過去6ヶ月連続で鈍化していたインドネシアのインフレ率だが、3月のインフレ率は前年比3.97%増と久しぶりに再加速する結果となった。ベース効果が消えたことが一つの要因として考えられるだろう。2010年の7月から同4%を上回り続けているコア・インフレ率は依然として鈍化の兆しはみえないものの、3月は同4.25%増と前月の同4.31%増からは減速した。2012年第1四半期のインフレ率は同3.72%増と2011年第4四半期の同4.12%増から鈍化している。
3月の未加工食品価格と飲食料品価格はそれぞれ同4.56%増、同4.69%増と前月の同2.87%増、同4.55%増から加速した。運輸コストも同1.77%増と前月の同1.75%増から加速している。一方で、住宅価格は同3.31%増と前月の同3.40%増から減速した。
補助金コスト低減のため、4月1日から燃料価格を33%引き上げる予定だったが、即時実施が見送られたことで、目先の物価上昇リスクは和らいだ。しかし、現在1バレル=105ドルと想定されているインドネシア産原油公式価格(ICP)が6カ月間にわたって平均15%変動した場合、政府は燃料価格を引き上げる権限を承認されており、依然としてインフレリスクは燻っている。ただし、上記のように先行きが不透明な燃料価格の引き上げを考慮せずにいえば、同国中銀が想定している前年比7.0%増という2012年通年のインフレ率は実現する可能性は低いとみている。現時点では同5.5%増前後の数字を想定しているが、政府が現在検討している電気料金の引き上げを年内に実施するかどうかによっても、更に数字の変更を余儀なくされるだろう。
ベース効果が消えたことで、同国中銀が利下げを先送りする可能性は高くなったと考える。また、最近は短期融資の伸びを抑制するために引き締め気味の政策をとっていることからも、当面は利下げをしないということが想定出来る。たとえば、同国では16日にバイクや自動車を購入する際の最低頭金率を設定している。よって、4月12日に行われる政策金利決定会合では、引き続き現在の5.75%という政策金利を据え置くことを決定するだろう。
図1:インドネシアのインフレ指標の内訳推移
依然として燻るインフレ圧力
図2:金融危機以降のジャカルタ総合指数
約8ヶ月ぶりに最高値を更新した同国株式市場