今回は過去数年で日本でも注目された外国株のIPO銘柄について、上場後の株価の推移と今後の見通しについて考えてみました。スナップ(SNAP)、LINE(LN)、フェラーリ(RACE)、アリババ グループ(BABA)、ツイッター(TWTR)を取り上げています。
図表1:当レポートで言及した銘柄
銘柄 | 株価(9/19) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
スナップ(SNAP) | 14.72ドル | 29.44ドル | 11.28ドル |
LINE(LN) | 35.22ドル | 51.48ドル | 30.90ドル |
フェラーリ(RACE) | 113.49ドル | 118.10ドル | 47.26ドル |
アリババ グループ(BABA) | 180.07ドル | 180.87ドル | 86.01ドル |
ツイッター(TWTR) | 17.76ドル | 25.25ドル | 14.12ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
注目IPO銘柄のパフォーマンスはまちまち |
今回は過去5年の外国株のIPO銘柄から、これまで当社でご案内して市場でも注目を集めたものについて、上場後の株価の推移を振り返ってみました。図表2には、取り上げた銘柄の公募価格、上場来高値、上場来安値、現在値を並べています。
公募価格に対する現在値の騰落率(図表の右端)を見ると、アリババグループとフェラーリが大幅な上昇となっている一方、ツイッター、スナップは公募価格を下回って不振で、2勝2敗1分けといったところでしょうか。
また、公募価格と上場来安値を比較すると、大幅な上昇となっているアリババグループ、フェラーリのケースでも、一度は公募価格を割り込んでいることが確認できます。上場直後に市場の注目が高まっている時は避けて、じっくり買うチャンスを待つというのも手でしょう。
ただ、公募価格を割り込む度合い、その時期についてはまちまちで、その後長らく停滞してしまうものもあります。IPO銘柄への投資に際して、「単純なルール」というのは難しそうです。
やはり、中長期のファンダメンタルズを見据えて良好と考えられるものについて、時間分散で投資していくというのが基本と言えそうです。
(2)では、今回取り上げた個々の銘柄について、検討しています。
図表2:注目IPO銘柄の上場後の株価の動き
銘柄(コード) |
上場日 |
公募 |
上場来 |
上場来 |
上場来 |
上場来 |
現在値 |
公募価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
スナップ(SNAP) |
17/03/02 |
17.00 |
29.44 |
17/03/03 |
11.28 |
17/08/14 |
14.92 |
-12.2% |
LINE(LN) |
16/07/14 |
32.84 |
51.46 |
16/09/28 |
30.92 |
17/02/21 |
35.43 |
7.9% |
フェラーリ(RACE) |
15/10/21 |
52.00 |
118.10 |
17/09/06 |
31.67 |
16/02/11 |
112.33 |
116.0% |
アリババ グループ(BABA) |
14/09/19 |
68.00 |
180.29 |
17/09/18 |
60.25 |
15/09/08 |
179.98 |
164.7% |
ツイッター(TWTR) |
13/11/06 |
26.00 |
74.73 |
13/12/26 |
13.73 |
16/05/24 |
17.60 |
-32.3% |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
注目IPO銘柄のその後を追跡 |
- ※当社のWEBサイトを通じてSBI証券が作成
・同社は写真共有アプリの「Snapchat」を主力事業とする企業で、17年3月2日に公募価格17.00ドルで新規上場しました。上場2日目に高値となる29.44ドルを付けた後は、下落トレンドが続きましたが、足もとではやや落ち着きを取り戻しつつあると見られます。
・公募価格のバリュエーション(PSR:株価売上高倍率による)は、フェイスブックと同程度の水準でしたが、創業5年後の収益性がフェイスブックに比べて低い点や、足もとでユーザー数の伸びが鈍化しているなどの懸念点を抱えての船出でした(詳しくは、17年3月1日掲載の「消滅系メッセンジャーアプリ「スナップチャット」が新規上場へ!」をご参照ください)。その後、やはりその懸念点が要因となって株価を抑えたと見られます。また、同社サービスの特徴であった送付した写真が数秒で消えるなどの機能をフェイスブックが同社傘下の「インスタグラム」で取り入れるなど、競合の激化も懸念されました。
・一方、米国の若者に人気がある点は同社の強みとして残っているほか、広告宣伝による収益化の余地も大きいと見られることから、今後に注目できるでしょう。現在は盤石な株価上昇トレンドを描くフェイスブックも、12年5月3日に公募価格38.00ドルで上場後、12年9月4日には17.55ドルの安値を付けたという例もあります。
- ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成
- ※当社のWEBサイトを通じてSBI証券が作成
・同社はメッセージアプリの「LINE」を主力事業とする企業で、16年7月14日に公募価格32.84ドルで新規上場しました。一時50ドル超まで上昇したものの、その後5ヵ月に渡って反落、30ドル台の安値を付けた後、35ドルを中心としたレンジでのもみ合いが続いています。
・当初の株価上昇は、国際展開に対する市場の過度な期待が要因と見られます。しかし、フェイスブックが牛耳るグローバル市場で勝負するのは得策ではないと考えられます。圧倒的な浸透度を誇る日本と普及の手掛かりがある一部のアジア諸国を中心に手堅く事業展開をしたほうが良いとの見方が広がるにつれて株価評価は落ち着きつつあると見られます。
・同社は決済、eコマース、デリバリーなどへ進出してきましたが、日本でのLINEの普及を手掛かりに展開できる事業はまだまだあると見られます。同社の事業展開力が試されるのはこれからと考えられ、引き続き注目できるでしょう。
- ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成
- ※当社のWEBサイトを通じてSBI証券が作成
・同社はイタリアの高級スポーツカーメーカーで、15年10月21日に公募価格52.00ドルで新規上場しました。上場直後から株価は下落基調となって、16年2月11日に31.67ドルの安値を付けましたが、当初の株価下落は、(1)最初の四半期決算が冴えなかったこと、(2)16年2月に大株主による追加の売り出しが予定されていたこと、(3)バリュエーションに関して市場のコンセンサスがとれていなかったこと、が要因と考えられます。
・(3)については、自動車メーカーとして評価するか、ラグジュアリーグッズメーカーとして評価するかで付与されるPERに大差があり、当初は市場の見解が分かれていたと見られます。米国の投資家が欧州が本場のラグジュアリーグッズのバリュエーションに慣れていなかったことも要因と考えられます。この点については、15年10月20日掲載の「フェラーリ(RACE/NY証券取引所)上場特集 あのフェラーリが上場!!フェラーリの株主になるチャンス!!」をご参照ください。
・自動車の販売台数は1ケタ台半ばの伸びですが、高額車の販売増と拡販戦略を進めるマセラティへのエンジン供給が牽引して、業績は順調に拡大しています。18年初の中期計画で明らかとなる見込みのSUV進出やユーロ高関連としても注目されているようです。一方、バリュエーションは、18年12月期のコンセンサス予想EPS2.95ユーロ、ドル換算で3.53ドルに対して33倍まで評価されている計算で、株価評価はかなり進んだ状態にあると言えるでしょう。
- ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成
- ※当社のWEBサイトを通じてSBI証券が作成
・同社は中国のeコマースを主力とする企業で、14年9月19日に公募価格68.00ドルで新規上場しました。15年から16年初にかけては、市場の中国経済全般に対する懸念を受けて、一時公募価格を割り込むなど、やや停滞感のある推移となっていました。しかし、その間も業績は順調に伸び続けたことから、株価は上昇基調に転じました。今年に入ってからは、米国市場でのネット株の上昇が刺激材料となったことに加え、6月上旬のインベスターデーで公表した会社の売上見通しが市場予想を大きく上回ったことから、株価上昇に拍車がかかりました。
・中国企業ながら米国市場での単独上場で、かつては機関投資家にとって中途半端なポジションにある銘柄でした。しかし、世界の時価総額上位10社にラインクインしたことから、誰もが無視できない存在になったと考えられます。主力のeコマースに加え、クラウドサービス、インターネットTV事業の伸びが期待されます。また、豊富な資金力を背景に中国の有望ベンチャーへの出資を進めていることから、続きの成長のタネ播きも抜かりありません。
・一方、このところの株価上昇によって、予想PERは18年3月期のコンセンサス予想EPSの32.30人民元、ドル換算の4.91ドルに対して37倍まで上昇してきました。18年12月期の売上成長率が32%と見込まれていることを考慮しても、ひところ目立っていたバリュエーションの割安感はかなり解消したと言えそうです。
- ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成
- ※当社のWEBサイトを通じてSBI証券が作成
・同社は短文投稿サービスの「Twitter」を運営する企業で、13年11月6日に公募価格26.00ドルで新規上場しました。公募価格に対して大幅に高い初値で寄り付いた後も上昇を続け、公募価格の3倍近い74ドル台の高値を付けました。しかし、その後利用者の伸びが鈍化したことから、2年以上にわたり相場下落が続いた後、16年からは15ドル〜20ドルを中心としたもみ合いに移行しています。
・上場当時、月間ユーザー数の前年比の伸び率は30%超でしたが、15年に入って一桁台に急減速したことから、株価もこれに沿って下落しました。16年1-3月期に伸び率は3%まで低下しましたが、その後は16年10-12月期5%、17年1-3月期6%、17年4-6月期5%とやや回復していることを受けて株価もレンジでのもみ合いに転じています。
・17年12月期、18年12月期は売上高が停滞する中、主に役職員に対する株式報酬の削減など費用抑制によって黒字化が見込まれていますが、18年12月期の予想EPSは0.34ドルで予想PERは50倍を超えています。株価がレンジを上抜けるためには、収益化の進展による売上高の増加が必須と考えられるでしょう。
- ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。