米国の長期金利の上昇基調が続いており、いましばらく金利が上昇する投資環境と付き合っていく必要がありそうです。そこで今回は、金利上昇局面に強いと期待される海外上場ETFをご紹介いたします。
図表1:金利上昇局面に強いと期待されるETF(上場投資信託)
取引 | チャート | コード | 銘柄 | 連動を目指す指数 | 番号 |
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XLF | 金融セレクト セクター SPDR ファンド(XLF) | S&Pファイナンシャル・セレクト・セクター・インデックス | (1) | ||
FAS | Direxion デイリー米国金融株ブル3倍 ETF(FAS) | ラッセル1000金融サービスインデックスの300%のパフォーマンス | (2) | ||
XLE | エネルギーセレクトセクターSPDRファンド(XLE) | S&Pエネルギー・セレクト・セクター・インデックス | (3) | ||
XLB | 素材セレクト セクター SPDR ファンド(XLB) | S&Pマテリアルズ・セレクト・セクター・インデックス | (4) | ||
DGRW | ウィズダムツリー米国株クオリティ配当成長(DGRW) | ウィズダムツリー米国株クオリティ配当成長インデックス | (5) | ||
VGSH | バンガード 米国短期国債 ETF(VGSH) | ブルームバーグ・バークレイズ米国政府債浮動調整(1-3年)インデックス | (6) | ||
VCSH | バンガード 米国短期社債 ETF(VCSH) | ブルームバーグ・バークレイズ米国社債(1-5年)インデックス | (7) | ||
SRLN | SPDR ブラックストン/GSOシニアローンETF(SRLN) | Markit iBoxx米ドル建てリキッド・レバレッジド・ローン指数 | (8) | ||
CWB | SPDR BBバークレイズコンバーチブル債券ETF(CWB) | ブルームバーグ・バークレイズ米国コンバーチブル・リキッド・ボンド指数 | (9) | ||
VTIP | バンガード 米国短期インフレ連動債 ETF(VTIP) | バークレイズ米国TIPS(0-5年)インデックス | (10) | ||
RLY | SPDR SSgAマルチアセットリアルリターンETF(RLY) | 主にブルームバーグ・バークレイズ米国インフレ連動国債指数 | (11) | ||
HYND | ウィズダムツリー米国HY社債(金利ベア型)(HYND) | バンクオブアメリカ・メリルリンチ・ユーエス・ハイ・イールド・コンストレインド・ネガティブ・セブン・デュレーション・インデックス(0-5年) | (12) | ||
HYZD | ウィズダムツリー米国HY社債(金利ヘッジ型)(HYZD) | バンクオブアメリカ・メリルリンチ・ユーエス・ハイ・イールド・コンストレインド・ゼロ・デュレーション・インデックス(0-5年) | (13) | ||
TMV | Direxion 20年超米国債ベア3倍 ETF(TMV) | NYSE 20年プラス国債指数のインバースの300%のパフォーマンス | (14) |
※当社WEBサイトをもとにSBI証券が作成
米国で長期金利の上昇基調が続いています。5/16(水)〜5/18(金)には、米10年国債利回りが3.1%台を付けて、テクニカルに重要と考えられる14年初めの水準を一時超えました(図表2)。
米国の長期金利の先行きについては、米中通商交渉の行方、米中間選挙に向けての政治リスク、様々な地政学リスクなどの不透明要因もあり、さらに一段上昇となるか、3%前後でもみ合いとなるか、市場の見方も分かれているようです。
ただ、基本的には米国経済の堅調、物価上昇率の回復を背景に政策金利は徐々に引き上げられる見通しで、これに連れて長期金利も上昇しやすい傾向にあると言えそうです。このため、しばらくは金利が上昇する投資環境と付き合っていく必要がありそうです。
そこで今回は、当社で取り扱うETFの運用各社にヒアリングして、金利上昇局面に強いと考えられる海外上場ETFを推挙してもらいましたので、これをご紹介いたします。
A: 株式の業種、投資スタイルに着目:図表1の番号(1)〜(5)
金利上昇時に直接的な恩恵が期待される株式の業種として「金融」があげられます。銀行の貸出金利は市中金利に連動し、貸出金利の絶対水準が上昇すると貸出利ざやも拡大する傾向があるため、収益の向上につながると期待されます。(1)は金融株の業種指数に投資するもの、(2)は金融株指数にレバレッジをかけて投資するETFになります。
また、金利の上昇が特にインフレ率上昇期待を伴っている場合、実物資産に関係が深い業種の収益にポジティブに働くことが期待されます。この観点から、(3)の「エネルギー」、(4)の「素材」などの業種も注目できるでしょう。
(5)は配当支払いのある成長企業に投資するETFです。配当利回りが高い株は金利上昇局面では一般的に脆弱と考えられますが、同ETFは成長性のある企業を選別して投資するため、金利上昇によるマイナスの影響を和らげることが期待されます。
B:債券の選び方に着目:図表1の番号(6)〜(11)
金利が上昇するとクーポンが上がってくるため、債券投資の魅力は増します。しかし、金利が上昇する局面では債券価格が下がってしまうため、これをいかにマネージするかがポイントです。
金利の上昇に対する債券価格の下落の大きさは投資する債券の年限によって決まり、債券の年限が長いほど下落幅が大きくなります。例えば、金利上昇による価格の下落は、10年債>5年債>2年債>短期債の順となります。このため、金利上昇局面では、年限が長い債券を避け、短い債券に投資するのがセオリーです。
(6)、(7)は短期の債券に投資するETFで、金利上昇による債券価格下落の影響が相対的に低くなります。
(8)は変動利付のバンクローンを主な投資対象とすることから、デュレーション(投資対象の残存年数の平均)が非常に小さく、また短期金利上昇による利回り上昇のメリットを享受することが期待できます。
(9)は転換社債に投資するものです。債券と株式のハイブリッドである転換債の特性により、株式市場が堅調で金利が上昇している環境では株式的要素が強まる傾向があります。そのため、通常の固定利付債券ETFに比べて金利上昇に強い一面を持っているとも言えます。
(10)と(11)はインフレ連動債に投資するものです。物価上昇に対する資産価値の保護とともに金利収入が期待できます。
C:金利の上昇を「ヘッジする」、または、さらに積極的に「売る」ETF:図表1の番号(12)〜(14)
(12)と(13)は、利回りが高い社債に投資してクーポン収入を得ながら、金利上昇による債券価格の影響を抑える戦略のETFです。(12)は金利上昇の影響をゼロにしようとするもので(「ヘッジ」)、(13)はより積極的に金利の上昇で収入を得ようするもの(「ベア」)です。詳しい仕組みについては、こちらをご参照ください。
また、(14)は金利が上昇するときに価格の下落が相対的に大きい、年限が20年超の米長期債券をショートするものです。
ただし、これらについて注意が必要と思われるのは、金利が時間をかけてジワジワ上がっていく場合には、長期債券をショートするコストが嵩んでしまう可能性があることでしょう。比較的短期間に幅をもって金利が上昇する場合に有効な戦略と考えられるでしょう。
図表2:世界の長期金利は上昇基調
注:米国、ドイツ、日本の10年国債利回りの推移(週足)です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成