当社では上場初日3/29(金)から取扱いの予定です!!
〇IPOの注目点
(1)「配車サービス」で上場一番乗り。ネットサービスの新カテゴリー出現として世界的に注目を集める。
(2)米国での市場シェアを拡大して、競合のウーバーに対して消費者の支持が上がっているとされる。
(3)米国・カナダ地域での「配車サービス」に鋭く集中して、ウーバーとは異なる事業戦略。
図表1:IPOの概要
企業名(コード) |
リフト(LYFT) |
上場市場 |
NASDAQ |
---|---|---|---|
公表日 |
18年12/6(木) |
上場日(予定) |
19年3/29(金) |
公募価格(ドル) |
62.0-68.0ドル |
募集・売出し株数(百万株) |
30.77 |
公募規模(百万ドル) |
2,092 |
時価総額概算(億ドル) |
193億ドル |
- 注:公募規模は、「募集・売り出し株数×公募価格のレンジ上限」で計算しています。時価総額概算は「IPO後の発行済株式数(4.6百万株のオーバーアロットメントを含まない)×公募価格レンジ上限」で計算しています。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
- ※SBI証券では米国株式のIPOの申込み等の受付は行っておりません。当社では上場後に取扱銘柄へ追加を予定しております。
〇企業概要
カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置く配車サービスの企業です。共同創業者のローガン・グリーンとジョン・ジマーが“人の移動に革命を起こす”べく2007年に創業、2012年に現在の事業につながる配車サービス(オンデマンドのライドシェア向けピア・ツー・ピア市場)を立ち上げ、2013年に社名をLyftに変更していまに至ります。
主要な株主として、楽天の三木谷氏が13.1%、楽天ヨーロッパが13.1%、GMが7.8%、運用会社のフィデリティ関係会社が7.7%、ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツ関係会社が6.3%、アルファベット関係会社が5.3%を保有しています(IPO前)。楽天の三木谷氏は取締役会メンバーでもあります。
「配車サービス」(ライドシェア)では世界中で多くの企業が興っていますが、同社は上場第一号となります。来月には業界最大手のウーバーの上場も観測されており、「配車サービス」はネットサービスの新カテゴリーとして株式市場の注目が高まっていると見られます。
〇事業内容と業績動向
車の所有者と移動手段として車に乗りたい顧客をスマホのアプリで結びつけるサービスを提供しています。車はプロ運転手によるタクシーに加え、小遣い稼ぎをしたい一般ドライバーの車を含むサービスです。
顧客が運転手に支払う利用額(「Booking」と呼ばれます)の一部が、同社システムの利用料として売上に計上されます。18年12月期は、「顧客の利用額」が80.6億ドルに対して売上は21.8億ドルで、比率は26.8%です。
同サービスを米国の300都市、カナダの一部地域で展開、米国での人口カバー率は95%に達します。米国のライドシェアの市場シェアは2018年12月に39%で、2016年12月の22%から大幅に上昇しており、消費者の支持が強まっているとされます。
自動車の「配車サービス」が主力ですが、自転車やスクーターのシェアネットワークにも事業を広げています。また、一部の都市では近隣の公共運輸機関の情報も提供し始めており、「人の移動」を助ける総合的なサービスに進化しつつあります。
同社の業績は図表2の通り、まだ調整後EBITDA(利払い、税金、償却前利益)、純利益とも赤字です。しかし、売上は急速に拡大しつつあり、これによって利益率も改善基調にあります。
また図表3の通り、主要な営業計数は右肩上がりとなって、四半期ごとで見ても事業が順調に拡大していることがわかります。有効顧客数の増加に比べて利用回数の増加のペースが速く、リピーターが増えていることが窺えます。サービスを日常的に利用する顧客の定着が確認でき、これを背景に有効顧客当たり売上も増加が続いています。
〇業界動向
「人の移動」に関わる市場は巨大です。米国の消費者は年間1.2兆ドル(約130兆円)を人の移動(personal transportation)に費やし、家計当たりでは年間9,500ドル(約100万円)で、これを主に車の所有と維持に使っています。
この市場には車の所有から「サービスとしての移動」(Transportation-as-a-Service)への社会的な変化が起きつつあり、「配車サービス」はその中心的な動きとして大きな市場を形成すると考えられています。
「サービスとしての移動」にシフトすることで、社会には以下のような非効率の改善が期待されるとします。
・利用率の向上・・・車の利用時間は平均で5%に過ぎず、95%の時間は駐車場にとめられている。また、会社への通勤の89%は一人での利用となっている。
・非効率の改善・・・米国で駐車場のために使われている土地は5,200平方マイルを超え、コネティカット州よりも大きい。
・所得格差の縮小・・・米国での新車平均価格は3.3万ドル(約360万円)以上となって、多くの家計に手の届かないものとなっている。また、車の所有を前提とした社会は、高齢者、障害者などの移動に不便を強いる。
米国・カナダでのライドシェアの競合には、ウーバー、Gett(Juno)(イスラエルの企業)、Viaなどがあり、バイク・スクーターのシェアでは、ウーバー(Jump)、Lime、Birdなどがあります。
同社の強み(なぜ勝てるか)として、ビジョンをもつ創業者が率いること、企業文化・価値、真正なブランド、運輸への集中、ドライバー中心主義、革新的なマルチモード(車、自転車、公共交通機関を含む)のプラットフォーム、データに基づく見識、企業との提携戦略、をあげています。
〇事業戦略
「人の移動」に関する市場は上述の通り巨大であり、また、非常に複雑なために革新できることは多く、このため同社は同市場に鋭く集中(laser focus)するとしています。この点では、世界70ヵ国に事業展開し、食事の宅配や人材派遣業など「人の移動」以外にも多角化を進めるウーバーとは戦略が異なると言えるでしょう。
「配車サービス」はインターネットとアプリを使うサービスですが、利用客と運転手をつなぐために実物サービスの要素も強いと言えるでしょう。インターネットサービスの中では、ネット検索、SNS、ネット動画のように顧客とのやり取りがほぼコンピュータの中で完結するものよりは、ネット通販のように物流倉庫など実物資産が絡んでいるものに類似性があると言えそうです。
ネット通販で成功しているアマゾンは創業以来25年が経過していますが、同社のネット通販売上は、米国・カナダ、ドイツ、英国、日本の上位5ヵ国の売上が9割を占めて、必ずしも広く世界に事業展開しているわけではありません。
これはネット通販には各地に物流倉庫が必要なため、短時間に世界を制することが難しいことが背景にあると考えられます。リフトとウーバー、どちらの戦略に優位性があるか考えるために、参考になるケースと言えるのではないでしょうか。
〇類似会社比較
「配車サービス」として世界初の上場で、ビジネスに新規性があり、業界としては黎明期にあるため、既存の上場企業で参考にできるものは比較的少ないと見られます。
ビジネスモデルとしては、(1)インターネットを利用するサービスであること、(2)プラットフォームの利用料が売上になること、(3)実物を動かすこと、からモール型のeコマースに近く、大株主の楽天の本業がまさに近いと言えるでしょう。また、メルカリ(4385)、アリババグループのモール事業、イーベイ(EBAY)などにも類似性があります。
モール型のeコマースは顧客の指導やカスタマイズなどに手間がかかりますが、「配車サービス」にはそのような手間がないと見られ、各地域でシェアをとれれば比較的高い利益率が期待できそうです。一方、サービスの差別化は難しく、競争は激化しやすい面もありそうです。
株価評価は、純利益、EBITDA(利払い、税金、償却前利益)ともまだ赤字のため、PSR(株価÷1株当たり売上)を中心に行われるとみられます。
ここではご参考に世界の「配車サービス」大手の比較を掲載しています(図表4)。ウーバーが世界最大で、中国の滴滴出行(ディディチューシン)が2番手、リフトは3番目の大手企業と見られます。
株主を見ると、リフトは楽天が大株主であるのに対してその他大手はいずれもソフトバンクグループが筆頭株主となっています。資金の出し手としては、日本企業が深く関わっていることが分かり、非常に興味深いと言えるでしょう。
図表2:業績推移
16年12月期 |
17年12月期 |
18年12月期 |
|
---|---|---|---|
売上(百万ドル) |
343 |
1,060 |
2,157 |
純利益(百万ドル) |
-682 |
-688 |
-911 |
EPS(ドル) |
-37.1 |
-35.5 |
-43.0 |
顧客の利用額(百万ドル) |
1,904 |
4,587 |
8,055 |
売上/顧客の利用額 |
18.0% |
23.1% |
26.8% |
コントリビューション |
82.0 |
400.9 |
920.8 |
コントリビューションマージン |
23.9% |
37.8% |
42.7% |
調整後EBITDA |
-665.5 |
-696.1 |
-943.5 |
調整後EBITDAマージン |
-193.9% |
-65.7% |
-43.7% |
- 注:「顧客の利用額」からは、サービスを利用した顧客が支払った額ですが、航空利用税や運転手へのチップなどは除かれています。「コントリビューション」は、同社の経営陣が営業パフォーマンスを測るために導入している指標で、粗利益から無形資産の償却額、株式報酬、過去期に関係する保険積立額の変動などを差し引いたものとして定義しています。「EBITDA」は、利払い、税金、償却前利益です。
- ※会社資料をもとにSBI証券が作成
図表3:リフトの主要な営業計数
- ※会社資料をもとにSBI証券が作成
図表4:類似会社比較
- ※会社資料、各種報道をもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。