9月の米FOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げが見送られ、新興国株式への物色を後押しする要因になりそうです。8/31掲載の前回レポートでは、新興国株式に注目する理由として、(1)新興国経済改善の可能性、(2)先進国株式に対するPERの割安感をあげましたが、ここに(3)米国の「低成長・低金利の延長」の可能性が新たに加わったと言えるでしょう。そこで今回は、新興国の中でも比較的安定した高成長を実現している東南アジア市場の主力銘柄をご紹介いたします。「アジアの成長の時代」を体現する銘柄として注目できるでしょう。
図表1:注目銘柄リスト
銘柄 | 市場 | 株価 (9/27) | 52週高値 | 52週安値 |
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ビナミルク(ベトナム乳業)(VNM) | ベトナム | 140,000ドン | 156,000ドン | 82,917ドン |
コテコン建設(CTD) | ベトナム | 252,000ドン | 272,000ドン | 96,000ドン |
インドフード CBPサクセス マクムール(ICBP) | インドネシア | 9,300ルピア | 10,275ルピア | 5,450ルピア |
カルベ ファルマ(KLBF) | インドネシア | 1,730ルピア | 1,815ルピア | 1,135ルピア |
CPオール(CPALL) | タイ | 61.50バーツ | 62.75バーツ | 39.00バーツ |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
米国の「低成長・低金利の延長」は新興国株式を後押し |
9/20〜9/21開催のFOMC(米連邦準備制度理事会)で政策金利の引き上げは見送られ、世界的に株式へのポジティブ材料となりました。中でも、新興国株式には恩恵が大きいと考えられます。
8/31掲載の外国株特集レポート「注目高まる新興国株式、米利上げも克服へ!?」では、新興国株式に注目する理由として、(1)新興国経済改善の可能性、(2)先進国株式に対するPERの割安感をあげましたが、ここに(3)米国の「低成長・低金利の延長」の可能性が新たに加わったと言えるのではないでしょうか。
イエレンFRB議長はFOMC後の会見で年内の利上げに意欲を見せましたが、FRB(米連邦準備制度理事会)のGDP成長率・政策金利見通しが再度下方修正されていることが明らかとなったためです(図表2)。
新興国資産に投資する際のリスクの一つは、米国経済の強さとドル高によって資金が新興国から流出してしまうことです。しかし、「米国経済が低成長ながら改善傾向にはあり、リセッションに陥るリスクは小さい」という状況は、新興国資産への投資にちょうど良い状況と言えるでしょう。
実際、新興国株式のパフォーマンスも堅調です。図表3は新興国株式と先進国株式のパフォーマンスを比べたものですが、11年以降安定して先進国株式に劣後していた新興国株式が、16年に入って優位に転じています。上記を背景に、この傾向が継続する可能性が高そうです。
図表2:FRBによる米国のGDP成長率、政策金利見通しは再度下方修正
- 注:成長率、政策金利とも予想レンジの中央値によります。
※FRB資料をもとにSBI証券が作成
図表3:新興国株式優位のトレンド継続が期待される!?
- 注:「新興国株価指数÷先進国株価指数」を計算して、11年初を100として指数化した相対株価です。先進国株価指数はMSCIの先進国株価指数(MXWO)、新興国株価指数は、MSCIの新興国株価指数(MXEF)によります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
安定した高成長を維持する東南アジア |
新興国への株式投資を考える材料として、図表4で主要な新興国および地域の実質GDP成長率を比較しています。
インドは高水準の成長に加え、成長率の加速が見込まれており、株式の投資先として注目できるでしょう。当社ではインド個別株式を取り扱っていませんが、ETF(上場投資信託)などでの投資が可能です。
一方、中国は成長率の水準が高いものの、安定的に減速している点が株式市場での評価が安定しない理由と考えられます。
ロシアは輸出の7割を占める原油の価格が今年2月を底に反発基調となり、マイナス幅を縮小して改善しつつあります。ブラジルにはまだ経済改善の兆しは見られていないものの、経済改革の行方には注目できるでしょう。
東南アジアの「アセアン5」は、インド、中国ほど成長率は高くないものの、安定した推移に魅力があると言えるでしょう。15年末のアセアン経済共同体の始動により成長率を支える効果が期待できること、隣接する中国経済に鈍化スピードが低下する兆しが見られることなど、下ブレのリスクは低下しつつあると見られます。
東南アジアは株価も好調です(図表5)。特に、フィリピン、ベトナム、タイ、インドネシアの年初来上昇率はグローバルに見ても高い部類に属します。
昨年まで米国の利上げ開始が意識されて下落基調となっていましたが、昨年12月の利上げが悪材料の出尽くしとなって株価は回復しつつあるとみられます。このトレンドの継続が期待できるでしょう。
図表4:安定して比較的高水準の成長を維持する「アセアン5」
- 注:実質GDP成長率です。16年予想はIMFによります。「アセアン5」は、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシアからなります。
※IMFデータをともにSBI証券が作成
図表5:ベトナム、インドネシア、タイ、フィリピンの株価が好調
- 注:株価指数は、ベトナム:ベトナムVN指数、 インドネシア:ジャカルタ総合指数、 シンガポール:ST指数 、タイ:SET指数、マレーシア: FTSEブルサマレーシアKLCIインデックス、フィリピン: フィリピン総合指数によります。
※BloombergデータをともにSBI証券が作成
東南アジアを代表する企業群をご紹介 |
東南アジアへの株式投資を考えるにあたり、代表的な企業をご紹介いたします。
まず、当社で個別銘柄の取り扱いのあるインドネシア、タイ、ベトナム、マレーシア、シンガポール市場の約500銘柄について、以下の条件でスクリーニングを行いました。
(1)各国市場の時価総額上位15銘柄である
(2)今期の売上・EPSともに5%以上の増加見通しである
(3)前期のROE(株主資本利益率)が10%以上である
図表5に抽出された17銘柄から、業績動向やバリュエーションなどを勘案してビナミルク(ベトナム乳業)(VNM)、コテコン建設(CTD)、インドフード CBPサクセス マクムール(ICBP)、カルベ ファルマ(KLBF)、CPオール(CPALL)の5銘柄を選んでご紹介いたします。
尚、ベトナム、インドネシアの個別株式については、以下もご参照ください。
図表6:東南アジア市場を代表する銘柄群
銘柄 | 事業内容 | 国 | ティッカー | 今期 増収率 (%) |
今期EPS 増加率 (%) |
ROE (%) |
予想PER (倍) |
時価総額 (億円) |
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テレコムニカシ インドネシア | 通信サービス | インドネシア | TLKM | 13.4 | 21.5 | 24.7 | 22.1 | 32,866 |
バンク セントラル アジア | 商業銀行 | インドネシア | BBCA | 8.7 | 9.1 | 20.6 | 19.3 | 29,103 |
ユニリーバ インドネシア | 一般消費財メーカー | インドネシア | UNVR | 11.1 | 10.7 | 132.4 | 52.8 | 26,316 |
インドフードCBPサクセス マクムール | 食品加工 | インドネシア | ICBP | 12.4 | 19.2 | 21.6 | 30.5 | 8,385 |
バンクネガラインドネシア | 国有銀行 | インドネシア | BBNI | 11.6 | 15.0 | 15.7 | 9.9 | 7,923 |
カルベ ファルマ | 医薬品メーカー | インドネシア | KLBF | 9.7 | 13.2 | 20.6 | 35.4 | 6,182 |
インドフード サクセス マクムール | インスタント麺などの食品メーカー | インドネシア | INDF | 8.8 | 33.7 | 13.1 | 19.4 | 5,908 |
CPオール | コンビニエンスストア運営 | タイ | CPALL | 11.4 | 20.5 | 45.7 | 33.6 | 16,026 |
バンコク ドゥシット メディカル サービス | 大手私立病院グループ | タイ | BDMS | 10.4 | 9.8 | 16.3 | 39.6 | 9,976 |
アユタヤ銀行 | 商業銀行 | タイ | BAY | 8.5 | 11.4 | 10.7 | 13.0 | 7,842 |
セントラル パタナ | ショッピングセンター開発 | タイ | CPN | 15.8 | 16.3 | 18.7 | 28.5 | 7,583 |
チャルーン ポーカパン フーズ | 食品コングロマリット | タイ | CPF | 9.5 | 113.4 | 10.7 | 18.8 | 7,131 |
ビナミルク(ベトナム乳業) | 食品・乳製品メーカー | ベトナム | VNM | 16.0 | 27.6 | 37.1 | 22.7 | 9,203 |
マサングループ | 食品・飲料、金融、資源などの多角経営企業 | ベトナム | MSN | 37.8 | 56.6 | 13.8 | 23.0 | 2,411 |
ホアファット グループ | 鉄鋼、冷蔵庫などを製造するメーカー | ベトナム | HPG | 14.5 | 43.7 | 30.4 | 7.7 | 1,741 |
コテック建設 | 住宅、商業施設、リゾートの建設 | ベトナム | CTD | 49.7 | 30.6 | 34.2 | 12.8 | 545 |
IOI コーポレーション | プランテーションを主とするコングロマリット | マレーシア | IOIB | 9.4 | 77.0 | 11.4 | 25.3 | 6,851 |
- 注:時価総額は、9/26(月)の現地通貨建ての値を同日の為替レートで円換算しています。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
市場:ベトナム |
業種:食品・飲料 |
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決算期 |
売上高(億ドン) |
(前年比) |
純利益(億ドン) |
(前年比) |
EPS(ドン) |
16.12予 |
464,801 |
16% |
94,655 |
35% |
6,214 |
17.12予 |
534,345 |
15% |
105,057 |
11% |
6,903 |
株価(9/27):140,300ドン |
予想PER(16.12期):22.5倍 |
||||
|
市場:ベトナム |
業種:建設 |
||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億ドン) |
(前年比) |
純利益(億ドン) |
(前年比) |
EPS(ドン) |
16.12予 |
204,679 |
50% |
10,497 |
66% |
18,365 |
17.12予 |
247,627 |
21% |
12,919 |
23% |
17,548 |
株価(9/27):252,000ドン |
予想PER(16.12期):13.7倍 |
||||
|
市場:インドネシア |
業種:食品 |
||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(10億ルピア) |
(前年比) |
純利益(10億ルピア) |
(前年比) |
EPS(ルピア) |
16.12予 |
35,674 |
12% |
3,580 |
19% |
306 |
17.12予 |
39,687 |
11% |
4,014 |
12% |
345 |
株価(9/27):9,300ルピア |
予想PER(16.12期):30.4倍 |
||||
|
市場:インドネシア |
業種:医薬品・食品 |
||||
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決算期 |
売上高(10億ルピア) |
(前年比) |
純利益(10億ルピア) |
(前年比) |
EPS(ルピア) |
16.12予 |
19,621 |
10% |
2,267 |
13% |
48.3 |
17.12予 |
21,763 |
11% |
2,564 |
13% |
54.9 |
株価(9/27):1,730ルピア |
予想PER(16.12期):35.8倍 |
||||
|
市場:タイ |
業種:小売 |
||||
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決算期 |
売上高(億バーツ) |
(前年比) |
純利益(億バーツ) |
(前年比) |
EPS(バーツ) |
16.12予 |
4,365 |
22% |
165 |
62% |
1.83 |
17.12予 |
4,801 |
10% |
196 |
19% |
2.17 |
株価(9/27):61.50バーツ |
予想PER(16.12期):33.6倍 |
||||
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- ※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。