローンの延滞額が中国の住宅ローン全体に占める比率は約1.7%です。ブルームバーグはアナリストやエコノミストの試算として、ボイコットの対象となっている住宅ローンが中国の住宅ローン全体に占める比率は1-2%と報じています。

ボイコット事件を受け、中国工商銀行(01398)や中国建設銀行(00939)、中国農業銀行(01288)など主要上場銀行も情報開示を行いました。それによると、各社とも該当プロジェクトにかかわる住宅ローンの延滞額が住宅ローン全体に占める比率は低く(たとえば銀行最大手の中国工商銀行が0.01%)、その影響は限定的だと説明しました。

したがって、全般的にみて住宅ローンの延滞額は今のところ小さく、不動産市場や金融システムへの影響は限定的と言えそうです。

図表3 中国主要銀行の住宅ローンの延滞額が住宅ローン全体に占める比率(%)

※易居研究院のデータをもとにSBI証券が作成

なお、7/19の香港現地報道によると、格付け会社のフィッチ・レーティングスは、住宅ローン返済をボイコットする住宅購入者がさらに増えれば銀行の資産の質に影響を与える可能性がありますが、中国当局は事件の悪化を防ぐため介入するだろうとの認識を示しました。同時に、同社がカバーしている中国の銀行の格付けに対して現時点では影響がないとの見方を示しました。中国不動産市場の見通しについては、今年下期には販売が安定し(通年は前年比20-30%減)、来年は1桁台前半の伸び率に回復するだろうとしました。

2 ボイコット事件を受けた中国当局の動き

ボイコット事件の広がりを受け、中国当局は先週末、事態の悪化を防ぐため矢継ぎ早に対策に動きました。(※ブルームバーグや中国の現地報道などをもとにSBI証券が作成)

1)事件への介入・支援を示す
中国当局は金融当局や大手銀行と緊急会合を開きました。中国銀行保険監督管理委員会(銀監会)の担当責任者は「この件に関して注視している。最も重要なのは“確実に住宅を購入者に引き渡す”ことであり、これに関して我々は非常に重視する」とコメントしました。銀監会はまた、住宅都市農村建設部と中国人民銀行(中央銀行)の協働を強化し、「建物の引き渡し保証」を積極的に推し進めるために地方政府を支援すると表明しました。

2)住宅ローン返済をボイコットしている住宅購入者を救済へ
中国当局は住宅ローン返済をボイコットしている住宅購入者を対象に支払いの猶予期間を設けることを検討しています。該当者の資格や猶予期間を地方政府と銀行が決める案を策定しているようです。

3)銀行に資金繰り難に陥っている不動産開発会社への支援を要請
中国当局は銀行に対して資金繰り難に陥っている不動産開発会社への支援を要請しました。不動産開発会社の建設遅れがボイコットの直接の要因となっているため、建設再開を促すための措置と思われます。

以上の動きからすると、中国当局の介入・支援表明を受け、今後は関連部門や地方政府が具体策を打ち出すことが予想されます。既にその動きは始まっています。ボイコット事件が多かった西安市の政府は7/18に、「住宅引き渡し遅延の増加を防ぐための措置」を発表しました。

全体的にみた場合、住宅ローン延滞額の規模が比較的小さいことに加え、中国当局の介入や支援によって、ボイコット事件による不動産市場全体や金融システムへの影響は抑えられそうです。

3あの「恒大集団」は今どうなっているのか

昨年末に、中国の不動産大手である恒大集団(03333)の債務問題が表面化し、中国不動産市場のリスクが大きく警戒されました。その後、恒大集団への中国当局の介入や一連の不動産支援措置を受け、不動産市場や金融システムへの影響懸念は後退しました。

他方、一部の報道によると今回の住宅ローン返済のボイコット事件では、恒大集団が関わっている物件が3割に上ります。今回のボイコット事件は、いわば昨年末に市場を大きく震撼させた恒大問題の「余震」とも言えそうです。したがって、恒大集団が今どうなっているのか、確認しておく必要がありそうです。

「恒大集団の今」を結論から申し上げますと、「破綻しておらず、地方政府の関与のもと債務再編を進めています。債務再編案(初歩的な債務再編計画)は7月末までに公表する予定です」。債務再編案の策定と同時進行で、恒大集団は資産の売却を進めており、電気自動車(EV)販売による不動産以外の収益源の獲得も模索しています。

他方、香港の投資会社が同社子会社株の買い戻し契約不履行を理由に、同社に対する清算申立(※)を行いました。最初の審理が今年8/31になっているため、同社は7月末までに債務再編案を策定しながら初審理への準備も進めなければなりません。(※現時点でドル建て債の契約不履行に関する清算申立やその他の清算申立はありません。)

なお、住宅販売の実績に関しては中国現地報道によると、債務問題が表面化した昨年9月から今年3月までの恒大集団の月次販売額は2,000万−3,000万元にとどまりましたが、今年4月は30億元の販売額を達成しました。中国当局の支援で建設中止となっていた物件の建設が順次再開され、信用回復とともに多少なりとも販売が回復した模様です。他方、同社の負債額(およそ2兆元とされる)に比べると少額で、住宅販売の持ち直しだけで債務問題に対処するのは難しいと言えます。

今年5月のロイター通信の報道によると、恒大集団は「約190億ドル相当の外貨建て債務(海外債務全体は計227億ドルとされる)に関して、現金での分割払いと、香港市場に上場している傘下2社の株式に振り替える「債務の株式化」によって返済する経営再建案を検討」しているようです。詳細は7月末までに発表される予定の債務再編案で明らかになると思われ、当面は債務再編案が注目点となりそうです。

他方、債務問題が取りざたされてから債務再編案の公表まで時間がかかっている印象ですが、過去の中国当局の大型債務再編処理からすると、いずれも長期戦(※)となっています。恒大集団の債務規模の大きさや不動産市場に関連していることから、中国当局はより慎重になっているかもしれません。そして、今回のボイコット事件は、恒大問題の処理に向けたこれまでの不動産支援措置が、コロナ禍を考えると不十分である可能性を示しました。ボイコット事件への中国当局の動きからすると、必要があれば中国当局は一段の不動産支援措置を打ち出す可能性がありそうです。 。

(※詳細は2021年9/29付けレポート「【中国恒大の“再編シナリオ”と不動産・株式市場への影響】&中国の電力不足」をご参照願います。動画資料は「李のチャイなび!「【中国恒大集団】“再編シナリオ”と影響、中国の電力不足」2021/10/1」(YouTubeに移動します)です。)

主要中国株ETFはボイコット事件を受け、先週調整しましたが、今のところ3月中旬(中国本土の株価指数に連動するETFは4月下旬)からの上昇トレンドを維持しています。背景として、中国の経済支援措置で下期は景気回復が期待されるためです。6月の主要経済指標からも不動産を除けば、上海ロックダウンの影響を受けた4月が「景気の底」だった可能性が示されました。

図表4 中国株ETFの年初来推移(2021年12月31日=100として指数化)

※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成

図表5 恒大集団の債務問題をめぐる主な出来事

日付 恒大集団の債務問題をめぐる主な出来事 備考
2021年 秋頃 同社は資金繰り難で多くのプロジェクトが建設中止となった。住宅購入者から抗議活動が続き、不動産市場全体への波及が懸念された。 債務問題が表面化
11月6日 ル建て債の利払いが期限を迎えたが、支払いはなかったもよう。猶予期間内(12/6)に支払われなかった場合、デフォルトとなる。 ドル建て債のデフォルト・リスク高まる
12月3日 同社は海外の債権者と(ドル建て債の)再編計画について協議に入ると発表。 ドル建て債の債権者と交渉開始
12月3日 同社所在地の広東省の政府が同社のリスク管理を支援するため、作業部会を派遣すると発表。中国人民銀行や銀行保険監督管理委員会などが広東省政府への支持と協力を表明。 地方政府が債務再編に関与(中国当局主導の再編へ)
12月6日 同社は「リスク管理委員会」を設置すると発表。メンバーには広東省の政府系投資会社の幹部らが加わった。
12月6日 同社ドル建て債の保有者が、12/6の期限までに利払いを受けていないことが明らかになった。
12月9日 格付け会社のフィッチが・レーティングスが同社の格付けを「一部債務不履行(RD)」に引き下げた。 一部デフォルト
12月17日 格付け会社のS&Pグローバルが同社の格付けを「選択的債務不履行(デフォルト、SD)」に引き下げた。 選択的デフォルト
2022年 1月26日 同社は債権者向け電話会議を実施。利害関係者の利益を保護するため、自社の状況を分析したうえ、再建案を策定すると表明。今後6カ月以内(2022年7月末まで)に債務再編案(初歩的な債務再編計画)を公表する予定だと説明した。 債務再編案の公表予定日を提示
2月25日 同社は建設プロジェクトを光大信託と五鉱信託に譲渡。光大信託は中国政府系ファンドと中国財政部が100%出資しており、五鉱信託は中国国有大手の五鉱資本の傘下企業。 資産売却
3月21日 第三者保証の担保となっていた同社傘下の不動産管理会社・恒大物業(06666)の預金134億元が銀行に差し押さえられた。
3月21日 同社(03333)と恒大物業(06666)、および電気自動車(EV)子会社の恒大新能源汽車(00708)が売買停止に。 株式が売買停止に
3月22日 同社は2021年下期に経営状況に重大な変化が生じ、監査に時間がかかるため、2021年通期の業績発表を延期すると発表。 業績発表を延期
3月30日 同社は建設プロジェクトを浙江省の国有企業に譲渡すると発表。 資産売却
4月2日 同社は3月末までに中国国内の建設プロジェクトの95%が再開したと公表。 建設の再開は進んだもよう
5月26日 同社は建設プロジェクトを浙江省の国有企業に譲渡すると発表。 資産売却
6月7日 MSCIは6/8から同社を指数の構成銘柄から除外すると発表。
6月20日 香港証券取引所が株式売買の再開に必要な条件を提示。期日までに公表できなかった2021年決算を公表することなどが条件に含まれている。来年9/20までに問題を解決できなければ、香港証券取引所は上場廃止を勧告する。 上場廃止リスク
6月24日 Top shine global of intershore vonsult limited(香港の投資会社)が香港の裁判所に、同社子会社株の買い戻し契約不履行を理由に、同社に対する清算申立を行った。同社に対する清算申立は初めて。最初の審理は今年8/31の予定。 初めての清算申立
6月27日 同社は、6/24の清算申立に対して反対を表明。同申立は自社の債務再編計画やスケジュールに影響はないと説明。債権者と交渉を続けており、2022年7月末まで(予定通り)に債務再編案を公表する予定だとした。 債務再編計画やスケジュールに変更なし
7月4日 同社は会社清算の申立に反対するため、海外の債権者に支援を求めているもよう。債権者の支持を得ていることを証拠の一部として裁判所に提出する意向だ。
7月6日 同社傘下のEV子会社である恒大新能源汽車が1号車の予約販売を開始。
7月10日 同社の中国本土部門が求めていた社債早期償還の先送りを中国本土の債権者側が初めて拒否した。 元建て債にデフォルト・リスク
7月11日 同社の許家印・会長が同社および子会社の経営幹部と会議を開催。恒大新能源汽車の1号車の販売に関するもので、販売実績に沿った人事考課が示された模様。 EV販売(不動産以外)で収益源の獲得を狙う
7月末 7月末までに債務再編案を公表する予定。 予定通りに債務再編案を示せるかどうか、およびその中身が注目される
8月31日 同社に対する清算申立の裁判の初審理が行われる予定。

※会社資料、Bloombergおよびロイター通信など各種報道もとにSBI証券が作成

  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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