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米国で「ネットワークの中立性」が撤廃!?考えられるインパクトは?

2017/12/13
投資調査部 榮 聡

米国の連邦通信委員会(FCC)は、12/14(木)に「ネットワークの中立性」の規制を撤廃する見通しです。これが施行されると、通信サービスを提供する企業にはポジティブとなる一方、インターネットを通じて動画コンテンツを提供する企業にはマイナスの影響が出る可能性があります。どのような企業にどのような影響が出る可能性があるのか、確認しておきましょう。

図表1:注目銘柄リスト

銘柄 株価(12/12) 52週高値 52週安値
AT&T(T) 38.10ドル 43.03ドル 32.55ドル
ベライゾン コミュニケーションズ(VZ) 53.19ドル 54.83ドル 42.80ドル
コムキャスト A(CMCSA) 39.51ドル 42.18ドル 34.12ドル
チャーター コミュニケーションズ A(CHTR) 329.99ドル 408.83ドル 275.34ドル
センチュリーリンク(CTL) 15.70ドル 27.61ドル 13.16ドル
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
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「ネットワークの中立性」が撤廃!?

米国の連邦通信委員会(FCC)は、米国の通信業界を監督する機関で、事業免許を交付したり、ソフトバンクによるスプリント買収を承認したりする、強力な政府機関です。

そのFCCが12/14(木)に「ネットワークの中立性」の規制を撤廃する見通しで、市場の注目を集めています。委員長のアジット・パイ氏は規制撤廃の考え方について、11/21(火)のリリースで以下のように述べています。

「インターネットは、約20年にわたってクリントン大統領と共和党議会が制定した軽いタッチの規制の下で繁栄してきた。この超党派の枠組みは、全米の通信ネットワーク建設に民間部門から1.5兆ドルの投資を促し、これによって世界が羨むインターネット経済をもたらした。」

「しかし、2015年に前FCCはオバマ大統領の圧力に屈し、党派色の強い投票によって、インターネットに対して厳しい、公益事業スタイルの規制を課した。この決定は間違いである。これによって、ブロードバンドネットワークを建設し拡張する投資が抑制され、イノベーションが妨げられた。」

「本日私は、間違ったアプローチを廃止して、何十年も消費者に役立ってきたコンセンサスに立ち戻るための規定の草案を同僚委員と共有した。私の提案の下では、連邦政府はインターネットを細々と管理することを止める。その代りに、FCCがインターネット・サービス・プロバイダーに要求するのは、消費者が自身に最も合ったサービスプランを購入でき、起業家やその他の小事業者が革新に必要な技術情報を入手できるような、透明な業務手続のみになる。」

つまり、インターネットへの接続サービスを提供するインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)を公益事業のように扱う規制によって、ネットワーク構築の投資が阻害されたり、イノベーションが停滞する弊害が出ているので、これを廃止して、ISPの経営の自由を取り戻すべきだとしています。

これに対してネット企業は一斉に反対を表明、米国民にも反対するよう呼び掛けています。現在、パブリック・コメントの受付が進行中で、FCCのWEBサイトには過去30日間に100万件以上のコメントがファイルされ、同決議の潜在的なインパクトの大きさが窺えます。しかし、5名のFCC委員のうち委員長を含む3名は共和党寄りで、既に規制撤廃への賛意を表明していることから、決定は確実とみられます。

インターネットに対する米政府の関与に関して、大きな転換点となる可能性があるため、注意してみていく必要があると考えられます。

尚、ブルームバーグの法務アナリストによると、新しい規則が成立する場合、60日以内に連邦官報に掲載されて、施行となる見込みです。一方、連邦巡回裁判所に控訴される可能性が高く、裁判は少なくとも2019年までは続くだろうとしています。

図表2:「インターネットの中立性」撤廃で注目の主な関係企業

  • ※各種報道をもとにSBI証券が作成
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考えられるインパクトとは?

「ネットワークの中立性」の規制撤廃が決まった場合に、具体的にどのような影響が出るかはまだ推測の域を出ません。

連邦通信委員会(FCC)委員長の意向から汲み取ると、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)事業を営む通信サービス企業やケーブルTV企業は、経営の自由度が高まり、ネットワーク拡充の投資に乗り出せるよう収益が改善すると期待されます。

市場で言われているのは、(1)インターネットTVなどネットワークに負担がかかるトラフィックに対して、追加の料金を請求することができる可能性がある、(2)通信サービス企業が自身でコンテンツサービス事業を行っている場合には、他社のコンテンツに対して自社コンテンツのトラフィックを優先するようなことが可能となるかもしれない、といったことです。

一方、ネガティブな影響が懸念されるのは、インターネットを通じて消費者に動画コンテンツを提供している企業で、ネットフリックス(NFLX)アルファベット A(GOOGL)フェイスブック A(FB)などへの影響が懸念されます。図表3は、やや古いデータになりますが、ネットフリックスが決算リリースに掲載した15年の米国のネットトラフィックのシェアです。

特にトラフィックが大きいのは、インターネットTVでトップを走るネットフリックスです。これまでは、他社によるネットワーク投資に乗って事業を展開し、コンテンツへの投資に集中していれば良かったわけですが、ルール改変によってネットワーク投資の負担を求められる可能性もありそうです。

同社のサービスは競争力が高いとみられ、仮に負担を求められても消費者に転嫁できそうですが、サービス料金引き上げによって成長見通しが従来予想よりも引き下げられる可能性がありそうです。

また、アルファベットが運営する「YouTube」もトラフィックが大きいことがわかります。同社の主な売上は広告収入から成りますが、「Google」の検索連動広告と「YouTube」のディスプレイ広告の内訳は開示されていません。依然として検索連動広告が主力と考えられますが、ここ数年広告収入の伸びは「YouTube」が牽引しているため、ある程度の影響が出ると考えられます。

フェイスブックは図表3では、トラフィックのシェアは大きくありません。しかし、この後に「Facebook」で動画の取り扱い始め、同事業は順調に拡大しました。このため、現在ではトラフィックはかなり大きくなっているとみられ、同社も影響を受ける可能性があります。

このような影響は、関係企業の株価にも現れてきています。図表4はこの問題の関係企業の株価騰落率を、規制撤廃の方針が発表される前日の11/20(月)から12/11(月)について計算したものです。

電話会社については、大手のAT&Tとベライゾンコミュニケーションズは株価が上昇していて、規制緩和の恩恵を織り込む動きがみられます。Tモバイルとスプリントは固定回線のブロードバンド契約は少なく、当面、さほど大きな恩恵はないかもしれません。スプリントは、Tモバイルとの経営統合見送りや経営幹部の辞任などが株価下落に効いているとみられます。

ケーブルTVも、3銘柄のうち、2銘柄が市場平均を上回る上昇です。チャーターコミュニケーションズも恩恵を受けるとみられますが、バークシャーハサウェイによる売却継続が影響しているかもしれません。

インターネット企業については、ネットフリックスには悪影響を織り込む動きがあるようです。アルファベット、フェイスブックも市場平均を下回り、やや気にされている可能性があるでしょう。アマゾンドットコムについては、インターネットTV事業はプライム会員の特典として展開していることに加え、年末商戦が好調であることのほうが株価へのインパクトは大きいためとみられます。

図表3:米国のネットトラフィックシェア(15年)

  • ※ネットフリックスの決算リリース(16年1月)よりSBI証券が作成。

図表4:11/20(月)〜12/11(月)の株価の動き

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
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恩恵が期待されるISP事業を営む企業

「ネットワークの中立性」撤廃で恩恵を受けると期待される、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)事業を営む電話大手2社とケーブルTV大手3社をご紹介しましょう。

図表5はこれら企業の売上とEBITDA(利払い、税金、償却前利益)の推移を示しています。

電話大手のAT&Tとベライゾンコミュニケーションズの16年実績、17年予想、18年予想を見ると、売上は横ばい圏の範囲です。EBITDAは増加が見込まれているものの、売上が伸びない中で利益を伸ばすためにコスト削減が行われるとみられ、継続性という意味では疑問があるでしょう。

このような低調な業績見通しでは、積極的なネットワーク拡充投資が行われないだろうことをFCCは問題にしているようです。ネットワークへの投資が進むためには、通信サービス企業の業績見通しが改善する必要があり、そのためには「ネットワークの中立性」の規制が障害になっていると考えているようです。

また、ケーブルTV大手については、ネットフリックスなどインターネットTVの人気により、「コードカッティング」と言われるケーブルTVの契約が解約されることが増えて業績は厳しいものとなっています。チャーターコミュニケーションズの業績が伸びているのは買収によるものです。

唯一継続的に業績を伸ばしているのはコムキャストですが、同社はメディア事業がうまくいっているほか、ケーブルTVでもシェアを拡大することができています。ただ、同社も7-9月期のビデオ契約数は減少に転じて、業績の伸びにやや陰りが見えています。

監督官庁の規制方針の変更により、このような厳しい状況が今後変化する可能性があるため、注目できるでしょう。各社の事業構成とブロードバンド契約の状況についてご紹介いたします。

AT&T(T)
米国で最大の電話会社です。16年12月期売上は、ビジネス・ソリューションが44%、エンタテイメント&インターネット・サービスが32%、コンシューマー・モビリティが20%、インターナショナルが5%で、今回のトピックスに関係が深いのは、エンターテイメント&インターネット・サービスの部分です。ブロードバンド契約者数は14.2百万人に達します。

ベライゾン コミュニケーションズ(VZ)
米国でAT&Tに次ぐ売上規模の電話会社です。16年12月期売上は、ワイヤレスが74%、ワイヤラインが26%を占め、ワイヤラインのうち16%ポイントが今回のトピックスに関係が深い消費者向けを中心とした事業です。固定のブロードバンド契約数は7.0百万件を保有します。

コムキャスト A(CMCSA)
米国の大手メディア企業です。16年12月期売上は、ケーブルが62%、NBCユニバーサルが39%を占め、ケーブルのうち、28%ポイントがビデオ、17%ポイントがハイ・スピード・インターネットです。ハイ・スピード・インターネット契約数は、16年末に24.7百万で、カバーする世帯のシェアは44%に達しています。今回のトピックスに最も関連度合が高い企業の一つと言えそうです。尚、NBCユニバーサルは、テレビ番組の制作、ユニバーサル映画、テーマパークなどの事業から成ります。

チャーター コミュニケーションズ A(CHTR)
ケーブルテレビの大手です。16年5月にケーブルTVのタイム・ワーナー・ケーブルとブライト・ハウスを買収して、ケーブルTV事業では、コムキャストと並ぶ大手になっています。16年12月期売上は、ビデオ41%、ハイ・スピード・インターネット32%、コマーシャル14%、テレフォン7%、広告売上ほか6%で、16年末のインターネット契約数は21.4百万件です。

センチュリーリンク(CTL)
ケーブルTV大手の一角です。16年12月期売上は、ビジネス向けが64%、消費者向けが36%を占めます。ハイ・スピード・インターネット契約数は、16年末に5.9百万件です。契約数の減少傾向が続いて業績は低調となっており、これを打破するため17年11月に総合通信サービス企業のレベル3コミュニケーションの買収しています。尚、12/11(月)に株価が8%上昇しているのは、ペンシルバニア州と締結したデータネットワーク製品およびサービス提供に関する5年間の契約を好感したものです。

図表5:通信サービス企業の業績推移

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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  • 本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客様が損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
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