3ヶ月連続で加速していたインドネシアのインフレ率だが、インドネシア中央統計局が今月1日に発表した9月のインフレ率は前年比4.31%増と、先月の同4.58%増から伸びが鈍化した。これまでも同国のインフレ率に関するレポートは何本か書いているが、それらにも書いていたように、通年で同5.5%程度の伸びを想定しているため、今回の発表数字では同4.60%増程度を想定していたが、実際に出てきた数字は想定を下回るものであった。
前月とは打って変わって、食品価格と輸送・通信・金融サービス価格の伸びがそれぞれ1%近く鈍化しており、食品価格は前年比6.55%増、輸送・通信・金融サービス価格は同1.58%増となっている。この部分が今回のインフレ率の伸びが鈍化したことに寄与している。前月はラマダンの終了を祝うイベントがあったことなども関係しており、同国経済の指標の推移を定点観測する上では、このような宗教に関するイベントもしっかりと認識しておく必要がある。
一方で、9月の住宅価格・生活関連費用(光熱費や水道代)は前年比3.31%増と前月の同3.23%増から若干ながら加速している。しかし、同国の9月のコア・インフレ率は前年比4.12%増と前月の同4.16%増からわずかに鈍化した。
図1:インドネシアのインフレ関連指標の推移
また、同日に発表された貿易関連の指標からも好材料が見受けられた。4月から同国の貿易収支は赤字となっていたが、8月の貿易収支は2.49億ドルと小額ながらも5ヶ月ぶりに貿易黒字となった。しかし、今回の貿易黒字は8月の輸入が前年比8.0%減と、2009年11月以来のマイナスとなったことが大きい。
輸出は依然として減速傾向が続いており、8月の輸出は前年比24.3%減と5ヶ月連続で前年比減速となっている。鈍化幅は2009年6月以来の大幅な落ち込みとなっている。オイル・ガスの輸出が前年比30.3%減と、前月の同23.2%減から更に鈍化幅を広げたことが大きく寄与している。
図2:インドネシアの貿易関連指標の推移
今回の指標について注目が集まる点としては、この結果が投資家にとって好材料かどうかということだろう。今回の結果をもって、インフレの沈静化に成功し、貿易赤字のトレンドにも終止符が打たれたと確信するにはまだ早すぎると考えている。ラマダン関連のイベントの影響により、ここ数ヶ月の数字にはノイズが含まれているため、正確に流れの変化を捉えるには、もう少しデータを見ていく必要があるからだ。
インフレ率に関しては素直に好感しても良い材料ではあったと考えてもよいが、これまでにも指摘した通り、補助金の削減による実質の燃料費引き上げイベントは依然として考慮すべきであり、それの有無よっては一気に景色が変わってきてしまう。
一方で、貿易関連指標に関しては貿易収支という結果を見るのではなく、輸出入の総額をそれぞれ見るべきであり、その観点からすると、今回の貿易黒字は額面どおり好材料とすべきではないだろう。