図:原油価格下落と連動するロシア株式
図:急落したロシア・ルーブル
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
ロシア株および通貨が大きく下落、その理由は?
ロシアの株式・通貨が波乱となっています。ドル建ての株式指数である「ロシアRTS指数」は、12月に入って下げを加速し、16日現在での下落率は、前月末比35%に達しています。同様に、ロシアの通貨である「ルーブル」も急落しています。ドルに対する下落率は、6月末以降の半年弱で約5割、前月末比で約3割に達しています。
ロシア株・通貨が大きく下げている理由は、原油価格が下げていることが大きな理由です。ご存知の通り、ロシアの輸出の7割は原油や天然ガスなどの「鉱物製品」です。原油価格など、エネルギー価格の下落は、ロシアの貿易収支悪化に加え、財政の悪化にも影響を与える可能性があります。
原油先物相場(WTI先物)は夏ごろまで1バレル100ドルを維持していましたが、秋以降に下落が本格化し、12月にはついに、1バレル50ドル台まで下落しています。仮に原油価格の下落傾向が続いた場合、ロシア経済への悪影響も長期化する可能性があるので、注意が必要です。
ルーブル下落の影響に注意
ルーブルの下落にも、繊細な注意が必要です。通貨ルーブルが半年で5割も下がるということは、対外債務をドル建てで負っている企業等の返済に支障をきたすためです。フランスを筆頭に、欧州の多くがロシア向けに融資残を有しており、今後、信用問題が出てくる可能性はあります。ただ、中央銀行が抱える対外債務の比率は小さく、外貨準備の蓄えもあるため、中央政府に信用問題が起こる可能性は小さいと指摘されています。
ルーブル安に歯止めをかけるべく、中央銀行は12月16日に政策金利を、それまでの10.5%から、17%へと一気に引き上げました。なんと2014年に入り6回目の利上げです。政策金利の引き上げは、通貨の金利面での魅力を高め、投資を促す効果があります。
ただ、金利の急激な引き上げは、ロシアの内需を冷やし、企業の資金繰りを悪くするという副作用もあります。中央銀行の今回の施策が効果をあげられるか否かは、不透明感も残ります。
原油価格の先行きは?
そもそも、原油安が加速している背景には、世界的に原油の需給が緩み始めていることが大きいとみられます。OPEC(石油輸出国機構)が減産に踏み切れなかった理由は、減産すると台頭著しい米シェール・オイルにシェアを取られ、価格支配力を失うことを恐れたからとの見方が多いようです。世界経済が減速しつつある現状で、原油需要が伸びにくくなっていたことも影響しました。
米シェール・オイルの台頭という構造的な変化が背景にある以上、原油価格の低下が止まるか否かは、中長期的には微妙な所です。従って、投資家としては、原油価格の長期低迷をリスクとして捉えた判断が求められる可能性が大きそうです。