ミャンマーはインドシナ半島西部に位置し、中国、ラオス、タイ、バングラデシュ、インドと国境を接している。最近では書店や新聞など、メディアにも大きく取り上げられることも増えてきたが、日本において、まだまだ同国の魅力はしっかりと認識されてはいない。「軍事政権」というイメージも強く、依然として成長や投資対象とは無縁という感覚を持つ投資家も多いのではないか?
同国は2011年1月に現職のテイン・セイン大統領が選出されて以降、欧米の制裁緩和などもあり、急激に民主化と近代化が進んでいる。人口は約6,000万人であり、ASEAN地域で見れば、ベトナムの約8,800万人についで、タイの約6,900万人と同等の規模である。今後も順調に人口は増加していくと予想されている。
世界的に株式市場を見渡したとき、投資資金の流入要因の1つとして、人口の多さや若年人口・労働力の豊富さが挙げられるケースがある。まさに、その観点からすれば、同国の人口規模や年齢構成、更には今後の増加予想などを勘案すると、非常に魅力的であるといえるだろう。ただし、同国の証券取引所は2015年に開設が予定されているため、実際に現時点では株式投資の対象にはならないが、当社で取り扱っている外国株式のなかには、売上高の一部をミャンマーで稼いでいる企業もあるため、関連銘柄として投資するなど代替的な投資は可能である。
図1:ミャンマーの人口推移と2017年までの予想
- 出所:Department of Labour Latest actual data: 2006 Primary domestic currency
日本企業に限らず、安い人件費を目的として海外に生産拠点を移した企業が現在直面している問題として、人件費の高騰が挙げられる。かつては「世界の工場」として、世界中に安い労働力を提供していた中国も、いまや毎年最低賃金が上昇し、いまや「世界の市場」となっている。
そこで各企業は中国以外のアジア、たとえばベトナムやインドネシアに工場を移したわけだが、ここ最近インドネシアで労働者のデモが頻発したように、他のアジア各国でも賃金の上昇圧力が高まっている。
この観点からみても、ミャンマーは依然として魅力ある賃金水準となっており、日本を含めた多くの海外資金が設備投資名目で流入する可能性が高い。
図2:ミャンマーにおける労働コストはアジア各国の中でも魅力的である
- 出所:JETRO
また、単に安価な労働力の供給源としてだけでなく、将来的には市場としても注目されるだろう。同国の1人あたり名目GDPは824ドル(2011年)と、タイの5,395ドル(2011年)には到底およばず、ベトナムの1,374ドル(2011年)よりも低い。
あくまで一般論となってしまうが、1人あたり名目GDPが1,000ドルを超えるとオートバイ、3,000ドルを越えると自動車が一気に普及すると言われている。
今後、同国が順調に成長を続けると、中国、ベトナム、インドネシアなど、アジア各国がそれぞれ成長を遂げてきたように、同国も同様の成長段階を踏んでいくと考えられる。
国が成長していく中で、インフラが整備され、経済の規模や国民の消費総額がどんどんと増えていくという、非常に理想的な成長フェーズに乗り始めた可能性がある。