図1:日本の国別原油輸入量シェア(2011年1月〜11月)
中東の有事リスクが日本に与える影響は?
昨年から中東の有事リスクに注目が集まっており、原油相場も高止まりが続いている。仮にホルムズ海峡の封鎖が現実のものとなった場合、現在よりも更に原油相場が高騰する可能性もあり、我が国日本においては、コスト高による企業の利益率低下要因となるために、多くの企業にとっては業績面でも株価の面でも悪材料となるだろう。上図を見ていただければ、いかに日本が中東からの燃料輸入に依存しているかが視覚的にご理解いただけるのではないか。
このように、2012年のリスクシナリオの1つとして、中東における有事を背景として、原油相場が高騰することが考えられるが、投資家はどのような投資戦略を取ればよいのだろうか。1つの投資戦略として、原油の動きをそのまま値上がり益として享受するという観点で言えば、素直に原油先物の買いポジションという選択もあるだろう。近年では原油相場と連動するようなETFやCFDなどの金融商品もある。また、従来日本株では商社が含まれる卸売業セクターや鉱業セクターが商品市況高の時には好まれる傾向がある。このように、日本株、先物、ETF、CFDなど、多くの商品で原油相場の高騰をリターンに結びつける方法は存在するだろう。
図2:MICEX指数とWTI原油先物の価格推移
原油相場高騰をロシア株でヘッジ可能か
上図は原油相場を代表するWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の値動きと、ロシア株の代表的な指数であるMICEX指数の価格推移をグラフにしたものだ。わざわざ相関係数を出さなくても分かるように、両指数の価格推移には非常に強い相関関係がある。
表1:MICEX指数の構成上位10銘柄とウェート及び業種一覧
ロシア株の大企業は資源株が多い
MICEX指数は主要10業種の国内大手企業のうち、流動性が最も高い30銘柄で構成されており、上表はウェイト上位10銘柄を抜き出したものである。この10銘柄で全体の79.9%を占めているが、色づけをした「オイル・ガス」セクターだけでも、指数全体の47.6%を占めている。これこそが前述の強い相関関係のからくりである。つまり、原油価格が上昇するというシナリオを立てたときに、投資先の選択肢として、ロシア株も1つの選択肢として考えるに十分値するという事が言えるのではないか。
図3:ルーブル円相場の価格推移
為替が株価のヘッジやブースターになる
上図はロシアの通貨ルーブルと日本円の価格推移である。2008年の半ばまではBRICsをはじめとする新興国の成長もあり、原油相場は高水準での推移を続け、一時は1バレル=150ドル近くまで上昇していた。また、ルーブル円相場も円キャリートレードによる円安や原油市況高を背景として1ルーブル=4円台前半での推移となっていた。しかし、ご存知のように、リーマンショック後は円の独歩高となり、ルーブル円相場においても円高が進行し、遂には1ルーブル=2.5円を下回る水準まで円高が進行することとなった。
外国株への投資に慣れていない日本の投資家が、外国株投資において陥るミスのひとつに、為替の損益を考慮しないことが挙げられる。つまり、仮にある外国株式(ここでは通貨はルーブルとする)を1ルーブル=4円の時に購入したとして、その株の株価が1年後も同じ株価だったとしても、為替相場で1ルーブル=2円まで円高が進んでいれば、それだけで円に戻すと為替差損が出るのである。
ここ数年は円が非常に強かった為に、多くの投資家が円貨資産を持つことに強くこだわる傾向があったが、今後の見通しとしては少しずつ円安方向の相場観を持つ投資家も増えつつあるのではないか。仮に中東での有事観測、または実際に有事となった場合に、シナリオ通り原油相場が高騰するとすれば、少なくともロシア株やルーブルにとっては好材料となる可能性は高い。そうなると、為替を込みで投資リターンを考慮すると、ただ単に原油先物などに投資するより、ロシア株への投資を考えた方が、通貨分のリターンも望めるのではないか。