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株安に連邦準備制度理事会が救いの手を差し伸べるのは期待薄
株安に連邦準備制度理事会が救いの手を差し伸べるのは期待薄
2022/5/30
連邦公開市場委員会議事録
5月25日に公開された連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では連邦準備制度理事会(FRB)は6月と7月のFOMCでもそれぞれ0.50%利上げすることでなるべく早くインフレの息の根を止めることが目下の課題であることが確認されました。
株式市場は一筋縄では行かない展開に
年初から5月25日までのS&P500指数の下げ幅は−16.5%でありザラバ・ベースでは2回−20%を記録しています。
一方、ナスダック総合指数は年初来−26.9%と大きく調整しています。
ダウ工業株価平均指数は先週までに8週連続でマイナスを記録、大恐慌時代の1932年以来の連敗を喫しました。
これらのことは今の株安が通常の調整局面よりはもう少し深刻な展開であることを示唆しています。
■もしベアマーケット入りしたら
もしS&P500指数が引け値ベースで−20%を記録し、正式にベアマーケット入りした場合、そこで下げが止まる保証はありません。
実際、過去140年間に米国は19回のベアマーケットを記録しており、その平均下げ幅は高値から−37%でした。その数字を単純に当てはめればS&P500の下値ターゲットはちょうど3,000になります。
■強気の罠
ベアマーケットでは時折(おや、もう大丈夫なのかな?)という反発局面があります。
しかしそこで「わっ!」と買いついた後で、また力なく指数が値を消すということが繰り返されます。そのような「だまし」のことをウォール街ではブルトラップ(強気の罠)と呼びます。
何回ものブルトラップに騙された挙句、投資家は一切の希望を捨ててしまうわけです。
思い返してみればFRBが利上げサイクルに入ってから未だ2か月が経過したに過ぎません。
初回の利上げ幅は0.25%、2回目の利上げ幅は0.50%ということで、未だ0.50%のざっくりとした利上げは1回切りしか経験していないのです。
これから後6月、7月ともう2回0.50%の利上げが控えていることを考えれば、今後の道のりは長く、いまアク抜け=新しい強気相場が始まるという考えは楽観的過ぎるように思います。
株式のバリュエーションはだいぶ改善
さて、S&P500指数は向こう12か月の一株当たり利益(EPS)予想にてらして16.5倍程度で取引されており、これは過去10年間の平均を少し下回る水準となっています。
つまりバリュエーション的にはかなり過熱感が取れたのです。
■消費者物価指数がカギを握っている
しかしパウエル議長は「インフレが明らかにスローダウンしたことが確認されなければ金融引締めの手を休めない」と明言しています。
米国の消費者物価指数は3月に前年同期比+8.5%を記録した後、4月は+8.3%とほんの少しだけ勢いの衰えを見せました。
今後、これが明らかに7%台、さらには6%台へと下がってこなければ安全圏に逃げ切ったとは言えないと思います。
したがって先ずしっかりと消費者物価指数が鎮静化に向かっているのを確認するのが先であり、株を買うのはそれからでも遅くはないと思います。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。